手づかみ食べが大切な機能を育てている!!

作業療法士による「食具(食事のときに使う道具のことで、スプーン、フォークなどがあります)」に関するコラムがスタートします。
連載5回シリーズの1回目は、手づかみ食べの必要性についてです。
お母さんやお父さんにスプーンで離乳食を食べさせてもらうようになると、次は自分の手でつかんで食べるようになります。その手づかみ食べには、どのような意味があるのでしょうか。

未熟で生まれてくる人間

言わずもがなですが、ご存知のとおり人間は未熟な状態で生まれてきます。
未熟な状態で生まれてくるのは、人間が自然界でなによりも安全に恵まれているからだそうです。
そして、これまたご存知のとおり唯一道具を使える動物も人間だけです。しかし、生まれてきてすぐには道具は使えません。
未熟なのは大きさだけでなく、脳の機能や筋肉、骨の数も不完全です。個人差はあるものの年齢を追うごとにより大人に近い状態になっていきます。目に見える大きな変化としては、首が座ることや歩けるようになる、乳歯が永久歯になるなどですが、それ以外の体の内部でも様々な変化が起きているのです。

 

道具を使えるのは人間だけ

道具を使う人間の中でも、日本人は2本の細い棒を使いこなす「箸」を利用することを大きく求められます。今まで箸を使ったことがない外国の方が箸を使う様子を見たことがありますか?
とても不器用で、ものをうまく口に運べていないように感じますよね。日本人は生まれながらに、高度な技術を求められる過酷な運命を背負っているともいえます。
しかし、はじめから道具を使える人間はいません。人間は道具を使えるようになるために、姿勢・目の動き・器用さ・距離感・感覚分別などの機能が必要となりますが、それらは成長していく中で段階的に獲得していくものなのです。

 

では、道具を使えるようになるためにはどのような経験が必要なのでしょうか?
その答えの一つとして、離乳食期の手づかみ食べが挙げられます。後片付けの大変さや、遊び食べを避けたい気持ちから敬遠されがちな手づかみ食べですが、実はとっても大切な機能を育てています。今回は手づかみ食べの必要性についてお話していきます。

とっても大切な時期、手づかみ食べ

手づかみ食べ、服も机も顔も全部汚れるからなかなかやりたくないですよね。でも、実はそれがとても大切なことなのです。手でぐちゃぐちゃにしているように見えますが、手のひらや指先で食べ物の硬さや弾力、大きさを確かめています。口の周りが汚れるのは、手と口の距離を測って、うまく口に入れられるように練習しているからです。初めは自分の手の長さや口との距離、食べ物の大きさの感覚もわかりません。手と口でもうまくいかないので、もちろんいきなり道具を使うのはとても難しいのです。手づかみ食べで、指先や手、距離感をしっかりつかめることで、その後の道具の操作に繋がっていきます。

 

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毎日毎食のお子さんを観察していると、徐々に上手になっていく様子がわかると思います。汚す量も減り、手と口へ運びがうまくいき、指先が使えて食べものの大きさが少しだけ調整できるようになったら、スプーンやフォークの出番になります。

 

もちろん粘土や砂遊びなどでも似たような機能は育ちますが、手づかみ食べの時期はまだなんでも口に入れてしまう時期でもあるので(ちょうど食べ物とそうでないものを分けている時期です)、それは避けたいですよね。そう考えると1日3回毎日行う食事は絶好のチャンスです。逆にもうその時期を飛び越えてしまったお子さんは、ぜひ粘土や砂遊びのようなしっかり手を使う遊びそしてそれにプラスして、ままごとで食べる動作などの遊びを一緒にとり入れてみてください。
お片づけがとっても大変だと思いますが、今の時期しかできないことですし、育児を楽しみながら育ちを支えていけるといいですね。

 

連載企画第2回目は、『「手づかみ食べ」のあとは、「フォーク」からスタート!』です。

 

※今回は、一般社団法人ぽけっとの【作業療法士】が執筆しました。

 


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一般社団法人ぽけっと

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