きっかけは、娘たちのアトピー。<br>北海道の砂糖からスキンケア商品を開発。

砂糖が持つスキンケアのパワーを全国各地に広め、セミナー講師、新聞・雑誌やテレビの取材、大学病院との調査研究や行政の諮問委員、書籍の出版…と多忙な毎日を送る幟立社長に、スキンケアの商品開発にかける思いを伺いました。

娘たちへの愛情が、商品開発の原動力になった。

 

札幌市内のにぎやかな大通りから少し離れた静かなオフィス街。ガラス張りに深紅の看板が光るオフィスがある。北海道産のお砂糖とお野菜の基礎化粧品の製造販売を行う、株式会社アビサル・ジャパン。本社を北海道に移転して今年で8年目になる。全国各地へ、海外へと飛び回り、この日も東南アジアから帰国したばかりだというのに、微塵の疲れも感じさせないひまわりのような笑顔で迎えていただいた。

 

corporate001_img02幟立社長は若い頃から、マーケッター、プランナーとして、商品企画やマーケティングの世界で活躍していた。企画した商品が、東京国際ギフトショーでグランプリを受賞したことも。その実績が評価され、米国化粧品原料開発会社から誘われ、マーケティングディレクターに就任した。

 

実は、その当時、二人の娘たちは長年アトピーに悩まされていた。薬による治療は仕方がないとはいえ、強いステロイド剤を使用し続けなくてはならない。15年間も使っていると、皮膚が黒ずんでくる。そんな中、娘の一言が幟立社長の胸に突き刺さっていた。

 

「こんな肌じゃ、お嫁にも行けない」

 

顔を曇らせる娘たちのために、何かできることはないか、良い材料はないか…と常日頃から情報にアンテナを張り巡らせていたとき、アメリカ行きの話が持ち上がった。

 

「アメリカに行けば、娘たちのアトピーを治すための、きっかけがつかめるかもしれない」

 

家族でアメリカに移住してからは、開発の現場で5年間必死に働いた。

「現場に入らないと、人には伝わらない」

との思いから現場主義を貫き、様々な最新技術や商品開発のノウハウを習得していった。

 

そんなある日、日系人の技術スタッフが、お風呂に砂糖を入れているのを目にする。

え? お風呂に砂糖?

塩を入れるのは聞いたことがあるけど…と思い半信半疑で自分も試してみたところ、びっくりするほど肌がすべすべに。塩と違ってしみることもない。

「乾燥肌対策で、バスタブに砂糖を入れているのよ」と聞き、目から鱗の気持ちになった。

 

砂糖のお風呂で娘たちのアトピーが改善していくのを目の当たりにした。

 

「砂糖ってすごい!もっと早くに、砂糖の効果を知っていれば…」

 

肌トラブルに悩む多くの人々のために、砂糖のすばらしさを日本にも広めたい、そんな思いから、会社に交渉を重ね、非水性スクラブ剤の開発で米国特許を取得した。

北海道のてんさい糖から作った「シュガースクラブ」

 

自然素材での肌質改善素材を求め砂糖にたどり着いた幟立社長だったが、最初はなかなか理解されなかったという。

 

「実は歴史をひもとくと、日本でも砂糖は昔から床ずれの薬として使われてきたのです。それに、砂糖に食物アレルギーはない、ということもわかっています」

 

一口に砂糖、といっても世界にはなんと200種類もある。そのすべてを比較検討し、日本人の肌に合う最良の砂糖、粒の大きさを追求、研究に研究を重ねた結果、北海道の「てんさい糖(ビート糖)」にたどりついた。

 

スキンケアの基本はなんといっても保湿。

 

「ダイエットでは“美容の敵”と言われがちなお砂糖ですが、肌にぬると保湿効果があるばかりでなく、皮膚の細胞を再生させる効能があるんです」

 

数ある砂糖の中でも、世界で唯一遺伝子組み換えをしていないのが北海道のてんさい糖。

高い保湿・殺菌効果がみられ、高浸透圧で角質層まで入り、肌の水分と皮脂バランスを調整するという。

 

てんさい糖は、別名ビート糖と言い、全世界の砂糖消費量の30%、日本では25%がてんさいから作られた砂糖。ヨーロッパでは砂糖といえばてんさい糖を指すことが多い。

 

北海道の良質なてんさい糖。これをスクラブ状にして、子どもも大人もストレスなくスキンケアができる製品ができたら・・・幟立社長の思いが凝縮し、ついに、てんさい糖を使ったスキンケア商品「シュクレ」が完成する。

 

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てんさい糖を使ったスキンケア商品「シュクレ」
シトラス・ラベンダー・ハッカなど5種類の香りを展開。

「シュクレ」は、その80%がてんさい糖でできている。残りはココナッツオイルやサフラワー油などの植物油、つまり100%天然由来成分でできている。防腐剤、合成香料、着色料は一切不使用なのも特徴の一つだ。

北海道はてんさい糖の全国で唯一の生産地であり、道東や道北を中心に年間約340万トン生産されている。原材料を誰がどこで作っているかがわかることも「安心」につながる。

 

かおりは柑橘系の香りで独自のブレンドをし、砂糖の粒の形状は三種類、特殊な製法でオイルコーティングしている。娘たちに完成した「シュガースクラブ」を試していったところ、ステロイドを使う頻度も徐々に減っていき、肌質が改善し、精神的にも楽になっていった。

 

