<font>園長たちのスペシャル座談会</font><br>保育園が考える「子どもは社会で育てよう!」ってどんなこと?

首都圏を中心に、保育園、学童クラブなど116施設(2017年4月現在)を運営する株式会社グローバルキッズ。中でも、東京都大田区エリアの認可・認証保育園6園は、保育園ならではの地域子育て支援に積極的に取り組んでいます。
「地域とのよい関係づくりには、『ありがとう!』の気持ちが大事!」と口をそろえる園長たち。子ども達の成長にとって、地域との絆は大切な環境の一つ。各園それぞれ特徴ある事例についてお話ししてもらいました。

大森西園 宗髙園長:大森西園は2016年に開園したばかりの新しい園ですが、少しずつ、ご近所さんとのいい関係ができつつあります。

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フラワーアレンジメントを楽しむ大森西園の子どもたち

公立保育園や幼稚園が声をかけてくれて、交流の輪が広がっています。例えば5歳児クラスが新年お祝い会に出かけて行ったり、発表会を見学したり。また、園庭に起震車が来たときにも、呼んでいただきました。園庭のない保育園なのですが、そういったお声がけで地域に一歩踏み出すことができましたね。

また、保護者の中に、大田市場のお花屋さんで働いている方がいて、子ども達を対象に「花育」に取り組まれている会社さんなのですが、園に来てくださり、フラワーアレンジメントを楽しみました。4,5歳児が参加し、予め作っておいた牛乳パックの花器にオアシスを入れて生け花を作りました。とてもわかりやすく丁寧に教えてくださり、子ども達の想像力、個性あふれる素敵な作品ができました。

 

飯田エリアマネージャー:僕も参加させてもらったんですが、大人も楽しめました!親子でブーケづくりなんかも楽しいかもしれませんね。

 

西馬込園 小坂園長:うちの園は、近隣の老人ホームに月1回訪問しているんですよ。毎月行っているので、高齢者の方も子ども達の名前を覚えてくださっているほど。

また、すぐご近所にJAがあるのですが、花壇に、馬込地域特産の野菜(冬は色とりどりのビオラ)が植えられています。三寸人参、半白きゅうりなど、めずらしい野菜があるんです。年中さんが水やりをしに行っています。JAの職員の方もいつも優しくしてくださり、子ども達もその方の名前を呼んで挨拶したりと、とても仲良くさせていただいています。区民の畑も近くに3か所もあって。でも残念ながら枠がいっぱいで借りられなかったのですが、畑の管理をしている女性が「雑草抜きのお手伝いをしにおいで」と誘ってくださり、年長さんたちが通っています。虫や野菜、花の話をしてくださって、子ども達にとってはまさに生きた図鑑ですね。貴重な体験をさせていただいています。

また、もう一つ素敵なことがありました!畑の管理をしている男性に畑で子どもたちがお誕生日を祝って歌を歌ったそうです。それがとても嬉しくて朝のラジオに投稿して読んでもらったと仰っていました。お年寄りにとっては元気のもとになり、子どもにとっては生きる知恵をいただけてお互いによい刺激になっています。

 

花壇のお手入れをする西馬込園の子どもたち
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卒園児のお別れ会に地域の方をお招きし、ありがとうカードをプレゼント

 

石川台こども園 樋口園長:認証保育園なので、比較的低年齢の子どもが多く、遠くまで出かけられないのですが、お散歩に行ったときには必ずあいさつをするようにしています。あいさつをすることで街のみなさんに覚えていただいて、可愛がっていただいています。

「金魚のおじさん」と呼んでいるお宅では、玄関先に水槽があり、ある日金魚が水槽にいなくて子ども達が不思議がっていたら、出てきて「いま、水槽のお掃除中だからおうちの中にいるんだよ」と説明してくれました。子ども達も散歩途中に水槽をのぞくのをとても楽しみにしています。

 

