どんなことを工夫すれば、子どもは食に興味をもって自発的に食べてくれるのでしょう。今回は、子どもの食事づくりに役立つポイントを5つお伝えします。
1.一汁三菜で咀嚼力をつける
子どもの咀嚼力を養い、栄養バランスのとれた献立にするには、食卓に並ぶお皿の数はとても大切です。食事の基本は、昔ながらの日本型食生活である一汁三菜を意識し、ごはん、汁物、おかず3種(主菜と副菜2品)を用意しましょう。
たとえば、汁物を飲むときは口をすぼめて液体の量を微調整しないと、むせてしまいます。汁物を飲めるようになることは口腔機能の発達につながるので、ぜひ補助しながら飲ませてみてください。
また、ごはん粒や主菜の肉や魚は弾力があるので、誤嚥を防ぐために奥歯でしっかり噛むことを覚えます。野菜や海藻類の副菜は、シャキシャキ、パリパリ、コリコリ、カリカリといったさまざまな食感を味わいながら聴覚も刺激できます。
このように、お皿を分けることにより食感の違いをいろいろと味わうことができ、咀嚼力も自然についていきます。もちろん毎回ごとに品数がそろえられなくてもかまいません。麺類や丼ぶりもののときは、くだものを組み合わせてもいいでしょう。
※乳幼児期は、まだまだ腎臓機能や消化器官が未熟です。大人と同じ味付けでは濃すぎるので、1~2歳では大人の半量程度の濃さが望ましいでしょう。
2.カラフルな彩りを意識すれば、栄養バランスが自然にととのう
料理は見た目の印象も大事。食材の色を活かして彩りよく仕上げましょう。次に挙げる五色を意識してみてください。五色すべて用意しようと思わなくてもいいのですが、彩りをよくすることで自然と栄養素のバランスがととのいますよ。
黄色…豆腐、ゆば、納豆、油揚げ、卵、みかん、かぼちゃ、とうもろこし、さつまいもなど。
赤色…肉、魚、にんじん、トマト、いちご、スイカなど。
緑色…ブロッコリー、いんげん、青菜など。
白色…ごはん、麺類、パン、乳製品、大根、かぶ、玉ねぎ、じゃがいも、里いも、バナナなど。
黒色…わかめ、ひじき、海苔、きのこ、黒ごまなど。
簡単にできる例でいうと、ツナおにぎりとかぼちゃのサラダ(いんげん入り)の組み合わせ。ごはん(白)、海苔(黒)、ツナ(赤)、かぼちゃ(黄色)、いんげん(緑)などの五色がそろいます。
嗜好飲料、菓子、調味料については除いて組み合わせましょう。
3.切り方や盛り付けを工夫して興味をもたせる
大根やにんじんを動物の形に型抜きしたり、ウインナーをタコの形にしたり、おにぎりに海苔でパンダを描いたりと、ちょっとした工夫をすると子どもは大喜びです。また、子どもが好きな形のピックを刺したり、食器やカトラリーに好きなキャラクターものを取り入れるとテンションが上がり、食事に興味を示してくれます。
「デコ弁」のように凝ったものを作らなくても、型抜きや飾りをつけるなど、少しだけでもお手伝いさせるとさらに興味をもってくれますよ。
4.シチュエーションを変えて気分転換を図る
たとえば、おうちの庭やベランダで食べるだけでも景色が変わって新鮮な気分になりますよね。気持ちもいいし、楽しくなると食も進みます。広場に行って皆と一緒に食べたり、公園でピクニックをしたり、いつもと違った場所で食べるのも気分が変わるので効果的です。
5.手づかみしやすいものを用意して「手づかみ食べ」を助ける
赤ちゃんは9ヵ月ごろから食べものに興味をもち、触り始めます。手づかみは子どもの食べたい意欲のあらわれでもあり、自分で食べる「自食」の第一歩ですから、興味を示したらやらせてあげたほうがいいでしょう。
最初は大小かまわず何でも口に入れ、うまく食べられないと口から出すなどしますが、そうやって、少なすぎたり入れすぎたりするのを自分で調整しながら「ひと口量」を約1年かけて学んでいきます。手で握ったり、前歯で噛みちぎった感覚で、食べ物の固さや温度、形状を確認し、咀嚼の練習をしながら食べ方を覚えていくのです。
手にもたせることが「手づかみ食べ」の練習になりますから、手づかみしやすいものを渡してあげましょう。たとえば、軟飯ならラップに包んでひと口大の棒状にしたり、パンは白い部分を1~2㎝のスティック状にしたり。野菜やいも類は煮たり蒸したりして乱切りや輪切り、スティック状に、りんごなどは厚さ0.5㎝の薄切りにし、手づかみしやすい大きさにしてあげましょう。1歳代で手づかみ食べができればいいので、焦らなくても大丈夫です。
こぼしたり汚れたりするので親は大変ですが、「手づかみ食べ」で手と口を協調して動かせるようになることが、スプーンやフォークを使う「食具食べ」へとつながります。片づけがしやすいようにエプロンを使ったり、ビニールシートを床に敷いたりし、たくさん手づかみ食べをさせてあげましょう。
Column
食事タイムで気をつけることは?
食事中に水やお茶を用意してもかまいませんが、食べものをあまり噛まずに流し込んでしまうことがあります。よく噛むことで唾液が出て、その唾液と混ぜ合わせて食べられるようになるのが理想なので、水分に頼らずによく噛むように声かけをしましょう。
また、食事のときの子どもの集中力は5〜10分ほどしかもちません。他のことに興味もいきやすいので、そんなときは「このにんじんさん、おいしいね」など、食べものに興味をもつように話しかけてみましょう。それから、テレビなどの映像を見せながらの食事は好ましくありません。食べものを味わって食べることができないので、テレビは消して、家族でコミュケーションをとりながら食事を楽しめるように関わりましょう。
レトルト食品は、使ってもいい?
離乳食、幼児食用のレトルト食品は、添加物が気になるところでしょう。
日本のレトルトの添加物は、「食品衛生法」に基づき、加工品に使用している食品添加物は原則としてすべて表示されています。また、「日本ベビーフード協議会」は、関係行政官庁の指導の下に自主規格(大きさ、味なども含めて)などを作成し、食品添加物、残留農薬、環境ホルモン、遺伝子組み換え食品などの基準を設けて食品表示がされています。さらに、消費者庁は「乳幼児用規格適用食品」の表示がある食品には放射能物質が50ベクレル/㎏以下であることとしています。このようなことからも安心・安全であるといえます。
そうはいってもレトルト食品は味や大きさ、とろみが均一ですからそれだけでは物足りなくなります。子どもが食べものに興味をもつには、やはり旬などの食品を使用することが大事。レトルト食品は、食事を補うものとして使用するといいでしょう。
たとえば、たくさんの食材を使って料理ができなかったり、鉄不足や野菜不足が気になるなど不安に思ったりするときは、品数や栄養素を補うために利用します。レバーは鉄を多く含むと知っていても、家では調理しづらい食品ですよね。そういったときに手作りの献立にレバー入り食品を組み合わせることができます。
また、外出先で食事をするときは、自分で用意した離乳食や幼児食でもかまいませんが衛生管理が重要になります。水分が多く塩分の少ない離乳食などは腐りやすいので、食中毒予防にレトルト食品を使用してもいいでしょう。
乳幼児用のレトルト食品は月齢に応じた形状や味付け、とろみ付けになっているので、保護者自身も食べてみると大きさや味付けの参考になりますよ。