5つの味の働きと子どもの味覚

和食の5つの味

舌が感じる味覚は、日本人が発見した「うま味」を含む、「酸味」「苦味」「甘味」「塩味」の5つと言われています。「辛味」は味覚ではなく痛覚や温覚で捉えられますが、東洋医学の五行における5つの味では、「酸味」「苦味」「甘味」「鹹味/かんみ(=塩辛い味)」の4つに加えて「辛味」が入ります。

東洋医学からみる和食でもご紹介しましたが、和食は古くから五行の影響を受けており、栄養学のない頃、5つの調理法(五法)、5つの味(五味)、5つの色合い(五色)のバランスを取ることで栄養のバランスをとってきました。

 

5つの味の働き

5つの味をバランスよく取っていくことを「五味調和」といい、生薬を組み合わせて作られる漢方薬もこの五味のバランスをとって調合されています。それでは、五味の働きをみていきましょう。

 

酸味:引き締める働き。下痢止め作用。

例)酢で魚を締める

 

苦味:体の熱を取り、乾燥させる働き。排便や解毒作用。

例)春の山菜などの苦味が排便や解毒を促す。暑い夏場にゴーヤやビールで体の熱を取る。

 

甘味:リラックス、緩める働き。

例)お肉を麹や砂糖に漬けて柔らかくする。甘いものを食べるとリラックスする。

 

辛味:発散させる、気や血の巡りをよくする働き。

例)カレーなどのからい物を食べると汗が出てくる。

 

鹹味(塩味):硬いものを柔らかくする働き。排便作用。

例)キャベツを塩もみして柔らかくする。

 

例にも挙げたように、普段の調理や季節の食材や料理などで、すでに利用しているものがありますね。

 

五行における五味

 

それぞれの味は、下の図のように五行の5つのエネルギーに分けられます。5つの味にはバランスが大切とお伝えしましたが、1つの味が多すぎると、他の部分に影響を与えてしまいます。「木」が育ちすぎると「土」の養分をとり、「火」が強いと「鉄(金)」を溶かし、「土」が多いと「水」の流れを止めます。五行ではこれを「相克(そうこく)」といい、1つのエネルギーが強すぎることで対立する関係のエネルギーを妨げることにつながります。

 

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和食では、例えばあんこ(甘味)を煮る時に塩(鹹味)を入れたり、酢の物(酸味)には砂糖(甘味)を足したり、きんぴらごぼう(苦味)にはとうがらし(辛味)を入れたりと、1つの味が強くなりすぎないように、赤い矢印の先の相克関係になる味と組み合わせる工夫がされています。これを二味配合といいます。
この中にある「甘味」、これはもともと穀物やさつまいもなど自然の甘さを指しますが、お砂糖のたっぷり入ったお菓子は「土」のエネルギーが強くなりすぎ、相克の「水」を押さえてしまいます。2つの味の組み合わせは、日々の献立にも取り入れられるだけでなく、間食などで甘いものを取った時とき、子どもの食べやすい鹹味となる海苔やじゃこ、みそ汁などを食事で摂るようにするとよいでしょう。

 

子どもが苦手な味

子どもは苦手な味がいくつかあります。大人よりも表面積が小さいため痛覚を感じやすく、子どもは辛味を強く感じやすく苦手です。また本能的に酸味は腐敗した味、苦味は毒の味と判断するため、苦手なことが多く、これらの味は少しずつ経験を積むことで食べられるようになっていきます。

子どもは本能的に味を選ぶことが多いため、普段苦手そうにしている味でも、体に必要なときだけ食べることもあります。無理して食べさせる必要はありませんが、苦手だろう、と決めつけずに少しだけ箸をつけてみることを提案してみたり、子どもが好きなものと一緒に調理したりするのもおすすめです。これからの季節であれば、新ごぼうやゴーヤの苦味を少し取り入れてみるのもよいでしょう。

小さい頃から手先に色々な刺激を与えると脳によいとされるように、味覚についてもいろいろな味を子どもの頃から経験させてあげることが、子どもの“おいしい”や“豊かな味覚”を育てていくポイントとなります。