臨床心理士が子育て中の皆さんに伝えたいこと、その第2回目は「子どもにとっての食事は発見と体験の連続!」です。
心理学の専門家として、発達全般についてのアドバイスにあたる臨床心理士が、「食育」をこれまでとは違った視点から捉えます。
子どもの見る力はまだ発達途中!
「食育」という言葉が広く知られるようになり、意識されているご家庭もあるかと思います。私たちがお邪魔する保育園でも、世界の料理や季節の食材、健康なからだ作りに必要な栄養素などを、栄養士さんのお話や給食を通して、子ども達が知っていく様子を拝見したことがあります。
「食育」と聞くと、このように栄養面や食に関する知識について注目されることが多いように感じますが、『お子さんの発達』という視点で食事を見てみると、そうした面とは違った「食育」が見えてくるんです!
乳幼児期のお子さんって、生活の中では止まっている時間のほうが少ないですよね。動いている時に1つのものをしっかりと見たり、大きさや奥行きを把握することは大人でも難しいものです。動いているときのお子さんの見え方は、私たち大人が遊園地の乗り物に乗った状態で周りを見ている見え方と同じと思っていただいていいと思います。そして、少し専門的なお話になりますが、この時期のお子さんたちの見る力はまだ発達途中なので、見たいものにピントを合わせたり、しっかり見続ける力が十分ではありません。そのため楽しく遊びまわっている時は、まだ周りに何があるのかしっかりと見たり、“あ、おもちゃがあそこにある!”と認識することが、どうしても難しいのです。
『座り』 『見』 『手に取り』…は貴重な時間
一方食事の時間は、座っていることが基本ですよね。いろいろな物に興味を持って歩き回ってしまうので、静かに座っていられる時間は食事の時くらいしかないと思います。からだの動きを止めて座り、じっくり物を『見て』、『触って』、『感じる』ことができる食事の時間は、とても貴重な時間と言えるのです。
私たちは『食事』を通して、『姿勢を保つこと』、『運動(体を動かすこと)』、『お箸やスプーン、食器を操作すること』、『味や香り、触感を感じること(五感やその他の感覚を使う)』など、たくさんのことを行っています。
このように、1つのものを食べるだけでも、これだけたくさんの体験と学びが詰まっているのです。
食べようとしている過程に目を向けると見方が変わる
食事場面ではどうしても、そのときの『食べた/食べなかった』やお子さんの『食べ方(食事の仕方)』に、大人の気持ちが向きがちです。お子さんがあまり食べなかったり、食べ方が汚かったりすると、忙しい毎日の中では、“ダメだった”“大変だ”と感じてしまうこともあると思います。ですが、お子さんにとっては食事場面の1つ1つが学びの機会になっています。『食べる』『食べない』という結果だけでなく、食べようとしているその過程自体が、お子さんにとっては毎回発見と体験の連続なのです。
このように、お子さんの食事の過程も含めて、私たちは『食育』と考えます。ご家庭でも、『見る』『触る』『感じる』ことも含めた学びと体験の機会と考えてみると、食事への捉え方が少し違って見えるのではないでしょうか。
※今回は、一般社団法人ぽけっとの【臨床心理士】が執筆しました。
※写真提供:Mihoさん(なぎ・1歳)
Today’s Snapで提供いただいた写真です
一般社団法人ぽけっと
2017年2月設立。児童発達支援・放課後等デイサービス事業『発達支援ルームぽけっと』や園や学校の先生方を支援する研修・巡回事業等のサービスを提供しています。
https://www.pocket-room.org/
■ ぽけっとの支援の内容やお仕事についてはこちらから