合言葉は「よく噛みげんき、30回!」

皆さんこんにちは、HAPIKU公認の管理栄養士の山田です。

「よく噛みげんき、30回!」
この合言葉を聞いたことはありますか?

この合言葉をわたしが知ったのは、保育園で食育の時間を担当し始めたときでした。子どもたちからも大人気だった「よく噛みげんき、30回!」という合言葉。わたしも1度聞いてから忘れることはない、不思議なセリフです。

今回は、6月4日から10日が「歯と口の健康週間(※1)」ということで、「よく噛んで食べる」についてお伝えできればと思います。「よく噛んで食べる」メリットや忙しい日々のなかで意識してほしいポイントなどをお伝えします!

1.よく噛むことは大切な食育の1つ

「よく噛むこと」と「30回」はどんな繋がりなんだ…?と思った方も多いのではないでしょうか。

 

実は、「よく噛むこと」と「30回」は、厚生労働省が定めた「噛ミング30(カミングサンマル)」からきています。(※2

 

口のなかの健康を保つには、お子さまが小さい頃からの意識づけが大切です。また、ものを噛むことや味わうことは、乳幼児期から成長に伴い少しずつできるようになります。

 

「よく噛みげんき、30回!」は、「噛ミング30(カミングサンマル)」をより子ども向けにした合言葉ですが、「30回噛むこと」の大切さを伝えているのは同じです。

 

では、よく噛むことにはどんなメリットがあるでしょうか?

2.よく噛んで食べる5つのメリット

よく噛んで食べると得られるメリットは、主に5つあります!
子どもたちにとってはもちろん、大人のわたしたちにとってもありがたいメリットです。

 

➀脳に酸素や栄養が届いて集中力が高まる

よく噛むと顔の骨や筋肉がしっかりと動くようになります。血のめぐりが良くなると脳に酸素や栄養が運ばれるため、脳の働きを活性化させることにつながります。

 

脳の働きが活発になれば、お子さまの学習能力や記憶力の向上が期待できますし、注意力の維持につながるといった研究結果も報告されています。(※3

➁唾液の分泌量が増えて食材の美味しさに気がつける

ごはんをよく噛んで食べると、甘味が増すことに気がつきませんか?これは、ごはんに含まれたでんぷんを唾液中の「アミラーゼ」が分解する過程で起こる作用です。

 

でんぷんはアミラーゼに分解されると糖に変わるため、甘味を感じやすくなります。また、噛めば噛むほど唾液も増えるため、薄味でも食材の美味しさに気が付くことができます。

 

塩分の摂りすぎは高血圧に、糖分の摂りすぎは糖尿病などにつながるため、小さい頃から薄味を心がければ健康的な食生活にもつながります。(※4,5

 

また、唾液には口のなかを清潔に保つ働きもあるため、虫歯や歯周病を防いでくれる効果もあります。(※6,7

➂口の筋肉が鍛えられて表情豊かに

よく噛むことは表情の豊かさにもつながるのがポイントです。

 

歯にぐっと力を入れた際に出っ張る咬筋(こうきん)などの咀嚼筋(そしゃくきん)がよく動くと、あごや口周り、顔全体の筋肉が刺激されます。血行の良さは表情の明るさにつながり、口がよく動けばきれいな発音で話すこともできるでしょう。

 

社交性は子どもたちの関わり合いはもちろん、社会に出てからも大切な能力の1つ。口周りの筋肉を鍛えるためにも、しっかり噛む習慣を身につけたいですね!

