よく噛める歯ときれいな歯並びのために気をつけたい3つのポイント【食事編】

健やかな発達のためには、よく噛んで食べることが大切です。そしてそのためには歯並びがきれいな状態であることが望ましいですよね。

普段の生活の中でちょっとしたことに気をつければ、子どもがよく噛める歯ときれいな歯並びを成長と同時に得られるようサポートすることができます。この記事では、そのために心掛けたい乳幼児の食事の3つのポイントを紹介します。

その1 歯が生えはじめるころ・離乳食の与え方

よく噛める歯ときれいな歯並びのためには、歯が生え始めるころから大切にしたいことがあります。それは離乳食の与え方です。
離乳食は、お母さんがお口の前に運んだスプーンから子どもが食べることからスタートしますよね。そのときに大切なポイントは3つです。

 

スプーンを子どもの口元にもっていくときに大切な3つのポイント

  • 子どもの口の中が空になってから
  • 子どもの口の正面
  • 子どもが口をあけて唇でつかみとるまで 、そのまま待つ

 

子どもがなかなか食べないと、スプーンを傾けて口の中まで入れたり、お母さんがよそ見をしてうっかりスプーンを子どもの唇のはじにもっていったりしがちです。
このような与え方をすると、子どもの唇の力がうまく育ちません

 

 

その2 硬いものを食べるより、前歯で噛み切ることが大切

では、離乳食から成長が進み、歯が生えてきた次の段階で気をつけるポイントはなんでしょうか。

それは、「噛み切る」ことです。

 

よく噛めるようになるためにはどうしたらよいかと考えたときに、「硬いものを食べて噛む力を鍛える」そんなイメージをおもちではないですか。

実はよく噛めるようになるために必要なトレーニングは、硬いものを食べることではありません。無理に硬いものを食べるとあごの関節を痛めることもあるので気をつけてくださいね。

 

よく噛めるようになるためには、「前歯で噛み切る」ということを意識してください。野菜スティックやおせんべいがおすすめです。前歯で噛み切ることができれば、硬さは必要ありません。子どもが大好きなスティックパンを前歯で噛み切ることも、立派なトレーニングになります。

 

 

 

では、前歯で噛み切るトレーニングをするには具体的にどうしたらよいでしょうか。

虫歯、歯列矯正の治療をとおして、多くの子どもの歯と歯並びを観察してきた歯科医の柏戸俊彦先生にお聞きしました。

 

よく噛める歯ときれいな歯並びのためには、永久歯に生えかわる前の乳歯のときが大切だと、柏戸先生は考えています。乳歯のときに「すきっ歯」と呼ばれる適度なすき間があるきれいな歯並びだと、永久歯になってもきれいな歯並びのままであると、柏戸先生は16年にわたる診療経験の中で確認してきました。
永久歯が生えそろう小学生高学年の時期は、反抗期を迎えることもあり地道なトレーニングをおこなうことが難しくなることから、特に乳幼児期を重視しています。

そんな柏戸先生に、前歯で噛み切るために乳幼児のときに気をつけたいことをアドバイスいただきました。

 

まず注目したいのが歯の使い方。子どもは食べるときによく噛んでいないと言われがちですが、意外なことに柏戸先生の意見は違います。

 

現代の子どもはよく噛まないという言葉を耳にしますが、自分はあまりそうは思わないです。奥歯のみでよく噛むお子さんがとても多い印象です。
人間は雑食動物ですから、あごの関節が複雑です。前歯で裁断して、奥歯ですりつぶす運動をするのが、正しい食べ方なんですよ。前歯のギザギザが小学校高学年になっても残っているお子さんは前歯を使ってない証拠なのです。

 

前歯で噛み切るようにさせるためには、食事を準備する際にどんな注意をすればよいでしょうか。

 

前歯で噛み切るトレーニングのための食材に何がよいかと、お母さんにもよく聞かれます。食材は特に問いませんので、食材選びに神経質にならなくて大丈夫です。
普段の食事の際、なるべく食材を大きくして食べさせてください。たとえば焼き肉なら、細かく切らずに食卓に並べていただきたいのです。
ひと口サイズの食事が一番よくありません。大きな食材を前歯でちぎって、奥歯でよく噛むことを目指してください。

