皆さんこんにちは、HAPIKU公認の管理栄養士の山田です。
11月に入り、肌寒い日が増えてきましたね。寒くなってくると、ついつい忘れがちになってしまうのが水分補給です。夏に比べて汗をかきにくくなったり、のどの渇きを感じづらくなっていても、からだのなかの水分は失われていきます。
健康なからだ作りには、ごはんをしっかり食べることはもちろん、水分をしっかりととり、からだのなかから失われた水分を補ってあげることも大切です。とくに、子どもは大人に比べてからだが小さく発達段階の途中にあるため、より注意してあげなくてはいけません。
暑さが落ち着いた季節だからこそ、今一度水分補給についてみんなで考えていきましょう。
今回は子どもの水分補給に関するお話です。水分補給が大切な理由や適切な量などさまざまなポイントを管理栄養士目線で解説します!
子どもの水分補給が大切な理由
大人の私たちにも水分補給は欠かせないですが、子どもは、小さなからだだからこその大きな理由が存在します。
子どもはからだに熱がこもりやすいから
子どものからだは、大人に比べて熱がこもりやすいのが特徴です。そこには、からだの成長が未発達なことが関与しています。(※1)
子どものからだは、大人よりも体温調節がうまくできません。とくに、からだが暑さを認知してから汗をかくまでに時間がかかります。
体温を下げる働きにも多くの時間が必要なため、大人に比べてからだに熱がこもりやすくなるといわれているのです。
また、子どもは大人よりも背が低く、地面に対して近い距離にいます。暑い時期は地面から照り返された熱の影響を受けやすく、体温調節が未熟な子どもは大人よりも過酷な環境で生活していることも、熱がこもりやすい原因です。
大人に比べて脱水症状が起こりやすいから
じつは、子どもは大人に比べて脱水症状になりやすい体質をもっています。
新陳代謝が活発な幼少期は、大人に比べて体重あたりの不感蒸泄量(自然と皮膚や粘膜などから蒸発されていく水分)が多いといわれています。(※2)そのため、大人よりも脱水症状になりやすいのです。
目で確認できないうちにどんどんと体内の水分がなくなるということは、大人よりも水分不足に陥りやすく、気づいたときには重度の脱水状態になっている危険性が高いことを表しています。
子どもたちは、遊びに夢中になると水分補給が後回しになりがちです。子どもは喉が渇いたときに起こる脳の機能や水分調整機能が未熟で、大人に比べて喉の渇きに気がつきにくいのです。
そのため、ママやパパの定期的な水分補給の声かけは、子どもたちにとって重要な存在になります。
子どもに最適な水分量ってどのくらい?
乳幼児の1日の水分摂取量の目安は、体重1㎏あたり100~120mlといわれています。(※3)
この数値を1歳から5歳に当てはめて計算をしたところ、次の表のようになりました。(※4)
年齢 |
平均体重 |
1日の水分摂取量の目安
(体重×100~120ml)
|
1歳 |
10kg |
1,000ml~1,200ml |
2歳 |
12kg |
1,200ml~1,440ml |
3歳 |
14kg |
1,400ml~1,680ml |
4歳 |
16kg |
1,600ml~1,920ml |
5歳 |
18kg |
1,800ml~2,160ml |
1歳では少なくとも1,000mlの水分が、5歳では1,800mlの水分が必要なことがわかります。表の数値を満たすくらいの水分をお子さまに与えるよう心がけましょう。表の数値はあくまでも目安です。お子さまの体重を確認し、1kgあたり100~120mlで計算してみてください。
なお、飲み物だけではなく食べ物からも水分を補給することができます。味噌汁やスープなどの汁物はもちろん、ごはんや野菜などにも水分が多く含まれているので、食事をきちんと3食とることも大切です。
水分補給時は何を飲む?おすすめの飲み物
お子さまに水分を与える際は、次にご紹介する飲み物がおすすめです。ポイントはエネルギー量(カロリー)が少なく、カフェインや糖分がゼロのもの。
おすすめの飲料について、詳しく解説します。
麦茶
お子さまの水分補給におすすめなお茶は「麦茶」です。
麦茶は生後1ヶ月から飲むことができ、カフェインゼロで安心して飲ませることができるお茶です。また、糖分もほとんど含まれていないため、体重への影響も心配ありません。
ちなみに、お茶のなかでも緑茶やほうじ茶、玄米茶などにはカフェインが含まれています。(※5)カフェインには覚醒作用があり、小さな子どもが摂取すると、入眠が妨げられたり睡眠の質が悪くなるなど、からだにさまざまな影響を与えます。(※6)
