発音と食事って関係してるの!?

現在連載中のコラムでは、子育て関連のサイトや雑誌ではあまり登場することがなかった専門家たちが、子育て中の皆さんに伝えたいことを発信しています。
作業療法士、臨床心理士による連載はすでにスタートしていますが、今回から言語聴覚士による連載が加わります。その1回目は、発音と食事の関係性についてです。

「何を言っているか聞き取りにくい」など悩みごとはさまざま

私たちがお父さん、お母さん方や保育園・幼稚園の先生方からお受けする相談の中で、「何を言っているか聞き取りにくい」「発音が悪い」というお話しはよく聞きます。
特に年中、年長さんくらいの年齢になると、子ども同士でも指摘されることがあるため、お子さん自身も気がつくことがあります。『つみき』が『ちゅみき』になるなど、他の音に置き換わってしまうお子さんや、一音一音がはっきりしない話し方をするお子さんなど、お悩みはさまざまです。
そもそも、大人と同じようにしっかりと音を作れるようになるためには、からだ全体をしっかり使えるようになる→手や口を細かく動かせるようになる→たくさんの言葉を覚えて使えるようになる、など多くの部分での育ちが必要なのです。そのため、低年齢のお子さんでも発音のご相談は多いのですが、1〜2歳くらいの話し始めたばかりのお子さんたちの場合は発音の訓練ができません。しかし小さいお子さんでも、お口の体操代わりに毎日必ずおこなえることがあります。それが食事です。

 

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食事も発音も“舌”と“唇”の動きが大きく関係

私たちが食事をしている時にお口の中でどんなことをしているか、知っていますか?まず、食べ物を口に入れたら唇を『閉じ』ます。そして歯で『噛み』ます。噛んだ食べ物は頬にくっついたり、奥歯にくっついたり、いろいろな部分に広がっていきます。その広がった食べものを ‶舌‶を使って『かき集め』ます。‶舌‶によってかき集め、まとめられた食べ物は、再び ‶舌‶によって喉へと『送りこまれ』ます。食事の中では歯で噛むだけでなく、“舌”と“唇”がとても重要な役割を果たしているのです!

 

 

では、おしゃべりするときはどうでしょうか。実はおしゃべりをするときに出す『音』、つまり発音は舌と唇を使って作りだしています。たとえば「ま」という音は、唇を閉じたところから開くようにして「ま」の音を作ります。「か」の音は、口を開き舌は少し後ろにひっこめた形で「か」の音が作られます。「か」の音を作る時には唇を使いません。また、舌先を上の前歯にくっつけるようにして「か」と言っても、「た」に近い音になってしまうかと思います。このように、おしゃべりをするときに必要な『音』を作りだすときには、唇と舌を正しい位置で上手に使えないときれいな音にはなりません。
このように、食事も発音も“舌”と“唇”の動きが大きく関係しているのです。

毎日の食事で発音の基礎がつくられる

『発音が悪い』というお子さんたちは、しっかりと口を閉じて食べられない、やわらかいものばかり好んで固いものや弾力のあるものを噛んで食べることが少ない、飲み込むのが早くてよく噛んでいないなど、何かしら食事の中で食べ方の‶クセ‶をもっていることが多いです。
食事の場面では、食べ方やマナー、好き嫌いに目がいきがちですが、口の動きや噛む回数等、それぞれのお子さんの食べ方の“クセ”に注目してみてください。口を開けたまま食べるお子さんには「お口を閉じて、もぐもぐだね。」、あまり噛んでいないお子さん「かみかみ♪」とリズムをつけながら伝えてみる、といった声かけのポイントがみえてくるはずです。また、声かけだけではなく、一緒に食べる(噛む)動作を見せてあげると、どのような動きをすればよいのか、より分かりやすくなります。

 

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例にあげたような関わりは一般的な育児書等にも書かれていますし、実際に日常の関わりの中に取り入れていらっしゃるお母さんもいるかと思います。しかし、毎日の食事の中で『発音』を育てる基礎がつくられているなんてことを、意識されている方は多くはないでしょう。このように、ちょっと違った視点で食事を見てみると、今のお子さんを知るヒントがたくさん隠れているかもしれません!

 

連載企画第2回目は、「離乳食の進め方のポイントは、口の動き!」です。

 

※今回は、一般社団法人ぽけっとの【言語聴覚士】が執筆しました。

 


 

一般社団法人ぽけっと

corporate009_img012017年2月設立。児童発達支援・放課後等デイサービス事業『発達支援ルームぽけっと』や園や学校の先生方を支援する研修・巡回事業等のサービスを提供しています。
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