➃丈夫な歯茎できれいな歯並びを維持できる

噛むことは歯並びの良さにもつながります。

 

口周りをよく動かすと顔のさまざまな筋肉が鍛えられ、刺激を受けたあごの骨は次第に成長していきます。よく噛まないまま年齢を重ねると、必要な筋肉が育たず、しっかりとしたあごが形成されません。

 

成長が不十分なあごで乳歯から永久歯に生え変われば、歯と歯のぶつかり合いが起きて歯並びに影響が出ます。
また、歯並びが悪くなると、虫歯につながることも。
※8

 

歯と歯が重なった部分は歯ブラシが届きにくくなり、汚れが蓄積していきます。すると、虫歯だけでなく歯の痛みで咀嚼力が低下し、口腔内の健康状態がどんどん悪化するでしょう。
負のスパイラルを起こさないためにも、きれいな歯並びを維持できる噛む習慣をつけましょう。

⑤消化しやすく胃腸に負担がかからない

よく噛めば食べ物がからだに入っても消化に時間がかからず、胃や腸への負担が軽減できます。消化不良による下痢や便秘、腹痛予防にも効果的です。

 

また、消化不良を起こすと良質な睡眠がとれず、歯ぎしりや食いしばりの原因にもつながるといわれています。お子さまが小さなころから噛む習慣付けをさせていくことで、良質な睡眠による健やかな成長が期待できます。

 

ほかにも、噛む習慣がある子どもは噛む習慣がない子に比べて好き嫌いが少ないといった研究結果も報告されています。(※9

3.3つの意識で噛む回数を増やす!

子どもは、突然噛むことが得意になるわけではありません。毎日少しずつ噛むことをくり返し、口のなかの感覚や飲み込むタイミングを学んでいきます。

 

実際に、保育園では食材の大きさについて定期的に保育士と相談をし、個別に対応していました。また、我が子は好きなものを丸のみしようとすることが多かったので、なるべく小さく刻んで少しずつ固形物の大きさを変化させていました。
お気づきの方もいるかもしれませんが、保育園と我が子、どちらにも共通しているのが「少しずつ変化をつけていく」ことです。

 

そこで、ご家庭で噛む回数を増やす際も「少しずつ変化をつけていく」を意識していただければと思います!
また、良く噛んで食べるを実践する際に調理を少しだけ工夫することで、より効果を得られます。大切なポイントは以下の3つです。

 

  • 歯ごたえのある食材を選ぶ
  • 少し大きめに切る
  • 薄味

良く噛むために必要な食材の特徴は「硬いもの・食物繊維が多いもの・弾力性が大きいもの」といわれています。(※10

 

食欲がなくなりがちな暑い夏は食べやすいカレーに根菜や弾力のある鶏ももを入れて、寒さの厳しい冬は具沢山の豚汁を食べれば、歯ごたえを感じながら栄養もたっぷり摂取できます。

 

また、食材をいつもより少し大きめにカットして噛む回数を増やすのもおすすめです。全部の食材を大きくするのではなく、今日は人参だけ、今日は大根だけと、少しずつ大きくしていくイメージで取り組むと、どれくらいの大きさなら食べやすいのかなども把握できます。

 

そして、良く噛むと食材の味をしっかりと感じられるため、お出汁を効かせるなどすれば薄味でも十分美味しさが楽しめます。

 

HAPIKUでは根菜カレー豚汁レシピをご紹介しています。お時間のあるときにぜひつくってみて下さいね!

 

よく噛んで食べるときの注意点お子さまの食事中は近くに座るなどし、食べている様子を見守りましょう。目を離した隙に起こる食事中の事故の防止につながります。

 

また、食べものの大きさを調整しても口いっぱいに入れてしまっては、食べものが喉に詰まる原因になります。固形物は一口サイズに調整し、少しずつ食べ進めるのを意識しましょう。

 

食事中に顔色が悪くなったりよだれを垂らして苦しそうな表情を見せたりした場合は、食べものが喉に詰まったサインの可能性が高いです。

 

上記のサインが見られたら、以下の対処法を実践してください。(※11,12

 

1歳未満:背部叩打法、胸部突き上げ法
1歳以上:ハイムリッヒ法

 

まず、口のなかに指を入れて食べものを取り除こうとしてはいけません。食べものがより奥に詰まる原因につながります。

 

始めに1歳未満のお子さまでは、背部叩打法を行います。

 