濡れた肌になじませてサっと洗い流すだけで簡単に手入れができる。この砂糖のスキンケアを「シュガーリング」と名付け、アメリカでの経験を活かし故郷の広島県へ帰郷後、早速シュガースクラブを中心とする化粧品会社を起業。次々に製品化していくこととなるのだが、最初は前途多難だったという。

 

砂糖のすごさや効能を話しても、最初はだれも相手にしてくれなかった。ある物産展がきっかけで、総合商社の支社長が本社につないで、そのおかげで全国に販路を開拓することができたが、北海道から九州まで3人で回り、売っても、売っても赤字になる状況が続いた。その後、客注システムを確立し、販売方法を転換。商品ラインナップも増え、2004年株式会社アビサル・ジャパンを設立した。

拠点を北海道へ。道庁や農協、メディアからも引っ張りだこに。

 

2009年、原材料のてんさい糖の産地である北海道へ本社拠点を移すこととなる。

本社移転後も原料にこだわり、良質な北海道産のてんさい糖を使って地道な販売と商品開発を続けていたところ、時を同じくして「北海道コスメ」をPRしていた北海道庁の目にとまる。北海道のメーカーとして、道産砂糖を使ったスキンケア商品の開発と国内外への販路拡大に取り組むこととなった。また道庁だけでなく、経済産業省の講演や諮問会議に呼ばれるようになった。

 

東京をはじめとする大都市圏では、北海道でてんさい糖が作られていることがあまり知られていない。砂糖を通じて北海道の農業を応援したい。そして生産者には、化粧品にもなる砂糖の魅力を知ってもらえる。何よりも、てんさい糖の生産者からは「化粧品になるなんて!」と驚き喜ばれた。農協の女性部でも全道を回ってこれまで70回以上講演をしている。

また、全国の利用者からは「病院に行かなくなった」「薬の量が減って、かゆがらなくなった」「成人のアトピーも治ってきた」…と、うれしい声が続々届いている。

 

科学的な裏付けと臨床実験が何よりの商品力になる。そう考えた幟立社長は、起業当初から、(社)日本小児看護学会、大学病院のNICU(新生児集中治療室)とともに、乳幼児のスキンケアに関する数々の研究や臨床実験を重ねてきた。シュガースクラブの効果、洗浄殺菌作用効果の検証など現在でもその調査研究に協力している。

お砂糖は“万能薬”。そのパワーを世界に広めたい。

 

corporate001_img01昨年1月には初孫が、アメリカで生まれた。親がアトピーだったので心配になり、「『よし、今度は産湯をつくろう!』と沐浴剤もラインナップに加わりました」。毎日のシュガーリングのおかげで、今のところ孫にはアトピーは出ていないという。

 

自らも、子ども達を0歳児から保育園に預けてきたという幟立社長。ワーキングママの苦労を実感してきた一人。横浜支社のスタッフの多くが保育園に子どもを預けているということもあり、北海道にいながら、首都圏の待機児童事情にも詳しい。保育園の父母会からも講演を依頼されることも多い。

 

2013年には東南アジアへの事業展開も始まっている。またモンゴルの国立病院と連携し、子ども達の臀部の肌質改善をめざすプロジェクトにも参加している。

 

「スキンケアの知識が一般に普及していないこともあり、特に東南アジアの子どもの皮膚状態は良くありません。これまでの経験と技術を活かして、子ども達の健康状態をどうにか改善していく手がかりになればと考えています」

 

砂糖は万国共通の食材。発展途上国でも、皆が知っているからスキンケアに使用することへの抵抗も少ないという。

 

砂糖は乳幼児の肌のケアへの有効性だけでなく、より良い親子のコミュニケーションにも有効である、ということが先に述べた医療機関での調査研究からも明らかになってきた。

 

お風呂でのマッサージは、気持ちがいいので子どももお風呂タイムを楽しみに待つようになる。なでたり、さすったり、笑顔で声がけをしながら、手間をかけずにストレスなく、愛情たっぷりのスキンケアができる。また、高齢者には、シュガースクラブを使った足裏マッサージで角質が柔らかくなることにより、転倒防止、介護予防にもつながるという。

 

肌トラブルから解放され、人々が笑顔ですごせるように…アビサル・ジャパンの商品一つひとつに、社長の願いが込められている。

 

「一家に1個置いておけば安心、の万能薬をつくるのが夢ですね」

 

と語る瞳の奥には、その昔、かゆがる娘を押さえつけるようにして、必死で薬を塗った記憶が深く刻まれている。これからも、社長の熱い思いから次々に生み出される商品が、世界中のたくさんの人々に、笑顔を届けてくれるに違いない。

商品のご紹介

シュガースクラブには3種類あり、ベビースキン、フェイス、ボディと、使用目的に合わせて砂糖の粒の大きさが違い、一粒ずつオイルコーティング。

使用時に水で溶かせば、どの部分のケアにも使えるのが特徴。使い方は簡単。まず、肌を濡らしてシュガーをなじませながらマッサージ。シュガースクラブは高浸透圧で、角質層に水分補給することができ、水分と皮脂のバランスを整える。

 

 

 シュクレ

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スイーツスキンケア シュクレ マッサージ&パック
上段:100g 下段:10g

 

 

Baby Skin Japan

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ラインナップ左から
・オーガニックモイスチャーローション
・オーガニックベビーベジタブルシャンプー
・オーガニックシュガースクワランオイル
・オーガニックシュガーリングバス
・オーガニックマジックソープ
・オーガニックシュガーリングマッサージ

 

 

WEBサイト

株式会社アビサル・ジャパン:http://www.abyssal.jp/

 

 

(取材・文 竹内聖子)