子どもの食事時、“気になる様子”の背景にある“からだの感覚面の育ち”とは?

これまでのコラムの中で、[食べすぎる] [少食] [偏食] の背景に、感覚面の育ちが関係していることをお話してきました。感覚とは、視覚や聴覚といった五感に加え、からだのバランス感覚、筋肉の張りの状態、リラックス状態などを感じとるセンサーのような働きです。
今回は、お子さんが食事をしている時の気になる様子を取り上げ、感覚面を育てていくための方法をご紹介します。

からだの感覚がしっかり育つと、“食事中に座っていられる” “道具を上手に使える”など、からだの使い方が上手になっていきます。また、“おなかが空いた” “おなかがいっぱい” といった、目に見えない感覚をつかむことができるようになります。
反対に感覚面の育ちが十分ではないと、[しっかり座れない] [食具の使い方が下手] [食べこぼしが多い] といった様子がいつまでも改善していきません。また、食事以外の場面では [落ち着きがない] [ぼんやりしている] [トイレトレーニングが進まない] などの姿が見られることもあります。感覚面の育ちは、子どもたちの成長にとって、なくてはならないすべての基礎といえます。

 

しっかりからだを使って遊ぶことが大切!

このすべての基礎ともいえる感覚面を育てるためには、“しっかりからだを使って遊ぶ” ことがとても大切です。近年は、遊べる公園が減ったり公園での遊び方が制限されたりと運動の機会が少なくなっており、“しっかりからだを使って遊ぶ” ことが難しくなっています。
また、お子さんのタイプによって “なかなか外で遊びたがらない” “パズルや動画など室内でじっくり遊ぶことが好き” という運動量が少ないタイプのお子さんや、“自分の知っている遊びや、できる遊びを繰り返す” 安心を求めるタイプのお子さんは、特にからだを使う機会が少ないので、“しっかりからだを使って遊ぶ” 経験がどうしても少なくなります。

 

ではこうしたお子さんたちの感覚面を育てていくためには、どうしたらよいのでしょうか?有効な方法としては、“大人が関わって遊ぶ” ことです。

そもそもからだを使って遊ぶ経験自体が少なく、からだを使った楽しい遊び方を知らないだけなので、大人が関わり、しっかりからだを使って遊ぶ楽しさを知っていくことで感覚を育て、新たな遊びを知っていくことができるのです。

 

からだを使った遊びは特別な道具も運動の専門家もいりません。日常の中にちょっとしたエッセンスを加えるだけでも、遊びが広がるきっかけになっていきます。

 

いつもの遊びや生活にワンエッセンス加えるだけ!

外遊びの例

滑り台
すべり台での踏切ごっこ(お子さんがすべっているときに、「カンカンカン 止まります」と大人が腕で踏切を作る)は、お子さんに大人気の遊びです。大人が作る踏切と自分との距離や、スピード感、踏切が開かない時には踏切前でからだを止めるなど、動きを調整することを体験できます。
また、すべり台を使っての坂登りも、からだの感覚をつかむ上で有効です。
砂場遊び
砂で好きな形を形成する際に、どの程度水を混ぜると形成しやすい固さになるのか、試行錯誤を重ねて実験ができます。
山づくりでは、高さを出したりトンネルを掘ることで、自分の背の高さや手の長さを感じることができます。
砂場の縁を平均台に見立てて歩く遊びもできます。落ちそうになってもからだの傾きを感じながら落ちないようにこらえたり、忍者ごっこのような設定にして、歩く速度(ゆっくり/早く)を調整したり、ドンじゃんけんで相手との距離をつかんだりすることもできます。

室内での遊びの例

大人の膝の上に乗ってゆらゆら/がたがた遊び、大人の体によじ登る
不安定な場所でのからだの傾き(平衡感覚)を感じる&耐える&対応する
いろいろなものでくすぐり遊び(ex.手/タオル/ティッシュ)
感触の違いを感じる。どこをくすぐられているかからだの部位を意識する。
クッションや布団などで遊ぶ
不安定な場所を転ばないようにゆっくり歩いて姿勢の調整をする。
布団に巻かて圧迫されることで、自分自身のからだの大きさや形を認識する。
新聞紙や広告をビリビリ破いたり、丸めてボール遊び
独特の感触を楽しむ。長く/細くなど破る際の調整。
1枚の新聞紙をやさしく丸めるとやわらかくて大きなボールに、力を込めて丸めると固くて小さいボールになるなどを体験する。

こんな風に、特別な道具や玩具が無くても遊びを広げることができます。
必要なのは、いつもの遊びや生活にワンエッセンス加えるだけ。それには、周りの大人のアイデアが必要です。
“しっかりからだを使って遊ぶ” 経験は、お子さんひとりで勝手にできるものではありません。しかし、経験ができないと感覚面は育ちません
大人がしっかり関わって遊ぶ1回あたりの時間は短い時間で構いません。生活の中で、遊びの要素を1つ加えてみることで、からだの感覚を育てながらしっかり食事ができるからだづくりにつなげていけるとよいですね。

 

※今回は、一般社団法人ぽけっとの【臨床心理士】が執筆しました。

 


 

一般社団法人ぽけっと

corporate009_img012017年2月設立。児童発達支援・放課後等デイサービス事業『発達支援ルームぽけっと』や園や学校の先生方を支援する研修・巡回事業等のサービスを提供しています。
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