冬に負担になりやすい「腎」
冬は、春に向けてエネルギーを蓄える時期でもあり、身体に油脂や糖を取り込み、冬の寒さに対応するためのからだ作りをしています。秋になるとくだもの、さつまいもやかぼちゃなどの甘い野菜、脂ののった魚が出回るのもそのためです。一方で、冬は寒さの影響で子どもも大人も新陳代謝が夏場より落ちたり、活動量が減ったりします。人は動物のように冬眠はしませんが、体の中では気や血液が停滞しがちになります。
そこで負担になりやすいのが、身体の中の水分代謝を司る「腎」です。ここに該当するのが、尿を作っている腎臓、尿を蓄える膀胱そして生殖器と、体の下の方にある臓器であり、体内の水分を調節する臓器が中心です。これらの臓器は「寒さ」や「冷え」の影響を最も受けやすいとも言えます。
冬は「黒い食べ物」を意識する
「腎」が弱くなり、腎臓の機能低下などによって身体に起きる不調や症状を「腎虚(じんきょ)」といいます。子どもに出やすい症状としては、耳のトラブル、トイレが近い&おしっこが出づらい、寝つきが悪い、手足が冷えやすい、などです。
また腎虚により皮膚にあらわれる色は黒色だと言われています。目の下にできるクマが黒かったり、唇の周辺が黒くなったり、白目の中に黒点ができたりと、これらのことからも腎機能の低下をみることができます。
この「腎」を補う食べ物には黒い色の食材が多く、「腎」を癒すと捉えられています。黒い色はアントシアニン、ルチンなどのポリフェノールを多く含み、体温を上げる働きや血を増やす作用があるので、まさに冬に取りたい食材の色といえます。
冬の「鹹味(かんみ)」
黒い食べ物以外に、冬の「腎」を癒す味覚として「鹹味(かんみ)」があげられます。これは塩辛い味とも言い換えられます。東北地方の味付けは塩辛く、九州では甘味がよく出されますが、これは塩味には熱を逃がさない働きがあり、逆に甘味には熱を逃がす働きがあるからです。冬に熱を逃がさない寒い地方の知恵がしょっぱいみそだったり、塩辛だったりするわけです。子どもの場合は塩分の摂り過ぎも気になるため、みそやしょうゆなどの伝統的な調味料を使って塩分を摂るようにするとよいと思います。
お正月に食卓に並んぶおせち料理を思い浮かべてみてください。冬の代表的な食べ物を使った「腎」を癒す知恵がたくさん詰まっていることに気づきます。
そして「腎」を助けるのは、下の図からもおわかりのように右隣の「肺」。ここは「白い色」がよいとされ、大根、れんこん、里いも、くわいなどが含まれます。これらもおせち料理でよく見かけますよね。
まだまだ寒い日が続きます。冬に負担になりやすい「腎」を養う冬の味覚を、お子さんと一緒に少し意識しながら召し上がってみてはいかがでしょうか。