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食べさせることばかりに意識を向けず、お子さんの視点も大切に
毎日、お子さんの気分に振り回され、食事の準備もひと苦労ですね。以前は偏食をせずに何でも食べてくれたということですから、余計に今の状況はストレスを感じることと思います。
2歳から偏食になるというのは、非常に多いケースです。
厚生労働省が発表している「乳幼児栄養調査結果」からも分かりますが、2~3歳の子どもを持つ家庭で偏食に悩んでいる割合は3人に1人。偏食のお子さんというのは決して特殊ということではなく、ごく普通であるともいえます。
理由については、特に2歳前後から偏食が始まることが多いことから、子どもの心の発達が関係していると考えられています。その大きな要因は、“自我が芽生え始める”ということ。大人から見たら単なるわがままに感じてしまう、拒否する態度は俗にイヤイヤ期などと呼ばれますが、自我とは自分の気持ちを大切にすることとも捉えられます。
まだ脳が発達途中のこの頃は、自分がやりたいこと・やりたくないことを我慢するということは非常に難しく、それを伝える言葉も身に付けていないため、理由も分からず嫌がっていたり、コロコロと気が変わって気分屋のように大人には映ってしまうのです。
ご相談者様がご認識されている通り、お子さんは何らかの経験を通じて、その食材や料理が苦手になってしまった(苦手≠嫌い)と考えられます。それは食べるように無理強いをされてしまったことかもしれませんし、たまたま口にした時に食材の風味や食感が気に入らなかったり、食べた後に体調を崩してしまったり、残した時に注意を受けて気分が悪くなってしまったからかもしれません。ほんの些細なことであっても、嫌な思いをした経験が食材や料理と結びついてしまい、名前を聞いただけでも食べたくないと感じてしまうことがあるのです。
もし会話が成り立つのであれば、どうすれば食べたくなるのか、味/見た目/量など、お子さんの希望を聞いてみてください。完璧には応えられなくても、一部を聞き入れた食事を提供してあげることで、お子さんは自分が認められた(受け入れられた)という気持ちになるでしょう。そうすれば、大人の都合で出された食事よりも、断然「食べてみようかな?」という気になるかもしれませんよ。
また、できることからお手伝いをお願いしてみるのもいいでしょう。
お店で買い物カゴに入れる食材を選んでもらうことでもいいですし、味付けの仕上げに計量した調味料を加えてもらったり、美味しくできたか味見をしてもらうことでも構いません。
声掛けは例えば…
- 「一番甘いにんじん選べるかな?」
- 「ほうれん草は根元がピンク色のものがおいしいんだよ。どれかな?」
- 「アスパラガスは先っぽよりも根元が甘いんだって。先っぽとどっち食べてみようか?」
- 「料理がおいしくなるように、このお醤油を入れてくれると嬉しいな」
- 「もう少し甘いほうが良いかな? 味見して教えてくれる?」
- 「○○ちゃんが手伝ってくれたから、いつもよりおいしくできたよ! どうかな?」
お子さんにとっては「自分がやったから」という達成感も加わり、「食べてみよう」という意欲が起こりやすくなりますよ。意外と、味見の時だけは苦手なものでもすんなりと口にしてくれるというケースもよく聞きます。
そして、盛り付ける時ですが、最初から急に一皿全部を食べてくれることは期待せず、興味を持ってくれたものは、子ども用スプーン1杯分だけを用意してみましょう。ほんの小さなひと口であっても、それをお子さん自らが口にしてくれたのなら、大成功! その時に、おいしいだけではなく、嬉しい、楽しい、という気持ちを抱かせることができれば、あとは徐々に食べられるようになるのではないでしょうか。
何よりも大切なことは、お子さんの気持ちに寄り添うということ。
偏食を改善したい、栄養を摂ってもらいたい、という大人の考えだけでなく、どうしたらお子さんが食べる意欲を失わないか、楽しく食べたくなるか、という視点に立ってみてくださいね。大人が頑張れば頑張るほど、お子さんも意地になってしまいますので、「食べさせよう」という考えは一度お休みしてみることをお薦めします。
好きなものばかり→食べたくなるものばかりに変えていけるよう、できることから始めてみてください。
※今回は、【管理栄養士】が回答しました。