言語聴覚士が伝える「食事とことばの育ち」シリーズ 第3弾は、「マナーを教える前に練習したい、“かじりつき食べ”」、なぜ“かじりつき食べ”が必要なのかについて専門家が説きます。
このシリーズでは、ことばの育ちが、口や舌、唇を動かすことといかに密接に結びついているか、だからこそ食事でたくさんの経験を子どもにさせることがどれだけ大切なことかを、お伝えしてきました。
今回は、食べ物のかたさと大きさに注目します。
口の機能やことばの発達のために必要なこと
実際にどのように挑戦していけばよいでしょう、例としては
- スイカやメロンを半円形に切って、そのままかぶりつく
- とうもろこし、トマト、プラム等にかぶりつく
- 長いままのきゅうりやささみをかじり取る
- ぶどうを皮のまま食べて、皮と種をはきだす
- りんごを大きめ(1/6または1/4)に切り、かじって食べる
- コッペパンのような口より大きなパンや骨付き肉にかぶりつく
- 口のまわりについたソースやアイスなどを舐めとる
…などがあげられます。
食べ物の大きさに合わせて口を開いたり、目一杯口を開いても自分の口には入りきらないという感覚を掴む経験になります。また口のまわりについたソースやアイスに合わせて舌を伸ばし舐めとる動作は舌の動きの練習にもなるため、言葉の発達にもつながっていきます。
一見汚くなりやすい食べ方ではありますが、こういった食べ方が、口まわりの筋肉や舌の動きを育てていくのです。かじりつきは慣れないと難しい動作でもあるため、まずはお母さんやお父さんが「がぶっ」などの効果音もつけながら食べ方の見本を楽しく見せてあげるのもやり方の一つです。
食べるという意識を育てていく段階に…
そして、口まわりや口内の感覚が育ち、汚れや歯に詰まっている等の違和感に気づくことができるようになってくると、適切な場面で口を拭いたり、こぼさないように調整して食べるという意識を育てていく段階になっていきます。
親御さんの中にはどうしても食卓や洋服が汚れることが受け入れにくい方もいらっしゃると思いますが、そういった場合は、事前に使い捨て出来るランチョンマットを敷いたり、汚れてしまって捨てる予定の服等を着させる、などの工夫を取り入れてみるのもストレス軽減につながると思いますよ。
また挑戦する頻度も週末に人手と時間がある時に1回だけ、など頑張り過ぎなくて良いのです。食事場面が親子にとってストレスにならない範囲でぜひ挑戦してみてください。
就学前までの間であれば、多少汚していても周囲の大人もあたたかく見守ってくださると思いますので、この時期は練習する絶好のチャンスです。口の機能や言葉の発達のためにも、ぜひ無理のない範囲で色々な食べ方に挑戦してみてくださいね。
※今回は、一般社団法人ぽけっとの【言語聴覚士】が執筆しました。
一般社団法人ぽけっと
2017年2月設立。児童発達支援・放課後等デイサービス事業『発達支援ルームぽけっと
』や園や学校の先生方を支援する研修・巡回事業等のサービスを提供しています。
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