「夏も近づく八十八夜」<br> 新茶と和菓子のおいしい関係

立春から数えて88日目(例年5月2日頃)を「八十八夜」といいます。昔の人々は、この時期を「夏の準備をはじめる目安」ととらえ、農作物が霜で枯れることもなくなることから、種まきや田植えの準備、茶摘みなどの農作業を行う時期としてきました。
また、「末広がり」の八の字が二つ重なる「八十八夜」は縁起のよい日とされ、この日に摘んだお茶は、「飲むと長生きできる。無病息災で過ごせる」などと言い伝えられています。
そこで今回は、「八十八夜」の遊びや文化に触れながら、この時期ならではの新茶と和菓子の楽しみ方についてご紹介します。

親子で手遊び『茶摘み』

「♪夏も近づく八十八夜〜」ではじまる文部省唱歌『茶摘み』は、文化庁が選定した「日本の歌百選」に選ばれている曲のひとつです。この歌は、子どもが二人で互いの手を合わせながら歌う手遊び歌としても有名です。季節の行事を大切にする意味でも、お子さんと一緒に手遊び歌にチャレンジしてみませんか。

 

「茶摘み」(文部省唱歌)の歌詞

夏も近づく八十八夜

野にも山にも若葉が茂る

あれに見えるは茶摘みじゃないか

あかねだすきに菅のかさ

 

茶摘みの手遊び

二人で向き合って座り、歌に合わせて手拍子をします。歌い出しの前に自分の両手を1回叩き、夏の「な」で相手と自分の右手を、続く「つ」で自分の両手を叩きます。同じ動作を左手でも繰り返し、歌詞に合わせて左右交互に続けていきます。「八十八夜」まで進むと、そのあとに2拍子分あまるので、相手と自分の両手をトントンと叩きます。あとは続きの歌を歌いながら一連の流れを繰り返します。

遊び方を紹介している動画もあります。

 

遊び方の紹介動画

※地方によって、振り付けが異なる場合があります。

 

 

初ものを食べる

昔から日本人は「初もの」にこだわってきました。その年のはじめにとれた魚介類や農作物は「初もの」と呼ばれ、生気がみなぎる、それを食べれば寿命が延びるなどと考えられていたのです。「初もの七十五日(初ものを食べると寿命が75日延びる)」と言われるのも、その所以でしょう。この時期の「初もの」としては、新茶や初がつおが有名です。

今では輸入食材が増えたり、食材によっては1年を通して季節感なく手に入るようになり、「初もの」がわかりにくくなっていますが、新茶が出まわるこの時期は食卓にあげて、「初もの」を話題にするのもいいかもしれませんね。

 

 

お茶と和菓子のおいしい関係

最近はティーバッグのお茶が増えていますが、八十八夜には急須で新茶を入れ、お茶本来のおいしさを味わってはいかがでしょうか。新茶にはアミノ酸の一種であるテアニンが多く含まれ、リラックス効果があるといわれています。二番茶、三番茶に比べて渋みを感じるタンニンが少ないため、子どもにとって飲みやすいのもうれしいポイントです。

そして、お茶請けには和菓子がおすすめです。もし新茶に苦みや渋みを感じることがあっても、和菓子と一緒に食べることで軽減できます。和菓子の中に、移り変わる四季を感じることができるのも魅力の一つ。和菓子店を訪れれば、その彩りの豊かさや見た目の美しさに驚かされるはずです。

 

急須を使ったお茶の入れ方

① 人数分の茶碗に熱湯を注ぎ、茶碗が持てるくらいまで冷まします。

➁ 急須に人数分の茶葉を入れます。目安は一人茶さじ一杯です。

③ ①の茶碗の湯を急須に移し、ふたをして1~2分蒸らします。

④ 急須のふたを押さえながら、各茶碗に少量ずつ注ぎ、茶椀の7分目まで注ぎます。

 

この時期ならではの和菓子

若あゆ

鮎に似せて作られた和菓子。楕円形に焼き上げたカステラ生地で求肥を包み、半月形に整え、焼印で目とひれの印をつけたもの。6月の鮎の解禁にあわせてつくられます。

 

水無月(みなづき)

小豆が乗った白い外郎生地を三角形にカットした和菓子。小豆は悪魔払いの意味があり、三角の形の外郎は暑気を払う氷を表していると言われます。

1年の折り返しとなる6月30日から残り半年の無病息災を祈願する神事、京都の「夏越祓(なごしのはらえ)」の和菓子として親しまれています。

ちなみに、半年後の12月末には「年越の祓い」という神事が行われ、年2回の神事により1年を通して罪穢(つみけがれ)を払い清めるとされています。

 

紫陽花(あじさい)

紫陽花を模した和菓子。さまざまなレシピがありますが、求肥を包んだ白餡に、色付けされた寒天や氷餅などを付けてつくられます。紫や青のグラデーションがキラキラして特にきれいです。

 

 

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何となく素通りしてしまいがちな「八十八夜」ですが、家族で楽しむ季節の行事のひとつに加えてみてはいかがでしょうか。その時には、ぜひおいしいお茶と季節の和菓子をご一緒にお楽しみください。