最も歴史の古い調味料といわれる「酢」。世界中にその土地柄から生まれた農作物を原料とする個性豊かな酢がたくさんあります。この機会にいろいろな酢を試してみませんか?
「酢」は国によって原料も味も香りもさまざま!
酢はお酒(アルコール)に酢酸菌を加え発酵させて造られています。
糖質を含み、お酒にできる食材ならほとんどが酢にできるため、原料は国によって多様で、世界には数多くの種類の酢があります。
例えばフランスではワインを発酵させた「ワインビネガー」、アメリカはとうもろこしなどの穀物を主原料とした「ホワイトビネガー」、イタリアはぶどう果汁を煮詰めて熟成させた「バルサミコ酢」、イギリスなら麦芽から造られた「モルトビネガー」が一般的です。
日本では米や麦などの穀物を主原料とした「穀物酢(穀物酢、米酢、米黒酢)」や、果実を主原料とした「果実酢(りんご酢、ぶどう酢)」がよく使われます。
酢の主成分は「酢酸(さくさん)」で、これが酸味のもとになります。酢酸の代表的な働きには“殺菌作用”があり、食中毒の原因菌の繁殖を抑えたり食べ物を傷みにくくしたりする効果があります。
また、酢の成分には酢酸のほかにも有機酸やアミノ酸が含まれていて、疲労回復のほか、脂肪の蓄積を防ぐ、カルシウムの吸収率を高める、消化吸収を助ける、といった健康効果があります。
酢には酸味を与える役割のほかにも料理への効果がたくさんあります。
離乳食ではまだ使いませんが、毎日の献立の効率UPに役立ててみてください。
知っておきたい酢を使う8つの効果
1、殺菌・防腐作用
酢には強い殺菌作用があり、食品を日持ちさせるためによく用いられます。例えば魚を酢に浸して“酢締め”しておくと、余分な水分と生臭さが抜けるとともに殺菌されて腐りにくくなります。
ほかにも、おにぎりを握るときに手に酢水(1:1の割合)をつけたり、野菜や魚を洗うときに酢水で洗ったりすると雑菌の増殖を防ぐことができます。
また、マヨネーズが保存料なしでも長持ちするのは酢の力といえます。
2、ぬめり取り
薄めた酢で魚を“酢洗い”すると、ぬめりや臭みを取ることができます。ほかに、里芋も酢を入れたお湯で洗うとぬめりが取れます。
3、魚の臭み消し
いわしやサバなど青魚の臭みの成分はアルカリ性物質のため、酸性の酢を煮付けなどに使うと魚の臭みが抑えられます。煮付けに使うときはほかの調味料と一緒に入れ、先に煮立たせてから魚を入れます。
4、色止め
ごぼうやれんこん、カリフラワーをゆでるときに酢を加えるとアク抜きができ、変色も防いで白さを保つことができます。
5、色出し
みょうがや生姜の甘酢漬けに含まれる紅色の色素(アントシアニン)は酢によって酸性になると、より紅くなるため色鮮やかに仕上げることができます。
6、たんぱく質を固める働き
ゆで卵やポーチドエッグを作るときに酢を入れると、たんぱく質の“白身”の部分が早く固まり卵の形が崩れるのを防ぐことができます。また、魚の煮付けに酢を加えると魚の表面のたんぱく質が固まって煮崩れしにくいため、煮姿の仕上がりが美しくなります。
7、肉や魚を柔らかくする働き
酢には6で説明した「たんぱく質を固める働き」のほか、長時間煮込むことで「たんぱく質を分解する働き」もあります。そのため、煮込み料理に使うと肉が柔らかく仕上がったり、魚の煮物も骨まで柔らかくすることができます。
8、減塩効果
酢を使うと塩分量が少なくても塩気のある味付けに感じるため、塩分を控えることができます。例えば、焼き魚に醤油の代わりに酢をかけると、酸味が塩味を引き立てるので物足りなさをカバーできます。
