和食の基本の調味料としてよく使われる「砂糖、塩、酢、醤油、味噌」。
ここでは、知っているようであまり知られていないそれぞれの特性や調理効果を紹介します。
お料理を段取りよく、そしてもっとおいしく作れるヒントが満載です。
第一回は、砂糖のお話です。
砂糖は、原料に「さとうきび」と「てんさい」の2つの植物が使われ、加工法の違いで種類が細かく分かれます。
健康面などで敬遠されがちですが、砂糖が分解されてできるブドウ糖は、脳のたったひとつのエネルギー源。ブドウ糖は、ほかの炭水化物からも生成されますが、砂糖はお米やパンよりも消化吸収が早いため、効率的に脳のエネルギーになります。
また、砂糖には甘味の役割のほか、次に挙げるお料理への効果がたくさんあります。離乳食では砂糖はまだ使いませんが、毎日の献立の効率UPに役立ててみてください。
知っておきたい、砂糖を使う10の効果
1、 食品が乾燥したり固くなるのを防ぐ
砂糖には食品の水分を抱え込む性質(保水性)があり、食品そのものの水分を保持し乾燥や固くなるのを防ぐ働きがあります。また、でんぷん質をしっとり柔らかく保つ働きもあるので、すし飯やおだんご、ケーキに使うと固くならずにしっとりした状態が続きます。栗きんとんを作るときも、さつまいもを砂糖と一緒に煮ると、しっとりした状態が続き、裏ごしがラクにできますよ。
2、肉や魚の生臭さを消す
砂糖には、食べ物の匂い成分を取り込み、生臭さ等を抑える働きがあります。
たとえば、魚を煮るときに砂糖を加えると、生臭さが消えて食べやすくなります。ほかに、安い肉や冷凍した肉を使うとき、下味の調味料に砂糖を少し加えてもみ込むと臭みを抑えることができます。また、ささっと作る炒め物や、さっぱり薄味の、素材をいかした料理に使うのも効果的です。
3、腐るのを防ぐ
砂糖には水分を取り込む性質があるため、カビや細菌などの微生物の水分を奪い、繁殖を抑えることができます。ジャムやようかんが腐りにくいのは、砂糖がたくさん使われているからです。
4、油の酸化を防ぐ
油を使う料理は、油の酸化が進むとニオイが発生し、風味が悪くなりますが、砂糖を使うと砂糖と油の中の水分が結合して酸素が溶け込みにくくなるため、油の酸化を抑えられます。砂糖とバターをたっぷり使ったクッキーやビスケットの風味が落ちないのは、砂糖の効果なのです。
5、肉を柔らかくする
肉は熱を加えると固くなる性質をもっていますが、砂糖をもみ込むと、砂糖が肉のたんぱく質と水分を結びつけるため、肉が固くなるのを防ぎます。しょうが焼きなどの炒め物や、いろいろな部位が入った小間切れ肉を使うときに砂糖をもみ込むとやわらかく仕上がります。
6、調味料の浸透をよくする
煮物の下茹でのときに砂糖を加えると、食材の組織が柔らかくなり、味が染みこみやすくなります。また、干し椎茸や乾燥豆を水でもどすときに砂糖を少し加えると、早く均一にもどるのでおすすめです。
7、焼き色をつける
熱調理することにより、食品のたんぱく質に含まれるアミノ酸と砂糖(糖分)が“メイラード反応”を起こし、褐色の焼き色と香ばしい香りをつける働きをします。たとえば、パンやクッキー、肉などを焼いたときに焼き色がついたり、玉ねぎを炒めると飴色になるのは、メイラード反応によるものです。
8、泡立ちを保つ
砂糖の水分を取り込む性質により、生クリームやメレンゲを泡立てる際に砂糖を加えることで、泡を維持する働きがあります。
9、卵料理の口当たりがよくなる
卵を料理する際に砂糖を加えると、たんぱく質の凝固温度が高くなり、ゆるやかに固まるため、柔らかくなめらかな口当たりに仕上がります。卵焼きやプリンを作る際に砂糖を適宜入れると“す”が入りにくく、ふんわりなめらかに仕上げることができます。
10、パンをふっくらさせる