お子さまに水分補給でお茶を与える際は「麦茶」を選択しましょう。
ミネラルウォーター
コンビニやスーパーで手軽に購入できるミネラルウォーターは、地下水に加熱や殺菌処理が施された飲み物です。麦茶と同じく糖分やカフェインは含まれていません。
子どもに市販のミネラルウォーターを与える際に注目したいのが「カルシウム量」と「マグネシウム量」です。ミネラルウォーターはカルシウムとマグネシウムの含有量によって硬度が分けられており、硬度(含有量)が高い水を「硬水」、低い水を「軟水」と呼びます。 海外メーカーのミネラルウォーターには、カルシウムとマグネシウム量が多く含まれているものがあります。硬水は、大人に比べて臓器の成長が未発達なお子さまにとって負担になりやすく、飲みすぎは下痢などの症状につながる場合があるため注意が必要です。
そこで、お子さまにおすすめなのがカルシウムとマグネシウムの少ない「軟水」です。軟水は胃腸に負担をかけずに飲めるため、からだの小さなお子さまでも安心して飲むことができます。口当たりもよく、クセがなくて飲みやすいのが特徴です。
お子さまの水分補給に市販のミネラルウォーターを購入する際は、基本的には日本の水源を利用しているものであれば軟水がほとんどなので、パッケージの表示を確認しましょう。
水道水
お子さまの水分補給では水道水を与えても問題ありません。
日本は全世界に12ヵ国しかない「水道水が飲める国」の1つです。水質検査で51項目すべての基準を満たした安全な水のみが水道水として利用されています。(※7)
また、ミネラルウォーターで水の硬度に関するお話をしましたが、日本の水道水のほとんどは硬度80未満の軟水です。(※8)お子さまのおなかに負担がかかる心配が少ないのは嬉しいですね。
水道水特有の塩素のにおいが気になる場合は、浄水器を取り付けたり、水道水を10分以上沸騰させてから冷まし、飲み水として利用することをおすすめします。とくに、消化器官が未熟な赤ちゃんの場合は、そのようにひと手間かけることで塩素などの不純物を減らすことができ、からだへの負担を抑えられますよ。
水分補給時に控えたい飲み物
お子さまの水分補給に最適な飲み物があれば、適さない飲み物もあります。水分補給に適さない飲み物の特徴は、「エネルギー量(カロリー)やカフェイン、糖分が多く含まれているもの」です。
たとえば、スポーツドリンクはたくさん運動したあとや汗を多くかいたときに適した飲み物のイメージがありますが、からだの小さなお子さまがペットボトル1本を飲むのはおすすめできません。スポーツドリンクには糖分が多く含まれているからです。
過去には、スポーツドリンクなどの多飲でビタミンB1欠乏症が起こった症例があります。(※9)これは、飲料に含まれている糖分を大量に摂取したことで、糖分をエネルギーに変える働きのあるビタミンB1がたくさん使われてしまい、欠乏症に至ったものです。
そして、糖分がたくさん含まれている飲料の代表とも呼べるジュースも、水分補給には適していません。糖分を多く含んだ飲料の大量摂取は、ビタミンB1の欠乏症が心配なだけでなく肥満や虫歯にもなりやすいです。
お子さまの健康を守るためにも、ジュースで水分を補おうとするのはやめましょう。
「いつ飲むか」も大切!水分補給のタイミング
お子さまへの水分補給は、飲み物の種類だけでなくタイミングも重要です。
「喉が渇く」のは、脱水状態の初期症状といわれています。(※10)お子さまが「喉が乾いた」とアピールをしてきたときは、すでに脱水症状が始まっていると考えましょう。そのため、水分補給は喉が渇いたときではなく「喉が渇く前」にするのが正解です。
そして、お子さまが脱水状態にならないために、以下のタイミングで水分補給をしてあげましょう。
① 朝起きたとき
② ごはんやおやつを食べるとき
③ お昼寝をする前・お昼寝をしたあと
④ 運動やお散歩をする前
⑤ 運動をしたあと
⑥ お風呂に入る前
⑦ お風呂に入ったあと
⑧ 眠りにつく前
① 朝は、夜寝ているあいだにたくさん汗をかいているため、水分不足になりがちです。起きたら麦茶や水を与えて、不足した水分を補ってあげましょう。
② なお、食事のときの水分補給は多くならないように注意しましょう。食べているときに水分をたくさんとってしまうと、飲み物でおなかが満たされ食事の食べ進みが悪くなることがあるため、少量にしたり食後に与えるなど水分補給のタイミングを工夫するのがおすすめです。
③ そして、お昼寝では夜の睡眠時と同じくたくさんの汗をかきます。おねしょをしない程度に、水分をとらせてあげてから寝かせましょう。
