誤嚥の大きな原因
今回のような食事の際の事故は、①食べ物が喉に詰まる、②呼吸の際に食べ物が気管に入る、この2つが大きな原因として想像できます。お子さんの口の大きさは約4㎝。トイレットペーパーの芯と同じくらいの大きさです。これより小さなものは、お子さんの口の中に入ってしまうので、誤嚥(誤って気管に入ること)につながりやすいといわれています。
食事の際には、4㎝くらいの大きさのものが口に入っても、よく噛んで小さくしてから飲み込んでいます。しかし、食べ物によってはよく噛むことが難しかったり、よく噛んでも窒息につながってしまう食べものもあるのです。
球体のもの、モソモソしたもの、マシュマロだって要注意!
喉に詰まりやすい食べものとしては、以下のものが考えられます。
ぶどう・トマトなど球状のものや豆類等は、つるりと口の中を滑りやすいため、呼吸とともにそのまま喉に入ってしまう場合があります。
じゃがいもやかぼちゃ等もそもそしているもの、おもちやこんにゃく、お肉等は、噛みにくいために大きな塊のまま飲み込もうとして、喉に詰まらせやすいです。
わかめを代表する海藻類も、やわらかくてひらひらしているため、実はしっかりとは噛みにくいです。そのため、うっかり気管の方に入ってしまうと、広がって気管をふさいでしまうという事故につながる場合があります。
パンやホットケーキを食べる際に気をつけたいのは、バターの塊。塊が残った状態で食べると、その塊が喉を詰まらせてしまう場合があります。熱で徐々に溶けるとはいえ、溶けるまでには時間がかかります。
子どもたちが大好きなおやつの中では、アメやグミ、ゼリーは、つるりと口の中を滑って喉までいってしまうことから、気をつけている方も多いと思います。クッキーやおせんべい等は、そもそも固いものが多いため、よく噛めずに塊のまま飲み込んで、喉を詰まらせてしまうこともあります。ふわふわのマシュマロも、実は要注意。マシュマロは弾力があり、歯にもくっつき噛みにくいため、そのまま飲み込んでしまうことが考えられます。
このように、普段お子さんたちがおいしく食べているもの、大好きな食べものも、喉を詰まらせ事故につながる可能性をもっています。
<喉に詰まりやすい食べもの>
いろいろなものを食べてもらいながら事故を防ぐ
しかし、事故につながるからといって、前述の食べものを全て食べさせないのは難しいことです。栄養面でももちろんですし、いろいろな食べものを食べる経験を重ねる中で、お子さんたちはからだも心も成長させているのです。
では、さまざまな食べものを食べてもらいつつ、事故を防ぐにはどうしたらいいでしょうか。いくつかのポイントをご紹介しますね!
