手づかみ食べの時期が終わると、徐々にスプーンやフォークなどの道具を使って自分で食べたがるお子さんが増えてきます。しかし、はじめのうちはうまく道具が操作できないために、こぼしたり、汚したりと大人の手を煩わせることも多いですよね。
一方で幼児期のお子さんが成長するにあたって、ゆくゆくは就学していくことを考えると、着替えを自分でできるようになる、字が書けるようになることなどが求められるようになり、どの動作であっても手先を育てていくことは必要になります。
「食事のお手伝い」は自立していくことの基礎にもなる
ご家庭でできる手先を使ったおすすめの活動は、「食事のお手伝い」です。
お手伝いが食育につながるということはご存知の方も多いと思います。「この料理はこんなものをつかっているんだ!」と食材に気づいて食事への興味関心が高まったり、お手伝いの中で使った調味料と、でき上がった料理の「あまい」「しょっぱい」などの味がつながったりすることもあります。また普段食べないものでも、自分でつくったものなら食べてみようというきっかけになる場合もあります。さらに、お手伝いのメリットは「食育」だけではありません。
今までも食事に関連した記事の中でお伝えしてきましたが、まずいろいろな触感の食べ物に触れることで手先の感覚を育てられます。お肉や野菜、豆腐など、それぞれに固さや手触りがあります。手で触れてみたり、ちぎる・混ぜるなどの操作をしてみたりすることでいろいろな感覚を取り入れることができます。
また、お手伝いで自分に役割をもらえるとお子さんはそれだけでもうれしいものです。大人から「すごいね」「ありがとう」とほめられると“できた”という達成感がもて、自己肯定感を高めることにもつながります。そのことが「自分でやってみよう」という気持ちを育て、自立していくことの基礎となっていくのです。
ポイントを抑えて取り入れてみよう
しかし、お子さんがやる食事の「お手伝い」と聞くと、時間がかかる、手間が増える、汚れる、包丁などが危ないなどハードルが高いイメージがあるのではないでしょうか。でもポイントさえ抑えればお手伝いは意外と取り入れやすいのです。お手伝いのポイントをいくつか紹介しますね。
お手伝いのポイント
1つだけの簡単な作業でOK
料理の1から10まで全部一緒に、包丁などの道具を使って完成させることだけがお手伝いではありません。たくさんやらせると子どもも飽きて適当になったり、それを見てイライラしてきたり…。悪循環に陥りがち。お手伝いはひとつだけでOK!
完璧を求めない
例えば種や皮をとってもらう作業をお願いしたときに、7~8割できていれば多少残っていてもよいことにしてしまいましょう。お手伝いの目的はお子さんの経験を広げることであって、完璧に料理を作ることではありません。仕上げは大人がおこないましょう。
ほめる基準を下げる
ほめる事柄はちょっとしたことでよいので、お子さんが少しでもお手伝いをしてくれたときには大いにほめてあげましょう。たとえば「○○ちゃんが一緒にやったからおいしいね!」「パック(ふくろ)をあけてくれたから作れたね」など直接料理の味に関係がない作業でも、ほめてあげてください。お母さん・お父さんからほめられることが、お子さんにとっては「またお手伝いしよう」という気持ちにつながる一番の近道です。
時間がかかってもいいし、毎日やらなくてもいい
お子さんの作業は時間がかかります。そのため、大人に気持ちや時間の余裕がある時がおすすめです。お仕事で忙しい平日やお出かけ等、予定がある時は避け、のんびりできる休日のお昼のタイミングなどに試してみてください。
実際にどのようなことを子どもに手伝ってもらったらいいのか迷われる方も多いと思いますので、簡単にできるお手伝いを紹介します。
- ピーマンの種取り
- とうもろこしや玉ねぎの皮むき
- レタスや海苔などをちぎる
- スライスチーズのビニールをはがす
- 計量カップで測る(お米にいれる水や調味料など)
- コップに飲み物を注ぐこと
- 袋を開ける
- ごはんをよそう
- 袋の上からお肉等をもむ
- 米とぎ
お子さんたちはまだまだ発達の途中なので、はじめは上手にできないこともあるかもしれません。まずは『やってみる』『楽しみながら取り組んでみる』ことが大切です。お互いのストレスにならない範囲でお手伝いを取り入れてみるのも、お子さんの経験を増やすいい機会になるでしょう!
※今回は、一般社団法人ぽけっとの【臨床心理士】が執筆しました。
一般社団法人ぽけっと
2017年2月設立。児童発達支援・放課後等デイサービス事業『発達支援ルームぽけっと』や園や学校の先生方を支援する研修・巡回事業等のサービスを提供しています。
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