④⑤ 日中に公園遊びや散歩をしているあいだだけでなく、家を出る前や帰宅してからの水分補給も大切です。
⑥⑦ 忘れがちですが、お風呂に入っているあいだも子どもたちはたくさん汗をかいています。お風呂の前後でも水分を補い、のぼせなどを防いであげましょう。
⑧ そして、お布団に連れていく前に、水分を与えてから眠りにつかせるのが1日の理想の流れです。
ご紹介したタイミングで、ぜひお子さまに水分補給をしてみてください。「お風呂を出たら麦茶を飲む」「水を飲んでから靴を履く」など水分補給のタイミングを決めておけば、子どもにとっても飲むタイミングがわかりやすくなり、習慣化できるようになります。「喉が渇く前に水分を与える」ということを覚えておきましょう!
水分補給で気をつけたいポイント
今まで水分補給の大切さをお伝えしてきましたが、水分補給が大事だからと、冷たい飲み物を好きなだけ飲ませてしまうことがないようにしましょう。ここでは、お子さまに水分を与える際に気をつけたいポイントをご紹介します。
「こまめに少しずつ」を意識する
お子さまへの水分補給は「こまめに少しずつ」を心がけましょう。からだの小さな子どもが一度にたくさんの水分を摂取してしまうと、おなかを下すなど健康状態に影響を与えてしまうことが考えられます。
また、お子さまのおなかが水分で満たされてしまうと、ごはんの時間におなかがすかず、栄養の補給源となる食事が十分に食べられなくなってしまいます。栄養不足につながる心配もあるため、食事に近い時間帯や食事のタイミングに水分を一度に大量に飲ませるのは避けましょう。
そして、お子さまが水を多量に摂取してしまうと、重篤な症状を発症する場合もあります。とくに「水中毒」には注意が必要です。
水中毒は、必要以上に水分を摂取したことでけいれんなどが引き起こされ、重症化すると死に至る危険があります。日本では過去に、1歳6ヵ月の子どもが1日に3.4Lの水を飲んだことで水中毒を発症した症例がありました。(※11)1歳の適正な水分摂取量は1,000mlから1,200mlとされているので、3倍近い水分を摂取していたことがわかりますね。
何度もお伝えしますが、水分補給は適正量の範囲内で「こまめに少しずつ」を心がけましょう。一度にたくさん水分をとっても、からだに蓄えておける量には限りがあるため、尿として出ていってしまいます。少しずつ水分を補ってあげることで、からだの水分を常に一定に保てるため、お子さまが脱水症状を引き起こすリスクを回避することができます。
実際に、多くの保育園でも「こまめに少しずつ」を意識して、水分補給の時間が設けられています。たとえば、お外で遊ぶ前やお昼寝から起きたあとなどに麦茶などを準備して水分補給するように促していることが多いですよ。
からだが小さな1歳の子どもたちも「水分補給の時間」になると、コップを持った職員の前に集まってゴクゴクと一生懸命飲んでいました。水分補給と聞くと、私はその姿をよく思い出します。「水分補給の時間」が定着していることがわかり、活発に遊ぶ年齢だからこそ、こまめな水分補給が大切だと日々の活動のなかでとても実感した瞬間でした。
冷たすぎる飲み物はおなかを冷やす原因に
お子さまに飲み物を与える際は、飲み物の温度にも注目しましょう。飲み物は、胃に流れたあと体温と同じ温度になるのを待ってから腸へと移動します。(※12)そのため、冷たい飲み物は温かい飲み物よりも消化や吸収に時間がかかることがわかります。
子どもは大人に比べて消化器官がまだ発達途中の段階です。そこに冷やされた飲み物が流れ込むと、からだに負担がかかりやすく、下痢などの体調不良を起こすことも考えられ、効率よく水分補給をすることができなくなってしまいます。
効率よく水分補給をしたいときは、氷をたっぷりと入れたり冷蔵庫から出してすぐのキンキンに冷えた飲み物ではなく、冷蔵庫から出しておいて冷たさをやわらげたものや、常温の飲み物を与えるよう心がけましょう。
「子どもが水分補給を嫌がる」問題の解決方法
「お水いっぱい飲もうね」といくら親が積極的に声かけをしても、子どもは「いらなーい」「飲まなーい」「お茶きらいー!」と嫌がる反応を見せることがあります。それでも、なんとかして水分をとってほしいと考える方もたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回は、保育園の管理栄養士をしながら子育てを経験した私の実体験をもとに「水分補給を嫌がる」問題への解決方法をご紹介します。水分補給の悩みを少しでも解決できれば嬉しいです!