小さく切る、ちぎる
すでにしっかりと対応されている方もいらっしゃると思いますが、これはとても大事な予防策です。お子さんが誤嚥を起こす大きさで最も多いのは、6㎜から20㎜と言われています。特に離乳食や幼児食に移行したばかりの、まだ上手に噛むことが難しい段階のお子さんには、半分の大きさ、4分の1くらいの大きさにしてあげることが大切です。上手にかじりとりができるようになってきたら、お子さんにかじり取ることを促していっても良いと思います。
しっかりと見守る
お子さんによっては、ごはんを食べているときにおしゃべりに夢中になったり、遊び食べになったりしてしまうこともありますよね。もちろん、ごはんを楽しく食べることも大切です。しかし、おしゃべりや遊びに気持ちが向き、本来入るよりも多い量を、口に詰め込んでしまっている場合もあります。たくさんの量を口に詰め込んでしまうと、そもそも噛むことが難しくなります。口に入れる量は、大人がすくってあげたり、口に運ぶ前に量を減らしたりして、調整してあげると良いでしょう。
よく噛めるようになるのを待ってから食事に出す
おもちやこんにゃく、塊の肉など、しっかりと噛む必要がある食べものは、噛むことが上手になってから出してあげるのも1つです。また、煮てやわらかくなる豆類やいも類、おもちなどは、やわらかくなるまでしっかり煮てあげると、年齢が小さいお子さんでも誤嚥の危険性が下がるでしょう。
水分をよく摂る
いも類やパン等、口の中の水分を取られる食べものもありますね。そうした食べものをたくさん口の中に詰め込んでしまうと、飲み込みにくくなるため、誤嚥しやすくなります。お茶やお水、スープなどの水分を一緒に摂ることで、これらの食べものでの誤嚥を防ぐことに繋がります。
スプーンですくって食べる
ゼリーやプリンなどぷるぷるしているものは、つまんで食べられる小さなサイズのカップでも、年齢が小さいお子さんは、大人がスプーンですくって食べさせてあげてもよいでしょう。
このときに使用するスプーンの形にもポイントがあります。スプーンの食べものを乗せる部分が、丸くて横幅が広かったり、くぼみが深かったりするものは、お子さんが食べにくい形状です。また、こうした形状のスプーンは、お子さんが自分で食べる場合にも、大人が食べさせてあげる場合にも、スプーンを上にもち上げながら、食べものを口に入れる動きになりやすいです。スプーンを上にもち上げながら口に入れていく食べさせ方は、お子さんのあごもつられて上に上がりやすいのです。あごを上に向けたまま飲み込むと、誤嚥しやすいため、注意が必要です。そのため、スプーンの食べものを乗せる部分は、①木や金属のよう固い、②幅が狭く細長い、③くぼみは浅く平らに近い、の条件を満たすものが、事故を防ぎやすい形だと考えられます。
もしも誤飲をしてしまった時の対応ですが、子どもの場合詰まったものを咳き込んだり、吐き出したりが上手にできないこともあり、子ども本人に対応させることが難しいことがほとんどです。また詰まってしまうと、気管が塞がれてしまうため、うまく声も出せません。反応としてはえずいたり、顔面の色が青白くなる、唇が青紫になる、といった様子が目で確認できるかと思われます。誤飲の程度によって大人の対応は異なるため、以下の応急処置を参考までにご紹介いたします。
詰まっている物が見える場合
つかんで取り出してください。
詰まっているものが見えず、お子さんの意識がある場合
乳児はうつ伏せにしてお腹側から大人が体を支えてあげた状態、幼児は四つ這いにした状態で、背中の肩甲骨の中心のあたりを掌の付け根で叩く。(背部叩打法)
*この際、口が閉じないように下あごを支えてあげると、吐き出しやすくなります。
乳児は仰向けにした状態でみぞおちのあたりを指2本で押す。幼児はみぞおちのあたりを押す。(ハイムリック/腹部押し上げ法)
*この方法はろっ骨を痛める可能性があるため、力は籠めすぎないよう注意してください。
救急車を呼ぶタイミング
以下の症状が見受けられる際には、すぐに救急車を呼んでください。
- 呼吸が苦しそうな状態が続く。
- 顔面が蒼白、または唇の色が青紫になる。
- 意識がなく、ぐったりしている。
- けいれん
- 呼吸が止まっている。
など
せっかくのごはやおやつの時間、お子さんにとっても楽しく、安全に、食べられることが大事ですよね。これから離乳食を始めるお子さんも、自分で食べられるようになったお子さんも、まだ大人がしっかりと見守ってあげる必要があります。日々の食事の中で取り入れられるポイントで、安全に、楽しく食事を進められるといいですね。
※今回は、一般社団法人ぽけっとの【言語聴覚士】が執筆しました。
一般社団法人ぽけっと
2017年2月設立。児童発達支援・放課後等デイサービス事業『発達支援ルームぽけっと』や園や学校の先生方を支援する研修・巡回事業等のサービスを提供しています。
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