口の機能やことばの発達に“かじりつき食べ”が重要

言語聴覚士が伝える「食事とことばの育ち」シリーズ 第3弾は、「マナーを教える前に練習したい、“かじりつき食べ”」、なぜ“かじりつき食べ”が必要なのかについて専門家が説きます。
このシリーズでは、ことばの育ちが、口や舌、唇を動かすことといかに密接に結びついているか、だからこそ食事でたくさんの経験を子どもにさせることがどれだけ大切なことかを、お伝えしてきました。
今回は、食べ物のかたさと大きさに注目します。

“かじりつき”や“舐めとり”がさまざまな機能を育てる

離乳食が進み完了期以降になると、お子さんが自分でごはんを食べる機会も増えてきますよね。そうなってくると食べる時の姿勢や食べこぼしなど、マナーに関することが気になりやすいものです。食材を大きいまま与えてしまうと、口には入らないし、食べこぼして卓上が汚くなってしまったりと、そんな経験をされた方も多いのではないでしょうか。
つい食べやすさを優先して食べ物を小さめのサイズにしたり、手っ取り早く大人が食べさせてしまうご家庭もあるかと思います。しかし、綺麗に食べられるようになるためには、口の周りや手が汚れている感覚に気づく力や、こぼさないように食具を安定して運ぶための手を操作する力、などさまざまな機能が育っていく必要があるのです。
その機能を育てていくための練習の一つとなるのが、実は食事の際の“かじりつき”や“舐めとり”といった行動です。

 

 

離乳食完了後はあえて食べにくい大きさに挑戦!

離乳食のかたさを調整することはお母さん方の手間もかかってしまいますが、「子どもは離乳食の段階から食べ物のかたさに合わせて、徐々に口の機能が育っていく」ということについては、以前のコラムでもお話しました。
食べやすさから具材を小さめにしたり、柔らかくした食べ物ばかりを食べ続けていると、口の機能が未発達なまま定着してしまいます。そうなってしまうと口に入りきらないくらい詰め込んでしまう、かたいものが噛めない、早食いで何でも噛まずに呑み込む、涎が垂れやすいなどの様子に繋がっていくことがあります。
そして困ったことに一度食べ方の癖が習慣化すると、お母さんたちがいくら声かけをしても、口の機能自体が未発達なため、自分で気づいて直していくことが難しい場合もあるのです。だからこそ、離乳食が完了した頃からはあえて食べにくい大きさやかたさに挑戦してみるのは大事な経験と言えます。