「なぜ飲まないといけないのか」を説明する
個人差はありますが、1歳から5歳頃の子どもたちは「なんで?」「どうして?」をたくさん知りたい「なぜなぜ期」の真っ只中です。この時期は、子どもたち自身の考える力がどんどん伸びていく期間でもあるため、好奇心旺盛な気持ちを大切にしたいですよね。
「お水を飲もうね」と伝えて「なんで?」と返ってきたら、伝わらないからと諦めたり後回しにしたりせず、子どもでもわかる言葉を並べながらお話をしてあげてほしいです。お子さまから「げんきになれるんだよね」などと、自分なりに解釈した言葉が出てきたら大成功の証です。
そのため、「お水飲もう」だけ伝えるのではなく、「頭が痛くならないようにお水を飲もうね」「お散歩で喉が渇いちゃうから、いま飲んでおこうね」などと、水分補給をする理由もきちんと伝えましょう。
1口飲めたら思いっきり褒める
お子さまががんばって水分補給にチャレンジし少しでも飲めたら、ぜひ思いっきり褒めてあげてください。褒められるのは、大人の私たちでさえも嬉しい反応です。お子さまは大好きなママやパパから「すごいね」「えらいね」と声をかけてもらえることで、がんばろうという気持ちがどんどん芽生えていきます。
そして、成功体験の積み重ねは、お子さまが自分に自信をもてるようになることにもつながります。はじめはコップの水分を少なくし、徐々に増やしていく練習を重ねるなど、少しずつ「飲める」自信をつけてあげられるよう工夫し、上手にできたらたくさん褒めてあげてください。
親子で一緒にドリンクタイムを過ごす
お子さまにだけコップを渡して、飲め飲めコールをしていませんか?ぜひ親子で一緒に水分補給をするようにしてみましょう。そして、ときには乾杯をしながら楽しい雰囲気をつくるのもおすすめです。小さいお子さまは「カンパーイ!」の動作が好きな子もいると思います。
我が家の話になりますが、娘は乾杯をするのが大好きで、マグのころから「乾杯をして飲もう」と私たちを誘ってくれました。ゴクゴク音を立てながら「ぷはー!!」と言って飲んでいるのを見て、子どもの観察力のすごさを思い知りました。
水分補給に苦手意識のあるお子さまも、ママやパパが一緒にコップを持って飲んでいるのを見れば、真似してみようという気持ちが芽生えるかもしれません。やってみようとする力につなげるためにも、みんなで水分補給の時間を大切にしたいですね。
じつは食べ物からも水分補給ができます!
水分補給と聞くと、水やお茶などの飲み物を連想する方が多いと思いますが、スープや味噌汁も大切な水分です。汁物には、具材の栄養や調味料の塩分などが含まれているため、汗をかいて不足した体内のミネラルを補う際は、大量のスポーツドリンクなどではなく、食事からの補充を心がけてあげましょう。
また、野菜のなかにも水分が多く含まれている食材が存在します。たとえば、なすやきゅうり、トマト、だいこんは、90%以上が水分で構成されています。
HAPIKUでは、野菜を使ったさまざまなメニューをご紹介しています。ぜひ献立の参考にしてみてください!
水分補給のポイント
水分補給の量やタイミングに注意
子どもは熱がこもりやすく、脱水症状が起こりやすい
糖分やカフェインのない麦茶や水を中心に、こまめに少しずつ!
積極的に水分を取れる環境
親子で一緒に乾杯などをして、楽しい雰囲気づくりを!