“感覚の過敏さ”とは…
ご相談でよくうかがう内容として“偏食(食べ物の好き嫌い)”についてのお話があります。子育て本やインターネットの情報からも目にする機会は多いのではないかと思います。形状や見た目の工夫をしましょう、といったアドバイスもよくみかけます。たしかにお子さんによっては、野菜単体だと食べられないけど、カレーやハンバーグなどに混ぜると大丈夫という場合もありますので、“食べない”=“与えない”とは考えずに挑戦させてみることも必要です。
しかし、お子さんの偏食でお困りのお母さんの中には、さまざまな工夫をしてみたけれど食べてくれないと頭を悩ませている方も多くいます。何をしてもどのようにしても、食べられないということはお子さんなりの理由があるはずです。その理由を考えてみることで、工夫の糸口がみえてくるかもしれません。
そこで、今回は偏食となる理由の一つである“感覚の過敏さ”についてお話しようと思います。過敏さのあるお子さんは食べ物に対し単純な好き嫌いとは異なる、以下のような気持ちを抱いている場合があります。
…など、ほんの一例ですがさまざまなたえがたい不快な感覚を抱いているのです。
もし、こういった感覚の過敏さがある上に、もともとの食への興味の薄さや、あまり多くの食事量を必要とされないタイプ(小食)のお子さんとなると、さらに食事場面は親子ともども苦難の場となりがちです。
食事が嫌にならない程度に取り入れる
では、実際に食べにくいと感じる食材をどのように食事の中に取り入れていけばいいのでしょうか。まず大事な視点としては、食べることに苦痛を伴う食材には、なかなか挑戦しようという気持ちになりにくいということです。そのため週に1回、1食程度から挑戦する機会を設けるなど、食事が嫌にならない程度に取り入れていくことをおすすめします。子どもは嫌な事柄を何度も求められてしまうと、食事自体が煩わしいものと感じてしまいがちですし、お母さん自身もせっかく工夫して作ったのに食べてくれないと、ストレスに感じてしまうこともあるかと思います。したがって、体重が減ってしまっているなど成長面での問題がないようであれば、特定の食材を食べさせようとがんばり過ぎなくてもよい、という視点をもってみるのも1つです。
食べさせることを目標にし過ぎないことも大切
もし、栄養面が気がかりならば代替となる食材を考えてみるのもいいですね。たとえば、なかなか野菜を食べられないお子さんであれば、野菜ジュース(はじめは無果汁からがおすすめです)を与えてみてもいいかもしれません。もし野菜ジュースのザラザラ感が苦手なようであれば、製氷皿で凍らせてシャーベット状にして食べさせてみるなど、代替となる食材を考えられると工夫の幅も広がってきます。
あわせて大事なこととして、家ではどれだけ工夫しても食べてくれなかった食材でも、保育園や小学校の給食など、外の場面では集団意識が働いて食べられたり、仲のよいお友達が食べているのにつられて食べられるなんてことも、よくあります。そういった外の環境の影響を受けることも考慮しながら、ご家庭の中では食べない物を食べさせることを目標にしすぎないことも大切です。
大人であっても食べて気持ち悪いと感じたり、痛みを感じる食材はできることならば避けたいですよね。でも、大人は必要に応じて我慢して食べることもできますが、感覚がまだ未熟な子どもたちには大人と同じように我慢することは難しいものです。偏食のお子さんの中には、単に“わがまま”で食べないのではなく、苦痛ともいえる感覚の過敏さをもつ子もいるという視点をもちながら、食べられたらラッキー!くらいの気持ちで苦手な食材を見えないように混ぜ込んでみたり、代替食材を使うなどの工夫を取り入れていけるといいですね。
お子さんの偏食を心配するお母さんは大変多く、栄養相談室にもたくさんの質問が寄せられています。一方で、HAPIKUのサポータさんからは「こんな方法で子どもの好き嫌いを克服しました」というコラムを頂戴しています。お母さんが実践した数々のレポートは必見ですので、参考にしてみてください。
※今回は、一般社団法人ぽけっとの【臨床心理士】が執筆しました。
一般社団法人ぽけっと
2017年2月設立。児童発達支援・放課後等デイサービス事業『発達支援ルームぽけっと』や園や学校の先生方を支援する研修・巡回事業等のサービスを提供しています。
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