6月は「食育月間」!<br>考えよう。大人も子どもも、みんなの未来をつくる「食育」の大切さ

6月は「食育月間」!
考えよう。大人も子どもも、みんなの未来をつくる「食育」の大切さ

2017.6.16

みなさん、6月が「食育月間」ということをご存じでしたか?

「食育」という言葉自体はだいぶ世の中になじんできたように思いますが、「食育って、食べることをもっとちゃんと考えようってことでしょ?」となんとなくのイメージだけお持ちの方が多いかもしれません。

そこで今回は、食育月間にあたって、ごくごく基本的なことですが、「食育」ってなんだろう? 日本の食育にかんする取り組みはどのように行われてきたんだろう? ということについて復習しつつ、子どもにとっての食育について考えていきたいと思います。

 

「食育」ってなんだろう?あらためて、おさらい。

2005年、内閣府に設置された食育推進会議により「食育基本法」が作成・成立しました。今から12年前のことです。これは、総理大臣と12省庁が連携し、国家レベルで「国民の食について、いよいよみんなでどうにかしないといけない!」と考え定められた、世界でも珍しい法律なのでした。

食育基本法 全文 [PDF]

 

食育基本法の前文にはこうあります。

 

「21世紀における我が国の発展のためには、子どもたちが健全な心と身体を培い、 未来や国際社会に向かって羽ばたくことができるようにするとともに、すべての国民が心身の健康を確保し、生涯にわたって生き生きと暮らすことができるようにすることが大切である。子どもたちが豊かな人間性をはぐくみ、生きる力を身に付けていくためには、何よりも「食」が重要である。」

 

国民が健全な心身を培うため、国や地方自治体、教育関係者、そして家庭が一丸となって、総合的に計画を推進していこう!というものです。

 

また食育について、このように定義されています。

 

「食育は、生きる上での基本であって、知育、徳育、体育の基礎となるべきものと位置付けられるとともに、様々な経験を通じて、「食」に関する知識と「食」を選択する力を習得し、健全な食生活を実践することができる人間を育てるもの。」

 

<基本理念>

  • 国民の心身の健康の増進と豊かな人間形成
  • 食に関する感謝の念と理解
  • 食育推進運動の展開
  • 子どもの食育における保護者、教育関係者等の役割
  • 食に関する体験活動と食育推進活動の実践
  • 伝統的な食文化、環境と調和した生産等への配意及び農山漁村の活性化と食料自給率の向上への貢献
  • 食品の安全性の確保等における幅広い食育の役割

 

なんだか少し、堅苦しいですよね。この食育基本法に基づき、国ではこれまでに段階的に「食育推進基本計画」を計画・実施し、さらに都道府県は「都道府県食育推進計画」、市町村は「市町村食育推進計画」を実施してきました。ご自分のお住まいの自治体にも、「食育推進計画」があると思います。といっても、なかなか目にする機会はないと思います。ぜひお手すきの時に、自治体のWebサイトを調べてみてください。「●●市(区)食育推進計画」と検索すると、ヒットすると思います。

 

食べ物はあふれているのに、栄養不足。
国民の食生活を反映してきた「食育推進基本計画」

食育基本法制定の背景には、国民の健康問題・食生活の急激な変化がありました。戦後の復興と共に生活環境も豊かになり、必要な栄養を十分に摂れるようになり、「飽食の時代」を迎えた日本。その反面、食の欧米化、ファーストフードやコンビニ弁当、スナック菓子などいわゆるジャンクフードが普及し、脂質食塩肉類を過剰に摂るようになりました。栄養のバランスがくずれ、肥満や糖尿病などの生活習慣病も増加しており、小児期の子どもにも高血圧や肥満などの症状も見られるようになりました。

 

国民の健康の問題や食生活の変化と併せて、2000年代初頭に起きた、食にまつわるさまざまな事件も、食育基本法の制定に拍車をかけました。覚えていらっしゃる方も多いかと思いますが、当時、冷凍食品(中国産ホウレンソウ)の残留農薬問題や、食品メーカーや小売業者による産地偽装問題、またBSE感染牛や鳥インフルエンザなど、食の安全を揺るがす事件が次々に発生しました。時の首相・小泉純一郎氏が、消費者の不安や不信感を取り除くスローガンとして「食育」という言葉をたびたび取り上げたことから、「食育」というキーワードが注目され、その語源にも脚光があたったのです。

 

歴史をさかのぼると、「食育」という言葉を造語したのは、明治時代の医師・薬剤師で、陸軍医も務めた石塚左玄(1851―1909)です。栄養学がまだ学問として成立していない時代、食物と心身の関係に着目し、食事の指導を用いて病気を治していました。石塚は医食同源としての食養を提唱、「体育智育才育は即ち食育なり」と食育を提唱したのでした。その後、たびたび有識者や企業、メディアが食育という言葉を用いてきましたが、食育基本法の制定により、国民の間に浸透していきました。

 

さて、話を食育基本法制定以降の国の取り組みに戻します。簡単に年表にまとめてみました。

現在進められているのは、「第三次食育推進基本計画」で、平成28年から32年までの5か年計画になっています。

それぞれの食育推進基本計画の重点課題と、その時々の時代の出来事を見てみると、どんなことが見えてくるでしょうか?

 

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国をあげて、食育計画に取り組んでいる背景には、生活習慣病の増加による医療費や保険料の負担増食料自給率の低下日本の食文化の衰退食品ロスによる環境問題子どもの貧困など、国の活力にかかわる重大な問題であるからに他なりません。私たちは今まさに、その当事者なのです。