パンを膨らませる働きをするイーストなどの酵母は、砂糖などの糖質を栄養としています。パンを作る際にイーストのそばに砂糖をおくと、パンのふくらみがより一層よくなりますよ。
砂糖の種類
白砂糖
上白糖と呼ばれるもので、さとうきびの甘み成分だけを取り出し、精製して作られています。しっとりしていて甘みとコクのバランスがよく、どんな料理にも使いやすいのが特長。色がつかないので、色をきれいに仕上げたいときにおすすめです。
グラニュー糖
白砂糖より結晶の粒が大きくサラサラしています。クセのない風味とさっぱりとした甘さで、ジャムやお菓子作りに適しています。
さとうきびを原料にしたものと、てんさいを原料にしたもの(ビートグラニュー糖)があります。
黒砂糖
さとうきびの絞り汁をそのまま煮つめて作られたもので、ミネラルやビタミンを多く含みます。コクが深く、ブロックタイプはそのまま食べてもおいしいですよね。濃厚な甘さがあり、風味が強いので、あえてそれをいかした料理やお菓子に向いています。
きび砂糖
精製途中のさとうきびの砂糖液を煮つめて作ったもの。黒砂糖ほど強い風味はなく、雑味は少しありますがあっさりしています。多少色がつきますが、しょうゆ味やみそ味なら気にならず、コクも出るので、煮物のほか、少量でしっかりコクと風味が味わえるので蒸しパンにもよく合います。
てんさい糖
てんさい(ビート・砂糖大根)から作られるもの。ミネラルや腸の働きを活発にする天然のオリゴ糖が含まれています。
やさしい甘みなのでおやつ作りにおすすめです。コクが出て、少量でも満足感のあるおやつができますよ!
三温糖
白砂糖などの結晶の残りの蜜を煮つめて作る、黄褐色の砂糖。白砂糖に比べて純度が低く、独特のコクと風味があります。こっくりした味わいに仕上がるので、煮物や佃煮、お菓子などに適しています。
和三盆糖
香川県や徳島県の一部で作られている高級な砂糖で、細やかな粒子と口溶けのよさが特徴。甘さもくどくなく、後味もよいので和菓子作りに向いています。
教えて!砂糖のギモンQ&A
離乳食から砂糖を使ってもいいの?
8カ月未満の赤ちゃんは消化がしづらく、胃腸に負担がかかるため、砂糖を使うのは控えましょう。風味づけ程度に、8カ月頃からほんの少量なら使ってもいいのですが、自然の甘み、素材の味を覚えさせるのに大切な時期なのでおすすめはできません。
いろいろな食品、食材に糖分、糖質として砂糖は含まれているので、調味料として砂糖を使うのは控えたほうが無難です。
砂糖以外に糖質は、どんな食物から摂取できるの?
糖質は多かれ少なかれほとんどの食材に含まれています。
離乳食で取り入れられるのは、ごはん、パン、麺類などの主食類。じゃがいも、さつまいも、かぼちゃ、とうもろこし、にんじん、大根、かぶ、グリーンピース、枝豆などの根菜、芋類、豆類。バナナやぶどう、レーズンやプルーンなどの果物のほか、ドライフルーツなどがあります。
料理やおやつに使うときの幼児の適量は?
先ほど述べたように、0歳〜1歳半頃までは基本的には砂糖は使わなくていいでしょう。1歳半〜2歳までは10g以下。3〜5歳までは10〜15gを目安にしましょう。
砂糖は虫歯の原因になる?
虫歯菌は糖分を栄養源にしているので、砂糖はもちろん原因のひとつではあります。
ただし、砂糖をたくさん食べたからといって虫歯になるわけではなく、だらだらと甘いものを食べ続けたり、歯に汚れが残っていることで虫歯のリスクが高くなります。
砂糖に賞味期限が表記していなのはどうして?
砂糖は品質が安定していて、長期保存ができるので、賞味期限はありません。
上手な保存方法は?
保水性が高いという特長から、湿気を吸いやすく、固まりやすいため、密閉できるビンなどに少量ずつ保存するといいですよ。