カラダとココロの成長 Vol.13 口の機能やことばの発達に“かじりつき食べ”が重要 最終更新日:2024.12.04 言語聴覚士が伝える「食事とことばの育ち」シリーズ 第3弾は、「マナーを教える前に練習したい、“かじりつき食べ”」、なぜ“かじりつき食べ”が必要なのかについて専門家が説きます。 このシリーズでは、ことばの育ちが口や舌、唇を動かすことといかに密接に結びついているかや、食事でたくさんの経験を子どもにさせることがどれだけ大切なことかをお伝えしてきました。 今回は食べ物のかたさと大きさに注目します。 目次 “かじりつき”や“なめとり”がさまざまな機能を育てる離乳食完了後はあえて食べにくい大きさに挑戦!口の機能やことばの発達のために必要なこと食べるという意識を育てていく段階に… “かじりつき”や“なめとり”がさまざまな機能を育てる 離乳食が進み完了期以降になると、お子さんが自分でごはんを食べる機会も増えてきますよね。そうなってくると食べる時の姿勢や食べこぼしなど、マナーに関することが気になりやすいものです。食材を大きいまま与えてしまうと、口には入らないし、食べこぼして卓上が汚くなってしまったりと、そんな経験をされた方も多いのではないでしょうか。 つい食べやすさを優先して食べ物を小さめのサイズにしたり、手っ取り早く大人が食べさせてしまうご家庭もあるかと思います。しかし、きれいに食べられるようになるためには、口の周りや手が汚れている感覚に気づく力や、こぼさないように食具を安定して運ぶための手を操作する力、などさまざまな機能が育っていく必要があるのです。 その機能を育てていくための練習のひとつとなるのが、食事の際の“かじりつき”や“なめとり”といった行動です。 離乳食完了後はあえて食べにくい大きさに挑戦! 離乳食のかたさを調整することはお母さん方の手間もかかってしまいますが、「子どもは離乳食の段階から食べ物のかたさに合わせて、徐々に口の機能が育っていく」ということについては、以前のコラムでもお話しました。 食べやすさから具材を小さめにしたり、やわらかくした食べ物ばかりを食べ続けていると、口の機能が未発達なまま定着してしまいます。そうなってしまうと口に入りきらないくらい詰め込んでしまう、かたいものが噛めない、早食いで何でも噛まずに呑み込む、よだれが垂れやすいなどの様子につながっていくことがあります。 そして困ったことに一度食べ方のくせが習慣化すると、お母さんたちがいくら声かけをしても口の機能自体が未発達なため、自分で気づいて直していくことが難しい場合もあるのです。だからこそ、離乳食が完了したころからはあえて食べにくい大きさやかたさに挑戦してみるのは大事な経験といえます。 口の機能やことばの発達のために必要なこと 実際にどのように挑戦していけばよいでしょう、例としては スイカやメロンを半円形に切って、そのままかぶりつく とうもろこし、トマト、プラム等にかぶりつく 長いままのきゅうりやささみをかじり取る ぶどうを皮のまま食べて、皮と種をはきだす りんごを大きめ(1/6または1/4)に切り、かじって食べる コッペパンのような口より大きなパンや骨付き肉にかぶりつく 口のまわりについたソースやアイスなどをなめとる …などがあげられます。 食べ物の大きさに合わせて口を開いたり、目いっぱい口を開いても自分の口には入りきらないという感覚をつかむ経験になります。また口のまわりについたソースやアイスに合わせて舌を伸ばし、なめとる動作は舌の動きの練習にもなるため、言葉の発達にもつながっていきます。 一見汚くなりやすい食べ方ではありますが、こういった食べ方が口まわりの筋肉や舌の動きを育てていくのです。かじりつきは慣れないと難しい動作でもあるため、まずはお母さんやお父さんが「がぶっ」などの効果音もつけながら食べ方の見本を楽しく見せてあげるのもやり方の一つです。 食べるという意識を育てていく段階に… そして、口まわりや口内の感覚が育ち、汚れや歯に詰まっている等の違和感に気づくことができるようになってくると、適切な場面で口を拭いたり、こぼさないように調整して食べるという意識を育てていく段階になっていきます。 中にはどうしても食卓や洋服が汚れることが受け入れにくい方もいらっしゃると思いますが、そういった場合は、事前に使い捨てのランチョンマットを敷いたり、汚れてしまって捨てる予定の服を着させるなどの工夫を取り入れてみると、ストレス軽減につながると思いますよ。 また挑戦する頻度も週末に人手と時間がある時に1回だけ、などがんばり過ぎなくてよいのです。食事場面が親子にとってストレスにならない範囲で、挑戦してみてくださいね。 就学前までの間であれば、多少汚していても周囲の大人もあたたかく見守ってくれると思いますので、この時期は練習する絶好のチャンスです。口の機能や言葉の発達のためにも、無理のない範囲でいろいろな食べ方に挑戦してみてくださいね。 ※今回は、一般社団法人ぽけっとの【言語聴覚士】が執筆しました。 一般社団法人ぽけっと 2017年2月設立。児童発達支援・放課後等デイサービス事業『発達支援ルームぽけっと』や園や学校の先生方を支援する研修・巡回事業等のサービスを提供しています。 https://www.pocket-room.org/ ■ ぽけっとの支援の内容やお仕事についてはこちらから Column企業インタビュー「発達障害かしら?」と心配する保護者が増えています シェア ポスト シェア はてぶ シェア ユーキャンの料理講座 ユーキャンの離乳食・幼児食コーディネーター講座