【迫祐子さん】「自分にできることって、何だろう」を模索しながら、人とのつながりを大切に、地域への橋渡しをしながら、歩き続け、たどり着いた。
さて、本日の会場であるここ、二俣川ハウスは、相鉄線・二俣川駅北口から徒歩10分ほど、住宅街にある民家を改装した地域交流スペースです。真っ白い壁にブルーの縁取りがかわいらしい、そしてとても懐かしい佇まいです。玄関先には鮮やかな紫陽花、そして庭には柿の木も。当日はあいにくの雨でしたが、今回のワークショップも大盛況でした。
2011年、精神障がい(こころの病)と呼ばれる様々な生きづらさを抱えている方を支援する市民団体「木々の会」が、法人としてこちらの民家を借り受けました。障がいのある人も、家族も、かかわる人も、一人ひとりが生きる手ごたえを感じられる場づくりをめざして・・・そんな木々の会の理念をかたちにした場所として、「二俣川ハウス」では、障がいをもつ方の宿泊支援と、居場所としての「お茶の間」フリースペース開設やバザーを行っています。
迫祐子さんは、2016年2月から二俣川ハウスの運営に加わりました。迫さん自身、気がかかりなお子さんの支援やボランティアとして活動しながら、「地域に向けた交流スペース」としての可能性を模索し続けていました。
折しも地域の課題やニーズを形にして解決するプロジェクトとして、二俣川ハウスをリニューアルすることになり、企画段階からかかわるようになりました。築50年以上経っている民家ですが、大家さんのご厚意もあり、誰もが気楽に立ち寄り過ごせる場所として、使いやすく居心地よく改装し、耐震補強も行いました。1階部分を地域コミュニティスペースとしてオープンし、今年で二年目を迎えます。
「こんにちは!」明るい玄関を入ると、中から「はーい、お待ちしてました」と温かい笑顔で迎えてくださいます。まるで、おばあちゃんちに遊びにきたような、足をのばしてくつろげるレトロなお茶の間が!…思わず「あー懐かしい!ほっとしますね」とつぶやいてしまいました。「それが一番の誉め言葉です!オープンしている時間であれば、いつでも、どなたでも遊びに来ていただけるんですよ」と迫さん。
迫さんは、本を読むことや勉強することが大好き!子育てに奮闘しながら、「地域ってなんだろう」という疑問もあり、傾聴ボランティアや地域活動、「読み聞かせ」「まちづくり」「ソーシャルビジネス」などについても積極的に学んできました。そしてボランティアセンターや地域のイベントでも、たくさんのお仲間に出会い、ネットワークが広がっていきました。いつも心には、「地域のために、私にできることはないかな」という思いがありました。起業ではなく、ゆるやかにつながっていくことを模索してきた結果、この二俣川ハウスにたどり着いた、と迫さんは語ります。
「そもそものきっかけは、気がかりのある子どもの子育てに際して、児童精神科医の佐々木正美先生(※最後のページで著書を紹介しています)の勉強会に参加したことです。そして、佐々木先生の著書を読む中で、『家族や地域の人のあたたかな見守りやつながりの中で、子どもは育っていく』ということを痛感したのです」
2008年から、お母さんのセルフヘルプグループ「はじめのい~っぽ♪」を仲間とはじめて、今年11年目。お子さんの年齢も幅広く、子育てや子どもの自立、自らの生き方、親世代の介護のことなど、話題も様々です。そして、いろいろな出会いと「場づくり」の中から、「地域の人と人とが、出会い、語り合い、一緒にいろいろなことにトライする」機会を提供したいと、「どんぐりの輪」というコミュニティもつくりました。
「「どんぐりの輪は、「ゆるやかな集まり」です。それぞれの方のお得意なことを持ち寄って、今回のような『消しゴムはんこ教室』を開催したり、地域の手作り作家さんの作品を、地域のみなさんに紹介し販売する『どんぐりマルシェ』も行っています。また、『地域の居場所づくりについて語り合う会』『カンタン防災クッキング』『紙芝居をたのしむおはなし会』なども主催しているんですよ」
本が大好き!人が大好き!を形に。
思い思いに過ごせる「ブックカフェ」をスタート。
さらに、迫さんの活動の軸になっているのが、大好きな「本にかかわること」を軸にした「ブックカフェ」。部屋の一角には、素敵なマイクロライブラリーが。迫さん選りすぐりの本たちが並びます。
「小さい頃から、本を読むのが大好きでした。大人になって、それも子育ての途中から、必要に迫られて…ということもありましたが、趣味を含めて学んだり、気になる本を読む機会が増えました。そのなかで家庭文庫や「マイクロライブラリー」を知りました」
2014年から2ヶ月に1回のペースで、友人の開いている「コミュニティカフェ」での「おとなのための絵本カフェ」を約2年開催。そしていよいよ2017年6月、二俣川ハウスのリニューアルに際して、地域交流スペースの活用として、「旅するブックカフェ」を開くことになりました。
「ブックカフェは、第1第2水曜日と、第3第4木曜日の、11時~16時オープン。入室料は100円。自分の好きな本を持ち寄ってもいいし、ある一冊についてみんなで語り合うことも。一人で静かに読みたい人も、みんなで話したい人も、どんな人もウェルカム!お茶を飲みながら、自分らしく過ごす。好きな時間にきて、好きな時間に帰る。そんな気ままな居場所なんですよ。ようやく一年経ち、ささやかですが『本のある居心地のよい場づくり』に日々取り組んでいます」
本日の講師、古本さんとは、二俣川ハウスの立ち上げに携わる数年前に、ママたちによる地域イベント「サマーフェスタ」で出会いました。「素敵なブックカフェの看板をつくってください!」と依頼したところ…
御覧ください!これ、なんと、刺繍なんです!
女の子が窓辺で本を読んでいる、窓の向こうには、青い空が広がっているのか、夕暮れなのか、どんな本を読んでいるのだろう、この子はいくつぐらいかな?
この作品を見ているだけで、物語が聞こえてきそうです。
古本さんが原画を描き、田中さんが刺繍をほどこしました。
人と人とのつながりが生み出した、世界でたった一つの、手作りの作品です。
見ているだけで、あたたかい気持ちになります。
誰かのために、そして自分のために・ボランティアと勉強を続けるうちに、たどり着いたこの場所で、迫さんの「あんなこと・こんなことやってみたいな」と夢が膨らみます。
「自分自身が、地域にあったらいいなぁとか、必要だな、と思うこと、興味関心のある活動をすることで、結果として、ささやかでも地域の方々や誰かのお役に立てるなら、とてもうれしいです。でも、無理するのではなくて、ちょうどいいぐらいがいい。自分のできることを、できる範囲でやっていきたいなと思います。人と人とが出会って『じゃあ、今度一緒に何かやりましょうよ!』とアイディアが生まれる瞬間をみると、ワクワクしますね!」