酢の種類
穀物酢
麦やとうもろこし、米、さとうきびなどの穀物が原料の酢。さっぱりした酸味が特徴で煮物やスープなど加熱調理に使うのがおすすめ。
クセが少なく価格も手頃なため、一般的によく使われています。
米酢
米とアルコールが原料の酢。酸味は強くなく、米の旨味と甘味があり、まろかやに感じます。
お寿司や酢の物など加熱調理しない和食によく合います。
ちなみに「純米酢」とは原料が米だけの酢のこと。
黒酢
玄米が主原料の酢。長期熟成させたものほど色が濃く、アミノ酸が豊富で独特のコクとまろやかさがあります。
お水やお湯で割ってドリンクにするのがおすすめ。また、風味が強いので酢豚や煮物に使うとパンチの効いた味わいに。
りんご酢
りんご果汁を発酵させて造られる酢。さっぱりした爽やかな酸味とフルーティな香りが特徴で、その風味を活かしたドレッシングやデザートに向いています。
ワインビネガー
発酵させたワインを熟成させて造られる酢で、ワインと同様に赤と白の2種類あります。赤はコクや渋みのある酸味が特徴で、肉の煮込み料理の隠し味などに。白はキリッとした強い酸味が特徴で、マリネやドレッシング、ソースに向いています。どちらも洋風料理とよく合います。
バルサミコ酢
北イタリアの限られた地域で造られる酢。煮詰めたぶどう果汁を長期熟成させ、伝統的な製法で作られたものが本来のバルサミコ酢です。熟成によって生まれた豊かな香りや甘味が特徴。また、ポリフェノールが豊富で強い抗酸化作用をもちます。イタリア料理によく合い、チーズにかけたりサラダやカルパッチョ、デザートなどに使います。
教えて!酢のギモンQ&A
離乳食に酢を使ってもいいの?
赤ちゃんは酸味が苦手です。強い酸味は胃が荒れてしまうため、酢を使うのは1歳半を過ぎてからにしましょう。
料理に使うときの乳幼児の適量は?
先ほど述べたように、1歳半頃までは胃腸の負担になるため、使わないほうがいいですね。1歳半〜2歳頃は少量なら使っても。2歳以降は特に決まった量はありませんが、原液をたくさん摂取すると胃腸の負担になるため、薄めたり料理に少し加えたりする程度にしましょう。
子どもに酢の物を食べさせたいけど、どの酢を使ったらいいの?
2歳以降ならだしをきかせた「土佐酢」や甘味を加えた「甘酢」がおすすめ。甘酢は酸味がきついときは昆布だしで薄めても。
また、「三杯酢」にすりごまを加えると風味がまろやかになりますよ。焼いたお肉や唐揚げにかけるもおすすめです。
酢の物に使う野菜は、トマトやグリルしたパプリカなど甘味のあるものを合わせると酸味がマイルドになって食べやすくなります。
- 土佐酢…三杯酢にかつお節を加えたもの。酢、醤油、砂糖、かつお節をひと煮立ちさせてこします。
- 甘 酢…酢、砂糖、塩を混ぜたもの。
- 三杯酢…酢、醤油、砂糖を混ぜたもの。
酢を使うタイミングは?
酢は熱を加えると風味がとんでしまいます。酸味をきかせたいときは仕上げに入れると味が引き締まります。
酢飯は、合わせ酢の味を早く浸透させるために、ごはんが熱々のうちに入れるのが基本です。
また、食材に水分が多いと酢が入りにくいため、きゅうりなどの酢の物は先に塩で素材の水分を出したあとに酢を加えます。
上手な保存方法は?
直射日光や高温になる場所を避け台所の流しの下などの冷暗所に置きます。酢そのものが強い殺菌力を持ち腐敗しにくいため、冷蔵庫に入れなくても腐りません。ただし「ぽん酢」や「 す のもの酢」などの果汁やだしの入った商品は開封後は冷蔵庫で保存しましょう。