「ルールとマナー」とある日の午後19時35分

里山といえど、首都圏に住まう私たちは公共交通機関として電車を利用することが多くあります。

私が幼少の頃、九州ではまだ「汽車」と呼称するのが一般的でした。

おそらく都心ではそんなことは無かったと思いますが、なんせ九州の小さな港町です。

記憶が正しければ、ほとんどの汽車はディーゼルで動いていた気がします。

 

汽車といえば、煙草の匂いが印象的でした。

当たり前のように煙で霞んでいましたし、

床が少しネトネトしていた感覚があります。

そんな中で駅弁を食べることが、とても優雅で心地よかった記憶が鮮明です。

そういえば、ここのところ在来線にのんびり揺られながら、駅弁を楽しむスタイルは消えてしまったようです。

 

そこに存在するのは「マナー」というキーワードです。

マナーとは社会の中で人間が気持ち良く生活していくための知恵。

当然、国や民族、文化、時代、宗教の様々な習慣によって形式が異なってきます。

 

 

翻って、現在。

九州で汽車に乗っていた頃の自分によく似た8歳と3歳の息子が、ゴミひとつないホームを歩きます。

私は片手に荷物を持ちながら、息子とエスカレーターに足を踏み込みます。

私と手をつないで右側に立った息子は、後ろから歩いてきた大人たちに否応なく押しのけられます。

 

私は息子に説明しました。

 

「さて、ポスターにも書かれているように、エスカレーターを歩いて登るのはルール違反だ。
急いでいるとはいえね。

でも、歩く人のために東京あたりでは、左側に身を寄せるのがマナーなんだ。

君はどう思う?」

 

彼はその時から、私と手をつなぎ私の方に身体を寄せて歩く大人たちを通します。

どのように考えて彼はそう行動しているのでしょう。

興味津々ですが、あえて聞かないようにしています。

 

 

文化や風習を理解して行動することも重要ですが、

これからの文化や風習は、現代の私たち一人一人がつくっていくということも

十分理解しなくてはいけません。
そしてそこに正解も不正解もないようです。

自分がどんなマナーを構築していくか。

子どもたちがつくる社会がどうなるか楽しみでなりません。

 

 

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