千鳥町園 小林園長:千鳥町園も同じく認証園で、同じく遠くまで出向いての交流となるとなかなか難しいのですが、公立や私立の保育園からのお誘いで、年に3~4回、夏祭りやクリスマス会、けむり体験訓練などに参加させてもらっています。また、大田区に本社のある福祉の事業所の方が運営委員として来てくださったり、これから少しずつ交流の輪を広げていかれたらいいな、と思っています。

大田区は、公立保育園と私立や認証保育園との交流に力を入れていますね。大田区では、公立保育園が各エリアの担当になって、地域会議のような形で情報交換の機会があったり、交流の場を設定してくれたりと、保育の現場のネットワークがあるのがありがたいですね。

 

蒲田園 松岡園長:蒲田駅から徒歩5分、商店街のはずれに位置する蒲田園。地域交流も頑張っています!公立・私立の保育園ではプール、児童館ではおもちゃをお借りしたり。皆さん「いつでもおいで!」と声をかけてくださいます。また先日は保護者の方の会社訪問も。ペッパー君が会社にいるから会いに来て!というお誘いを受けて、2歳児クラスの子ども達が、(園児のお父様の)会社に遊びに行きました。お父さん、お母さんの働く姿を見られる機会はなかなかないので、貴重な体験になりました。大人の働いている姿を見ることで、子ども達の「早く大人になりたいな」という憧れや夢、社会性が育っていくと思います。そういう意味でも、蒲田は商店街の街なので、リアルな職業体験ができる機会には恵まれていますね。これからもっと商店街ともつながっていきたいな、と考えています。また、小・中学校や高校も近くにあるので、来年度は、積極的に学生ボランティアや保育体験も受け入れられたらと思っています。将来、保育士になりたいという夢につながっていってくれたらそれはそれで嬉しいですよね。

 

宗髙商店街といえば、うちの園の近くにも、大森町商店街があって、お散歩に行ったとき挨拶しているうちに、声をかけてくださるようになりました。ハロウィンの時など、ありがとうという気持ちを込めて園児が送ったカードを店先に飾ってくださったりして。交流の輪が広がっています。

 

小坂:日ごろから、ご近所の方とつながっておくことは、災害などいざというときにも心強いですよね。西馬込園では、コンビニさんや、マンション、店舗など、50mおきに「散歩中などに災害があった場合には、立ち寄らせてもらうかもしれません」とご挨拶をしてあります。みなさん行けば歓迎してくださいます。

 

樋口:ハロウィンは、地域とのつながりをつくるきっかけの一つですよね。婦人会の方に協力していただいていて、事前に、子どもたちに渡してもらうお菓子を渡しているのですが、とても楽しみにしてくださっていて、写真を撮ってくれて反対にプレゼントをいただいてしまったり。お世話になってばかりで申し訳ないので、来年度は園の夏祭りのときに、一部をオープンにして地域の方にも立ち寄っていただけるようにしたいな、と思っています。

 

小坂:そうなんです、園庭がないので、なかなか園にお招きできないのですが、先日は近くの高校のホールに人形劇を呼んで、地域の方もお招きしたんです。うちの園は卒園生14名が7つの小学校に入学することになっています。小学校入学前に少しでも交流して子ども達の不安や緊張をやわらげられたらと思い、散歩で7つの小学校めぐりをしたり、保育園や幼稚園との交流の際には、「○○小学校に行く人!」というグループ分けをしたりと工夫しています。

 

小林:いつも出かける公園で小規模認可園や、認可保育園のクラスと交流しています。一緒に遊ぶだけなんですが、交通安全週間の時にお呼ばれしました。認証園から認可園に転園する子がいるのですが、普段から交流ができていることで、園が変わっても新しい環境にスムーズになじめるきっかけになるのではと思います。

 

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多摩川の豊かな自然環境も、遊び場のひとつです

園から子ども達の足で歩いて30分ほどのところに、多摩川の河川敷があります。 広い野原や運動場、青い空の下で、この地域の自然環境をのびのび楽しんでいます。人も環境、そして自然も環境。園の施設は小さくても、地域のいろいろな資源を活用することができますね。

