母乳やミルクの時期が過ぎて離乳食が始まると、徐々に子どもたちも自分からごはんを求めることが増えてきます。保育園や幼稚園でも、年齢問わず食事の時間をとても楽しみにしている子どもが多いです。そうした中で、お子さんがごはんを何度も何度もおかわりする、幼児期なのに大人と同じ量をぺろりと食べてしまう、おかりをあげないと癇癪を起こすなど、ごはんを食べすぎてしまうというご相談を受けることがあります。
ごはんを食べ過ぎてしまうのはどうして?
そもそも『ごはんを食べすぎてしまう』ということはなぜ起こるのでしょうか。一般的には満腹中枢が未発達であることが、1つの要因として挙げられます。
満腹中枢とは、“おなかがいっぱいになったからもう食べなくて大丈夫!”“もうちょっと食べたいな!”など脳の中で食事を摂るという行動を調整する機能をもつ神経です。満腹中枢はだいたい2歳ごろからうまく働くようになるといわれているため、この時期には満腹中枢が育ちきっていないお子さんもいます。そうすると、自分がどのくらい食べればよいかを自分自身で判断することは難しく、つい食べすぎるということが起こってしまうのです。
もう1つ、ごはんを食べすぎてしまうというときに考えられる要因として、“内感覚の弱さ”が考えられます。“内感覚の弱さ”といわれても、あまりピンとこない方も多いと思いますが、これは体の内部の感覚がつかみにくい状態を指しています。“内感覚が弱い”お子さんのエピソードとしてわかりやすいのは、寝る直前まではわーっと動き回っていたのに、いきなり電池が切れたようにパタッと寝てしまうといったケースです。これは、「自分の体が疲れている」という体の感覚を脳が正しくキャッチできず、体の方が動かなくなるまで動きを止めることができない状態と言えます。
内感覚の弱いお子さんが「ごはんを食べすぎてしまう」というときは、満腹中枢が“もうおなかいっぱい!”と反応してもそれを脳が正しくキャッチ出来ていない状態にあると思われます。
このように疲れの感覚や、おなかがいっぱいになっている感覚、また逆におなかが空いたという感覚がわからないというような、内感覚の弱さが要因で食べすぎてしまうというお子さんもいるのです。
食べ過ぎを防ぐための工夫とは?
では、食べすぎてしまうことを防ぐためには、どうしたらよいのでしょうか。
もちろん、食べすぎの要因となりうる満腹中枢と内感覚を、どちらも育てていく必要があるということになりますが、具体的な対応としては次のような関わりや工夫をおすすめしています。
小さいお子さんの場合は様子を見ながら判断するなど、大人が食事量の調整をすることが必要です。それでもお子さんが「もっと」と求める場合には、
- 1回の食事量を減らして食事の回数を増やす
- おかわりは一度にたくさんあげずに小分けにする
などの工夫をしてみてください。
また、満腹中枢は“噛む”行為によって刺激され、うまく働くようになると言われています。離乳食期は噛むというよりも舌や歯茎で“すりつぶす”に近い動きになりますが、“しっかり口を動かして噛む”ことで、満腹中枢をしっかり働かせることにつながります。
次に内感覚を育てるためには、からだの外からの感覚をしっかり捉える経験を積むことが必要です。そのためには“感覚遊び”や“からだ遊び”がおすすめです。感覚あそびや体あそびと聞くと、何か特別なもののように感じられるかもしれませんが、実際にはそうではありません。
粘土や砂、水など手や体でさまざまなものの感触に触れたり、感じたりして楽しむものなら何でも“感覚遊び”といえます。“からだ遊び”はくすぐりや寝転がっているお子さんのからだを「おいもさん〜」と称して転がす遊び、シーツブランコなどでお子さんのからだに触れながら楽しむふれあい遊びを指しています。またお子さんのことをぎゅっと抱きしめてあげることも、からだの感覚を育てていく関わりの一つです。
こうして外からのさまざまな感覚を取り入れ、感覚そのものを育てることが、内感覚を育てることにつながるのです。
お子さんがたくさん食べてしまうこともあるかもしれませんが、総合的に体重が成長曲線内におさまっていれば、生活したり動いたりする中で、うまくエネルギーに変えることができていると考えられます。1回1回の食事量が気になるときには、成長曲線も見ながら食事量について見直してみてもよいかもしれませんね!
※今回は、一般社団法人ぽけっとの【作業療法士】が執筆しました。
一般社団法人ぽけっと
2017年2月設立。児童発達支援・放課後等デイサービス事業『発達支援ルームぽけっと』や園や学校の先生方を支援する研修・巡回事業等のサービスを提供しています。
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