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「水」が教えてくれること~前編~ ミネラルウォーターあれこれ
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2016.10.21
保護者のみなさんとお話していてよく伺うのが、「赤ちゃんのミルクや、離乳食にもミネラルウォーターを使ったほうがいいでしょうか」という質問です。
毎日口にするものですから、より安全・安心なものを与えたい、という親としての気持ちは最もだと思います。
子どもにとって、安全・安心な水とは?そんな疑問や不安は尽きないと思いますが、2回に分けて、水について考えてみたいと思います。
ミネラルウォーターにも様々な種類が。
乳幼児に与えるときには「硬度」をチェック。
日本には、昔から「湯ざまし」「白湯(さゆ)」という言葉があります。
これは、かつては汲み取り式便所などの汚染によって、井戸水の水が消化器系の伝染病を発生させることもあったので、これを予防するために、水を煮沸消毒し冷まして飲んでいた先人の知恵です。現代では、上下水道も整備されていますので、水を煮沸しないと飲めない、ということもなくなりました。
海外旅行で、水道水を飲んだらお腹を壊しちゃいました、という話はよく聞きますが、日本の水道は、世界的にみても厳しい基準になっており、安全でおいしい水道水を提供するために、きめ細やかな安全衛生管理が行われていることから、飲料水や調理にもそのまま使われています。我が家では絶対にミネラルウォーターしか飲みません、というご家庭もあれば、水道水をごくごく飲んでいる人もいるでしょう。浄水器を付けたり、ウォーターサーバーを使っているご家庭もあると思います。
すっかり市民権を得たミネラルウォーター。いったいどんな水なのでしょう?
ミネラルウォーターの種類は、国産では約800銘柄、輸入品は約200銘柄とのこと。なんと1000もの銘柄が流通しているそうです。
農林水産省が1990年に定めたガイドラインによると、日本の「ミネラルウォーター」の定義は大きく分けて下記の4種類です。
日本では、食品衛生法第11条に基づく「食品、添加物等の規格基準」によって、ミネラルウォーター類の安全性が確保されています。
海外のミネラルウォーターの定義は「コーデックス」(食品規格)による分類で製品化されているため、日本の分類には当てはまりません。世界各国で産地や環境も違うことから、品名表示の方法も異なっています。
世界の水の硬度を比べてみると、こんな感じになっています。
■世界主要都市の水の硬度
しかし「体に良さそう」という理由で、子ども特に赤ちゃんのミルクや離乳食に、やみくもにミネラルウォーターを使うのは危険。子ども、特に乳幼児に与えるときに気を付けたいのは、「硬度」、ミネラル分の量です。
飲料水に限らず、水には「硬度」がありますが、これは、ミネラル分を構成するカルシウムやマグネシウムの量を炭酸カルシウムに換算して表したもの。
マグネシウムとカルシウムの量が少ないものを「軟水」と呼び、 量の多いものを「硬水」と呼んでいます。日本の水はほとんどが軟水で、水道水も軟水。日本人には軟水が合うともいわれています。
ある粉ミルクメーカーのホームページを見ると、調乳に適した硬度について下記のような表示がありました。
・・・硬度 (目安) 120以下(できれば60以下)
大人の場合には、ダイエットや便秘解消などの効果を期待して硬水を選ぶ人もいると思いますが、ミネラル分を特にマグネシウムを豊富に含む硬水は、内臓の機能が未熟な赤ちゃんには負担が大きく、胃腸や腎臓に負担をかけてしまい、下痢を引き起こすこともあります。乳幼児だけでなく、体の弱っている方や、お年寄りにも、体の負担が少なく口当たりもよい「軟水」が適しているといえます。
ベビー用品売り場に行くと、赤ちゃん用に、ミネラル分を含まないピュアウォーターや純粋が売られていますが、必ずしもこうした水を使わなくてはいけない、ということではありません。
先ほどの表を見てもわかるように、日本の水道水は軟水で、だいたい硬度が60前後であることがわかります。ほとんど国産ミネラルウォーターはミネラル濃度の低い軟水、硬度が100以下のものが多くなっています。
製品の産地や水源地域によって硬度は違いますので、ラベルや成分表をよく見て、硬水か、軟水か…をまず調べてみましょう。大人でも、自分に合わない成分のミネラルウォーターを飲みすぎると下痢をしてしまうこともあります。いずれにしても、乳幼児にはミネラル分は負担が大きいため、とくに「硬水」を与えることは控えましょう。
■WHO(世界保健機構)の水質ガイドラインにおける硬水・軟水の分類
※硬度の分類WHO(世界保健機構)飲料水水質ガイドライン
次回は水と「食育」について考えてみます。