大人はイスに座るなどして膝を曲げ、太ももの上にお子さまをうつ伏せに抱きましょう。お子さまの肩甲骨の間を5,6回手を広げて強く叩き、詰まった食べものを吐き出させます。

 

背部叩打法で改善が見られない場合は、胸部突き上げ法を行います。お子さまを仰向けに寝かせ、左右の乳頭を結んだ中心の少し下の方を人差し指と中指の2本で押す方法です。

 

1歳を過ぎたお子さまの対処法では、ハイムリッヒ法(腹部突き上げ法)を行いましょう。

 

お子さまの後ろから両手を回し、みぞおちの前で手を組みながらおもいきり両手に力を入れます。押し出した反動で詰まった食べものを吐き出すことができます。

 

食事の際は誤嚥に十分注意し、お子さまの口腔の成長に合わせて取り組みましょう。

4.よく噛みげんき、30回!チャレンジゲーム

そうは言っても、この記事を読んで下さっている方の多くは、お子さんを保育園に預けて毎日お仕事に追われて、食事はささっと済ませて…と日々をこなすのも一苦労な状況かと思います。

 

そんな仕事と家事に追われる忙しい日々のなかに「ごはんは毎食30回噛んで」が仲間入りしたら。。。。。。。。そんな恐ろしいことはお願いできませんが、「これぐらいだったら取り組めるかも」と当時のわたしでもやる気が出そうな簡単チャレンジを考えてみました!

 

各項目のポイントを押さえていただければ、週末だけ、週末の夜ご飯だけ、月に1回だけ…でも良いので、まずは1回チャレンジしてみてください!

チャレンジ➀1品だけ「30回噛む」をしてみる

噛めば噛むほど甘味が感じられる白米やお出汁の効いた煮物などがおすすめです。咀嚼力がついてきたら、ごぼうやにんじんなどの固めの根菜類やこんにゃくなど弾力のある食材にチャレンジしましょう。

 

30回数えながら楽しく取り組んでみてください!

チャレンジ➁「家族みんな」で30回噛んでみる

子どもたちは、1人でやるよりも「みんなで」取り組むのが大好きです。みんなで一斉にやったり、親子で順番を回したりすると、楽しさや嬉しさが増し食べることへの興味関心を高められます。

 

家族みんなが食卓に揃う時間にゲームにチャレンジしてみましょう!

チャレンジ➂「30回噛むとどうなった?」を考えてみる

30回噛むだけで終わりではなく、「噛んだらどうなったか」を考えるのも大切です。

 

1歳や2歳の小さなお子さまには難しいですが、幼児クラスになると「甘い!」と味を教えてくれる子も。なかには「疲れた~!」と噛む動きに対して感想を言ってくれる子もいました。

 

小さなお子さまには「かみかみ楽しいね」など、共感の声掛けもたくさんしていただけると幸いです。

5.まとめ:余裕のあるときに、ほんの少しの変化を

保育園の食育の時間で「よく噛みげんき、30回!」を伝えると、給食で実践してくれる子が多く、なかには家に持ち帰って「30回噛まないといけないんだよ!」と家族に指導してくれる子もいました。

 

保育園での食育が子どもたちの「食べる」を考える力につながるのはとても嬉しかったです。

 

わたしの食育活動の目標は「食に興味を持つ子を育てる」なので、HAPIKUを愛読してくださるたくさんの方のお子さまが、楽しく食育に取り組める内容をお届けできたらと考えています。

 

そこで、まずは「よく噛みげんき、30回!」にぜひチャレンジしてみてください!「30回噛む」は、できれば毎食取り組んでほしいですが、「よく噛む」と「30回」を知ること、実際にやってみることが重要です。

 

ご家庭では無理のない範囲で取り組んでいただき、子どもだけでなく、家族みんなで「よく噛んで食べる」を習慣にしていきましょう。また、ママ友とも連携して、お子さんたちにとっての当たり前にしていきましょう!