まずは大人から!バランスのよい食生活って何だろう?(その2)

まずは大人から!バランスのよい食生活って何だろう?(その2)

2016.3.30

情報過多の現代。まずは基本を知ることから始めよう!

いきなり私事ではありますが、先ごろ母親(68歳)が心不全で倒れて入院してしまいました。健康そのもの、病院嫌いのアクティブな人だったので、家族は皆あたふたしてしまいましたが、幸い発見が早く、お薬を飲み続けることで改善に向かうとのことです。

 

原因は長年にわたる高コレステロールの食生活だったようです。塩辛いものとお酒が大好きな母、知らず知らずのうちに、心臓に負担がかかり、慢性的な生活習慣病になっていたのでした。加齢とともに長年の間に蓄積された食事バランスの乱れは、時に命を脅かします。

 

日本人の三大死因である、がん、心疾患、脳血管疾患。生活習慣に起因する疾病であるともいわれています。その背景には、食生活の欧米化、塩分の過剰摂取や野菜不足、喫煙や運動不足…さまざまな原因があります。HAPIKUをご覧になっている子育て中のお母さん、お父さんはまだまだ若い世代ですので、あまり実感がないかもしれませんが、日々の食生活習慣の蓄積が、やがて病気の引き金にならないとも限りません。

 

そして大人の食生活の乱れが、子どもの健康にも大きな影響を及ぼし、世代を超えて引き継がれていくと考えると、ちょっと怖いな、と思ってしまいます。私の母の場合は、料理が得意で、いつもバランスの良い食事を作ってくれていました。しかし、働きながら私たちを育てている中で、そういえば子ども達や、夫である父の食事を優先的に考えるあまり、母自分はいつも、残り物やお酒のおつまみですませている風景があったことを覚えています。

 

ご自身の食生活について聞かれたとき、皆さんは自信をもって「私はバランスの良い食生活を送っています」と答えられますか?正直言って、私はあまり自信がありません。もちろん、心の中ではいつも、改善したいと思っていますが、「働いているから時間がない」「栄養についての正しい知識がないから」と言い訳をしてなかなか取り組めていないのが現実です。前回のコラムにも書きましたが、子育て中のお母さん、お父さんは、子ども達の健康や食事について気を使ってはいるけれど、自分自身のことは後回しにしがち。

 

東京都の調査結果によると、「健全で豊かな食生活を送るために知りたい情報:健全で豊かな食生活を送るために、どのような情報がほしいか聞いたところ、「栄養のバランスやカロリー等の情報」41%、「健康に配慮した料理の技術と知識」33%と、多くの人が栄養バランスに高い関心を持っていることがわかります。

出典:東京都 生活文化局「食生活と食育に関する調査」平成26年10月

時間とお金の節約にも気を配らなくてはならないし、健康も維持したい…でも、世の中にはいろんな健康情報があふれていて、何が正しいのか分かりづらい…そ んなとき、国の「食生活指針」が一つの目安になります。国の指針というと、ちょっと固い話になりますが、これが意外と、シンプルでわかりやすいものなので す。基本的な知識として知っておいて損はないと思います。ちょっとずつではありますが、噛み砕いて考えていきたいと思います。

聞いたことはあるけれど…「食生活指針」って何?

「食生活指針」という言葉を聞いたことがありますか?

世界各国で、国民の健康のための食生活指針を定めています。これらを比較するのも大変面白いのですが、これはまた後の回で取り上げることにして、まずは、日本の「食生活指針」についてみてみましょう。食生活指針とはその名のとおり、どのように食生活を組み立てればよいかを、専門的な知識を持たない一般の人にもわかりやすく示しているガイドラインです。時代とともに人々の食生活は変化し、それに合わせて食生活指針も改訂されてきました。

 

戦後、日本は食糧難で、多くの国民は食べるだけで精一杯の生活を送っていましたから、まずは、このような状況を打破するための食生活の指針が作られました。当時の厚生省は、アメリカの援助を得ながら、栄養改善運動を進めました。パン食や欧米風のメニューが急速に普及した結果、今度は生活習慣病が増加傾向になってしまいました。

 

それを受け、1983年農林水産省が日本型食生活を提唱し始めます。続いて1985年には厚生省が「健康づくりのための食生活指針」を策定します。「一日30食品を目標に」が掲げられましたが、一日に30品目というのはなかなか、日常生活で実行するのは難しいこと、実また過食になりやすいという意見もありました。2000年、厚生省、農林水産省、文部省は新たに「食生活指針」を策定。同じ年に厚生省は「健康日本21(21世紀における国民健康づくり運動) 」を開始し、2013年から2022年までは「健康日本21(第二次)」が実施されています。これらの指針や運動は、栄養や食生活、摂取量やたばこ、運動、アルコール摂取…などについての数値目標について具体的な基準を示していますが、決してそれを国民に押し付けるものではない、としています。

 

…と難しい話はこれぐらいにして、この「食生活指針」自体は10項目からなり、大変わかりやすい言葉で示されています。

 

 

食生活指針 10項目 (2000年 厚生省、農林水産省、文部省作成)

  1. 食事を楽しみましょう
  2. 1日の食事のリズムから、健やかな生活リズムを。
  3. 主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを。
  4. ご飯などの穀類をしっかりと。
  5. 野菜・果物、牛乳・乳製品、豆腐、魚なども組み合わせて。
  6. 食塩や脂肪は控えめに。
  7. 適正体重を知り、日々の活動に見合った食事量を。
  8. 食文化や地域の産物を生かし、時には新しい料理も。
  9. 調理や保存を上手にして無駄や廃棄を少なく。
  10. 自分の食生活を見直してみましょう。

 

どの項目も、「そんなことわかってるよ!」と思うような基本的なことばかりですね。しかし、頭ではわかっているけれど、実際に実行するとなると、なかなか面倒だったり、正しい知識を持っていなかったりします。「ふうん、国民の健康ために、国はこんな基準を作ってくれているんだな」と気軽な気持ちで、少しだけ「きほんのき」を知っておくのも、暮らしのエッセンスの一つなっていくのではないかな、と思います。

次回はこの指針のうち、3、「主食、主菜、副菜」について、考えてみたいと思います。