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長時間食べ続けるよりも、“おいしい!”“楽しい!”でOK
せっかく食事を用意したのに好きなものだけ食べて終わりとなると、悲しいですよね。また、栄養面も考えると心配になると思います。
現在はお好きなものを中心に食べているということですが、身長や体重といった身体の成長はいかがでしょうか。もし成長曲線を大きく割っていなければ、お子さんに必要な栄養素は十分に摂れていると言えます。逆に成長曲線を割っているようであれば、粉ミルクを併用しながら栄養面を補っても良いと思います。
1歳1か月で、もともと食への関心が薄いとなると、他にもたくさん美味しい食べ物があることを知らなかったり、口にしたことがない食べ物には興味をもちにくいのかもしれません。また、歩行も安定してきて行動の幅が広がる時期でもあるため、いろいろなものに興味が広がりやすいタイミングでもあります。お子さんが食べ終わったと感じてすぐに立ち上がろうとするのは、そうした身体の成長のタイミングと重なっている側面もあると考えられます。
そのため、時間をかけて食べてもらおうと頑張っても、お子さんは食事への意欲や興味をあまりもっておらず、“早く終わりにしたい!”“ここから動きたい!”という気持ちが高まりやすくなっていると予想されます。そうなると、お子さんの行動を制御しながら食事介助することになるので、大人側も疲弊してしまいます。それが毎日、毎食となると、お子さんにとってもご家族にとっても食事の時間が苦痛になってしまいますよね。
今は頑張って食べさせるよりも、お子さんに“楽しい!”“おいしい!”と期待してもらえるような食事の時間にすることが大切です。おいしく食べられる好きな食べ物があるなら、まずは好きなものを中心に食べるのもいいと思いますよ。
また、お子さんと一緒にごはんを食べるときは、大人がいろいろなものを「おいしい!」と言いながら食べる様子を見せるのも1つです。お子さんは、大人がおいしそうに食べている姿を見て、“何を食べているんだろう?”と興味をもつことが多々あります。まだ年齢的に大人と同じものを食べることは難しいですが、まずは“おいしそうだな”“他にはどんなものがあるかな”と興味を広げるきっかけを作るといいと思いますよ。
一方で、もし好きなもの以外を拒否する(嫌がる)様子が強い場合は、もしかしたら口の中の感覚が敏感なのかもしれません。食感や匂いなどをかぎ分け、苦手だなと感じたものには強い苦痛を感じやすいことが多いので、そういった様子があるときは、身体全体の感覚を育てていくといいですよ。少しずつ感覚面の敏感さが落ち着き、食べられるものが広がる可能性があります。
寝る前に少し強めにマッサージをしたり、日常のスキンシップを増やしてみる等、感覚面を育てる関わりを意識してみてくださいね。特にこれから暑くなりますので、お風呂で泡や水、寒天等の感触遊びはおすすめです。
繰り返しになりますが、今はいろいろなものを食べてもらいたいという気持ちよりも、お子さんが“食事はいいものだ!”と思えることが大切だと思います。まずは食事の場面を苦痛にしないよう、ゆっくり進めていきましょう。楽しい気持ちで食べられる時間が増えると、徐々に食べたい気持ちも育ってきますよ。また、お子さんが好きなものをおいしそうに食べてくれると、ご家族も笑顔になれると思います。そんな様子を見て、お子さんも“嬉しいな”“もっと食べてみようかな”と思えるかもしれません。
家族みんなにとって食事が楽しい時間となるよう、今は「おいしいと思えるものを食べて、すくすく成長できていれば大丈夫!」くらいの気持ちで、過ごしてみてくださいね。
※今回は、一般社団法人ぽけっと【臨床心理士】が回答しました。