子どものスプーンやフォーク選びで、食事の進み方が変わることも
石嶋さん:食具とは、スプーンやフォークなどのことですが、食事に大きく影響してきます。「体」のスペシャリストである作業療法士の場合、食事の姿勢に合わせて食具を選んだりもします。
私たち言語聴覚士は、口のベロがどのくらい動いているかとか、口の周りの状態を見ることが多いですね。口の周りの筋肉がまだ育っていなければ、どういう食事なら摂りやすいのかということを一緒に考えていくなど、スタッフ全員がそれぞれの専門を生かした考え方でアプローチしています。
髙濵さん:ぽけっとが主催した子育てイベントで、当法人の代表の吉本と作業療法士のスタッフが、子ども一人ひとりに合ったスプーンやフォークはどれか?とアドバイスしました。スプーンひとつとっても、くぼみの部分の深さや柄の形がそれぞれ違います。作業療法士ならではの視点で、「この段階だったらこのスプーンはベストだと思う」とか、逆に「今の段階だったらこういうものの方がいい」と、お子さんに合わせた助言をしていました。
HAPIKU:食事の道具って大事なんですね。
髙濵さん:大事ですね、ボールペン1本でもその書きやすさによって疲労度が違いますよね。それと同じようなことだと思ってください。道具選びはお子さんにとって重要ですが、お子さんはまだ自分にとって使いやすいかどうか判断できません。お父さん、お母さんも、子どもの食事が進まない原因が、まさか食具の形状にあるなんてと驚かれることもよくあります。
なかなかそういう視点は思いつかないですよね。作業療法士、言語聴覚士はそういう視点で見ていくことができるので、その点がほかの専門家との大きな違いだと思います。
たくさんの親子との関わりの中で感じる喜び
HAPIKU:これまでお子さん、親御さんと関わられた中で、印象に残っていることがあれば教えていただけますか?
石嶋さん:さまざまな関わりの中で、お子さんも親御さんもどんどん変化されて、「うちの子ってかわいいいな」と親御さんが言われたときに立ち会えると、この親子さんと一緒にいられてよかったと感じます。
全部を完璧にやらなくてもいい、子どもをほかの子と比べなくていい
HAPIKU:「HAPIKU」の読者にはお仕事をお持ちのママが多いのですが、メッセージをいただけますか?
石嶋さん:お仕事をお持ちのお母さんに関わらず、保護者の方はお子さんのために出来る限りのことをしてあげたいと感じられている方が多いように感じます。しかし全部を完璧にやるのは現実的に難しいものです。特にお仕事をされているとなおさら時間に追われる日々となりがちです。そうすると必ず限界が来てしまうので、どこかに力を入れたり、どこかで手を抜いたりしてもいいと思うんです。
特にお子さんの発達って、わかりにくいところもあります。2歳ぐらいの子に「お箸をどのように持たせたらいいですか?」と心配される方もいて、「今はまだその段階ではないので心配しなくても大丈夫ですよ」と言うことも沢山あります。今の発達の段階や優先順位を絞っていけるといいかなと思っています。
同じ学年であっても数か月の差があれば、全然姿が違います。その時期その時期のお子さんにできることも違うんです。
私自身、子育てを経験して、子どもをほかの子と比べて「あの子もできているから、この子もできていいはず」と不安に思うことや、逆にできていることに安心することもありました。でも、本当にそれでいいのかなって感じます。子どもの今できていることをしっかり受け止めて、「できてるよ」「いいよね」って比較しなくても言える親になれたら、ハッピーでいいのかなと思いますね。
HAPIKU:ハッピーな育児、すてきですね! どうもありがとうございました。
いかがでしたか。【前編】【後編】を通じて、「発達支援ルーム ぽけっと」のスペシャリストが、子どもの発達にどうかかわっているのか、その一端を知っていただけたと思います。
いよいよ次回からは、各スペシャリストがそれぞれの専門分野から、「食」に関連するアドバイスや知見を、子育てに奮闘する読者の皆さんにお届けします。
「からだの機能に関すること」「どっちの手で持つ?など手の育ちについて」「食具の話」「感覚の育ちと食事!など感覚面の話」「食事とことばの育ち」「食事に集中できないのはなぜか?など行動面の話」の6テーマについて、作業療法士、言語聴覚士、臨床心理士による連載コラムがスタートします。
保育士や栄養士とは、また違った視点からのアドバイス…楽しみにお待ちください。
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