アイルランドの国民的休日といえば、3月17日。この日は、アイルランドにキリスト教を普及した聖パトリックの命日にちなんで盛大なお祭りが催されます。日本でもここ数年、東京をはじめ各地で、イベントやパレードが行われています。緑の四つ葉がシンボルのアイルランド、お祭りは、緑一色に染まるようです。
アイルランドでは、この聖パトリックが広めたカトリックの影響が強く、最近まで、中絶はもちろん、離婚すら簡単にできなかったといい、一見保守的な面もあり ますが、アイリッシュダンスや音楽、また食文化では、アイリッシュパブで有名なビール、ウィスキーに、アイリッシュシチューなど、独特な文化を育んでいます。来客は、必ずミルクティーでもてなす習慣があり、紅茶の消費量、世界一の国です。
幾度の飢饉、食事は素朴かつこってり
アイルランドは、長年イギリスの植民地であった歴史があり、食料がイギリスへ優先して送られていた時代があります。その際、幾度か飢饉を経験しています。世界史の授業で「じゃがいも飢饉」を学んだことを覚えている方もいらっしゃるかもしれません。このような経験からか、食べ物にはあまりこだわらない考え方が流れているようです。
普段の食事は、いたって簡便。買ってきたサンドイッチや冷凍のフィッシュ&チップスをオープンで加熱したものが食卓に上がるなど、アイルランドの家庭料理の評判はいまひとつです。たまに家族そろって休日にアイリッシュブレックファーストを食べますが、その中身は、ソーダブレッド、ブラックブディング(豚の血のソーセージ、血でつくるので黒い色になります。それが名前の由来です。)、油たっぷりで揚げたポテト、さらに油で揚げたベーコンやハムという内容で、全部食べれば、日本人なら胸焼けするようなコッテリさです。
野菜を食べるのを見たのは1回だけ!
主食であるじゃがいもは種類が豊富ですが、冷涼な気候なので、農産物の種類がたくさんあるわけではないです。
アイルランドのダブリンに、現在、留学している学生の話では、この1年でルームメートが野菜を食べる姿を見たのは、たった一度だけ、人参を食べている姿だけ、と冗談みたいな話を聞きました。
たまたまの稀な例だったのかもしれませんが、スーパーでの食材の種類もとても少なく、贅沢な食文化とは言えないようです。もちろん、誤解のないように付け加えるとすれば、アイルランドには、ミシュランをつけるレストランも多数あり、グルメでないという意味ではありません。
子どもは国の宝
小さな資源もあまりない国で、アイルランド人には、「子どもは国の宝」と認識があります。子どもと若者を専門に見る機関(1)が行政機関に設けられ、心身の成長や教育に関わる専門の業務に携わっています。また、アイルランドでは、医療や健康に関わるプロフェッショナル10万人がHSE(2)という子どもから高齢者までの健康を担う自主団体を組織していますが、その団体が行政機関から委託され、子どもや若者に関する健康や福祉に関して、さまざまな活動を行っています(3)。
そのウェブサイトを見ますと、食については、”Buy Well, Be Well, Eat Well” という指針を出しており、両親へ向けて、親子の関係が大事であること、会話をしながら、家族で食事をすること、運動すること、偏りなく食べることそして、幼いころの食習慣が今後の食習慣をつくる、などと訴えています。6歳から12歳向けには一緒に調理をするためのレシピや好き嫌いについての相談、また13歳以上になると精神面のことも入り、拒食症や過食症などにも触れています。これらをどこまで実践しているかどうかは調べておりませんが、このような非常に細やかな指導が、実務家から提案されているところが素晴らしいですね。
以下のウェブサイトは英語で書かれていますが、ご興味のある方はご覧ください。
(1) 子どもと若者に関する省 Department of Children and Youth Affairs http://www.dcya.gov.ie/
(2) HSE http://www.hse.ie/
(3) HSEが行政の機関として担う青少年向けの活動 Tusla http://www.tusla.ie/