Q

“飲み込む”を伝えるには?

お座りもできて、親が食べているものを欲しがり、手づかみでりんごや干しいもをかじったり口に含んだりすることはできます。しかし、かじり取ったかけらをどうしても飲み込むことができません。口の中に食べ物(それがなめらかな離乳食であっても!)があると、それが不快なのか頑張って吐き出そうとし、エッエッとやってるうちに嘔吐してしまいます。
口に含むこと、かじることまでは親の真似で教えることができましたが、飲み込むことだけはどうしても教えられません。以前は出汁にとろみをつけたものを飲み込んでくれることがありましたが、最近はそれもありません。ミルクもスプーンで与えると嫌がります。スプーンをシリコンや金属製に変えて試してもだめでした。
自分でスプーンや野菜スティックを持たせても、それで口の中に食べ物のかけらが入ってくると嫌がり、離乳食がついてない方ばかりかじりたがります。
飲み込むことを覚えてもらうにはどうしたらいいのでしょうか。
(0歳9ヵ月・男児)

A

かじりたいのは“食べたい”とは別の理由かも。意欲を大切にしつつ飲み込む練習をするには?

9ヶ月はまだ離乳食中期にあたりますが、お子さんはやわらかい離乳食ではなく、かじりつきができるようなボリュームのある食べ物の方が好きなようですね。

もしかすると、大好きなお母さんやお父さんが食べている物や、食べる姿を”真似してみたい!”と感じているのではないでしょうか?これは、ご家族で仲良く食卓を囲み「みんなで一緒にごはんを食べると楽しい」と感じているからこそだと思います。

さまざまな食べ物をかじり取っているのは、“前歯でかみ切って口の中に入れる動き”“自分の手で持った物を口の中に入れる感触”を楽しんでいるからだと言えます。お子さんの口の中をよく見てみると、歯が生える位置が盛り上がり、他の歯も出てくる準備をしているところではないでしょうか?もしかすると歯固めや口に入れるおもちゃも好きかもしれませんね。
口に入れる行動と“食べたい”という気持ちは繋がっていないことも多く、実は“歯が生えるむず痒い感触を確かめている”場合もあります。そのため「口に入れる=食べたい」ではなく「口に入れて感触を試している」と考えてみるのも1つです。食具を口に入れるのは硬さを試していると考えて、離乳食を添えずに見守ってみるのもいいかもしれませんね。

おそらくミルクや母乳は飲み込めていると思いますので、嚥下の動作はできていると考えますが、「食べられない」や「口に入れて飲み込めない・吐き出してしまう」というのは、まだお子さんの中でかじり取った食材を噛んだり、飲み込むまでの機能は追いつかず、どうしてよいか分からないから吐き出している、という場合もあります。そのため「かじり取りを頑張ったね」「飲み込みが難しいのに気づいたんだね」と段階的に捉えてみてはいかがでしょうか。

そもそも飲み込む前に食べ物を細かく砕くことが“噛む動作”ですが、噛んだ食べ物をまとめて“飲み込む”のは次のステップになります。“噛む”や“飲み込む”ためには口全体と舌の細かい動きを組み合わせて行うことが必要なのです。子どもは離乳食で、さまざまなかたさや感触の食べ物を口に入れて噛み、飲み込む練習をしています。噛むことが上手になると口の中で食べ物をまとめられるようになるため、飲み込みも上手になっていきます。

 

お子さんは“かじりたい”意欲があるようなので、スティック状のたまごボーロなど、自分の手で持ち、かじって口に入れると唾液で溶けやすいお菓子で食べる練習をするのもよいと思いますよ。また、細切りにして蒸したりゆでたりしたさつまいもやじゃがいもも、口の中で溶けやすいのでおすすめです。こういった工夫を取り入れながら、口の中で溶けた物(離乳食の段階で食べるかたさ)を「ごっくん」とお母さんが飲み込む動作を見せ、お子さんと一緒に、飲み込む練習をしていけるとよいと思います。

また水分を飲む時にはスプーンを利用するよりも、自分で吸って飲めるストローのついたマグや水筒を試してみても良いでしょう。

 

ご家族で囲む食卓を楽しみに出来ることが、食への意欲につながります。お子さんが「自分でやってみたい」という気持ちでさまざまな食べ物にチャレンジしている様子を、家族で「次は何を食べるのかな」と楽しみにしながら、食事の幅を拡げられると良いですね。

 

※今回は、一般社団法人ぽけっと【言語聴覚士】が回答しました。