 

飯田:それぞれの園で、地域の特性や日ごろの保育活動の中で無理なくできる地域交流を行っています。それだけではなく、大田区エリアの強みを活かせているのが、昨年第1回目を行った「スマイルポート」です。園庭がないビルインの園でも、地域の方を招いて子育て支援ができるという一つの良い事例になったと思います。

 

 

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第1回スマイルポート

蒲田園にて開催された、子育て支援イベント。「子育ては楽しいもの、一人じゃないよ」というメッセージを発信する場として、大田区認可・認証6園が力を合わせ、数か月前から企画・準備してきました。

 

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産前産後ママのスキンケア講座

保育・調理・看護面から、保育園の専門性を生かしたバラエティ豊かなプログラムを実施。

地域の子育て家庭に向けて、絵本や、便利な子育てグッズの紹介、手作りおもちゃや絵本の体験コーナーでは、保育士が楽しみ方を伝授しました。

また、園で提供している給食のミニ試食会や、ママ向けの骨盤体操エクササイズ、スキンケア講座も好評でした。

たくさんの親子でにぎわいました。

 

園の看護師、保育士が心をこめて作った資料を配布
保育士とお話ししながら、園のおもちゃを体験していただきました

 

 

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こころの東京塾@大森山王こども園

大森山王こども園(認証)では、2017年1月から3月にかけて月1回、園児と入園児の保護者を対象に、「こころの東京塾」を実施しました。

 

「こころの東京塾」開催の様子

「大人も変われば子どもも変わる」の趣旨のもと、親と大人が責任を持ち、次代を担う子どもの正義感や倫理観、思いやりの心をはぐくみ、社会性のある大人に育てていこうという東京都青少年課の取り組みで、出張講座をはじめ、ワークショップやセミナーを開催しているものです。

経験豊かな東京都のアドバイザーが講師となり、グループワークを行いました。

 

「初めての子育てで、一人で悩んでいるお父さんお母さんの心の重荷を少しでも軽くしてあげられたらと思い、企画しました。これからさらに、ご見学の方や地域の方も気軽に相談できるような機会を作っていかれたらいいなと考えています」と髙橋民子園長。

参加の保護者の皆さんからは「子どものしつけや困りごとについて、他のご家庭の話も聞くことができ、少し気が楽になりました」「アドバイザーの方のお話しに勇気づけられました」などの声が聞かれました。

 

 

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松岡:実はそのスマイルポートの第二回目を企画しています。今回の企画では、さらに、地域に開かれた園を目指していかれたらいいなと思っています。

ビルの中の園なので、こちらから出かけるばかりで、なかなかご招待できていなかったのですが、地域の方に「ありがとう」の気持ちを発信したり、イベントに来ていただいたり、楽しい企画を考えています。

街全体・地域全体で子育てを楽しむ社会をつくっていくために、その拠点として少しでも保育園が貢献していかれたらいいですね。

保育園の専門性を生かした子育て支援。

グローバルキッズの大田区エリアの保育園での取り組みを紹介しました。

『頑張りすぎないで大丈夫、一緒に子育てを楽しみましょう!』…保育園はいつも、みなさんのそばで、ほっとできる場所でありたいと願っています!

 

そして、全国各地の保育園では、育児相談や、園庭開放、保育体験…保育園の機能を活かした取り組みが行われています。ぜひ、みなさんも、保育園や児童館、子ども家庭支援センターなど、お住まいの地域の子育て支援拠点に足を運んでみてくださいね。

 

子どもは地域社会…近所のおじいちゃんおばあちゃん、企業で働く人たち、大学の学生さん、商店街の方々…地域社会のみなさんの温もりの中で、すくすく育っていきます。

そんなことを改めて感じた座談会でした。

(取材・文:竹内聖子)

この記事は、「みんなの保育の日」にちなみ特集記事として企画されたものです
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