東洋医学からみた食育の考え方~陰と陽~

陰と陽の考え方

東洋医学においても、食事の考え方はバランスの取り方が重要になります。ただ、栄養学がなかったころのバランスの取り方は、「東洋医学からみる和食」でもご紹介したように、五行に基づいた、五法(調理法)、五味(味付け)、五色(色味)でバランスを取っていました。もう1つ欠かせないのが、陰陽の考え方で、万物を陰と陽と2つに分けたものになります。上と下、天と地、昼と夜、夏と冬、男と女、暑さと寒さ、静と動という風に分けられます。陰陽は、性質の違いで、互いに対立関係にありますが、互いに補完し合う関係でもあります。季節を例にとってみてみましょう。冬(陰)と夏(陽)は、交わることはありませんが、寒い冬(陰)には、身体を温める食べ物(陽)ができ、暑い夏(陽)には、身体を冷やす食べ物(陰)が実ります。この様に自然界では、陰と陽が絶妙なバランスで成り立っているため、食事においても、陰陽のバランスをうまく取り入れることで、お子さんの体の健康を保つことができます。

夏(陽)と冬(陰)にできる食べ物の作用

oriental007_img01夏にできる食べ物にはどんな性質があるでしょうか?夏には暑さをしのぐために、体を冷やすこと、そして毛穴を緩めて体内の熱を逃がしていく必要があります。夏野菜に代表される、トマト、きゅうり、なすなどの食べ物が夏の食べ物になります。

逆に、寒い冬には、体を温めること、毛穴を引き締めて体内の熱を逃がしにくくする必要があります。冬野菜の大根、人参、蓮根、ごぼうなどの根菜類などが冬の食べ物の代表となります。

 

昔の人は、野菜の主に食べる部分がどこで育つかで、土の上で育った食べ物(夏野菜や葉野菜=陰)、土の下の食べ物(根菜類=陽)という風に分けたりもしました。夏は土の上のものを、冬は土の下の野菜を多く取ることで、暑さ寒さに負けない体を作ってきました。その時期にできた旬の食べ物を食べるということは、栄養価が高いということだけでなく、その季節にあった体を作るためにもとても大切なことです。

 

体を冷やす夏野菜
体を温める冬野菜

旬のもの以外の陰と陽の食べ物の作用

旬の野菜や果物は比較的陰と陽がイメージしやすいですが、旬のもの以外については、自分の住んでいる地域より少し視点を広げると見えてきます。南北に長い日本を見てみると、寒い地域(北)では味付けが塩辛くなり、温かい地方(南)では甘くなります。お魚やお肉に塩をふることで身を引締める働きが、お砂糖には柔らかくする働きがあるのと同じように、塩(陽)には、毛穴を引締め熱を逃がさないようにする働きが、砂糖(陰)には、毛穴を緩めて熱を逃がす働きがあります。

次に世界に目を向けてみましょう。インドやアラブなどの暑い地方では、バナナやデーツなど糖分の高い果物や、香辛料・油をよく使う食べ物(陰)が多いですが、これも体内の熱の発散に役立っています。逆に北極などにすむイヌイットの主食はアザラシなどの脂肪分の多いお肉(陽)で、体の熱を生み出すことに役立っています。

 

この様に、日本でも世界でもその土地の気候で育った食べ物や食べ方は、その土地の人々の健康に役立っています。現代は、ハウス栽培や輸入食材など年中色々な食べ物が手に入りますが、地域の気候や陰陽が大きく離れた食生活を送ると体のバランスが崩れやすくなります。平熱が低めなお子さん、冷え性の方は冬場の夏野菜や甘いもの(砂糖など)の摂り方に意識を向けてみるのもよいでしょう。