 

食材の大きさ、切りかたが大切なのですね。と言っても、意識し過ぎる必要はなく、できる範囲で注意すれば大丈夫だそうですよ。

 

食材を小さく切らずに食べると、当然食事の時間が長くかかってしまうので、忙しい日はおすすめできません。休日や時間のある日には、なるべく食材を大きくした食事になるようこころがけましょう。

 

その3 ストローマグばかりでなく、コップで飲む

よく噛める歯ときれいな歯並びのためには、食べるときだけでなく、飲むときにも気をつけるポイントがあります。それはコップを使うことです。

 

哺乳瓶を卒業する頃から使いはじめたストローマグをいつまでも使い続けていませんか。こぼれにくくて、持ち運びに便利なストローマグは頼りになる存在です。しかし、ストローばかりを使っているとあごの発達が遅れ歯並びに影響する場合があります。

 

柏戸先生に、ストローとコップの違いについてお聞きしました。

 

ストローとコップには、飲みこむときの舌の使い方に違いがあります。
コップで飲むときには、飲めるだけの水を口に含んで、舌を上の歯の内側(口蓋)に押し当てて飲み込みます。
ストローの場合は、舌の上にストローがのるため舌を口蓋に押し当てることなく、吸う力だけで飲み込みます。子どもはコップで飲むことをとおして、大人と同じように食べものを上手に飲みこむ(嚥下)ができるようになります。子どもが正常な嚥下を獲得するためには、舌を上手に動かせることが必要です。

 

食べものを上手に飲みこめるようになるための、別の方法も教えてくれました。

 

口をしっかり閉じて食べることも、正常な嚥下ができるようになるために有効です。食事のマナーを守って音を立てないようにするためだけでなく、食べものを上手に飲みこむためにも、口をしっかり閉じて食べるように子どもに伝えましょう。
このような舌を口蓋に押し当てる動作は、正しい舌の姿勢をキープするために必要です。舌の姿勢とは、口を閉じているときの舌の状態、位置のことで、巻き舌のように下の先端が上向きになっている状態です。

 

正しい舌の姿勢ができるかどうかが、歯並びに強く関係していることを、柏戸先生は診療の現場で確認してきました。歯列矯正の装置を使用して歯並びを改善しても、舌の姿勢が悪いために歯並びが再度悪くなってしまうことがとても多いそうです。

 

さらに、ストローマグのような吸いやすい太めのストローばかり使っていると、舌を口蓋に押し当てないために舌の力があごに伝わりにくく、あごが順調に発達せずに細くなることがよくあります。理想のあごの形はU字型ですが、細いあごになるとV字型になってしまいます。あごがV字型になると、スペースが狭くなるため歯が正しい位置に並ぶことが難しくなり、噛む力にも悪い影響を与えます。

 

水分補給にコップを使ってこぼしたらあと片づけが面倒だなと、ついストローマグに頼りたくなりますね。あごをしっかりと発達させ、きれいな歯並びを実現させるためにも、コップを使って上手に飲み込み、正しい舌の位置をキープできるようにしましょう。

 

 

 

以上、よく噛める歯ときれいな歯並びのために食事で気をつけたい3つのポイントをご紹介しました。

 

毎日の子どもの食事にちょっと工夫をすれば、子どもの歯がよく噛めるようになり、歯並びもきれいになるよう手助けすることができます。
子どもがよく噛むことができれば、楽しく食べてしっかり栄養をとって、健やかに成長することができるでしょう。
ぜひ、ご紹介したポイントに注意して、子どもがよく噛める歯ときれいな歯並びを手に入れられるようにサポートしてみてくださいね。

 

 

コメント・監修/柏戸俊彦
柏戸歯科医院 院長。
矯正歯科では、永久歯に生えかわる前である乳幼児期から、最新の歯科治療の技術や情報を活用して、食育、よくないくせの直し方や簡単にできるトレーニングなど、おうちでできる取り組みを指導しています。16年にわたる診療経験から、子どもの治療は「歯科医院に慣れること」からスタートするていねいでやさしい説明と治療がモットーで、遠方からも多くの親子が来院しています。
柏戸歯科医院 WEBサイト:http://www.kashiwado-dental.com/