初めて見る食べ物への反応は
人間はいろいろなものを食べる雑食性の動物です。それは、食べても害のないものを選択しないと、生命が脅かされることがあるからです。私たちはこの危険を避けるために、初めて見る食べものに対してはまず恐怖心をもち、警戒する行動様式が備わっています。これを「新奇性恐怖」といいます。
子どもは新しい食べものを食べるときにこの「新奇性恐怖」から“食わず嫌い”になることがあります。
周囲の大人はどのように対応したらよいの?
それでは「新奇性恐怖」による“食わず嫌い”を防ぐにはどのようにしたらよいのでしょうか。
食卓で『この子はこれを初めて口にするけれども、食べるかしら』と不安げに子どもを見ると、その様子を察知した子どもは、『これを食べても大丈夫なの?』と口に運ぶことを躊躇することがあります。
そのようなときに、一緒に食卓を囲む人が「ああ、おいしい」と食べものに向き合うことで、子どもの、“初めての食べもの”への恐怖心は薄らぎます。それが家族やお友だちなどの親しい人ならなおさら、「これは大丈夫」という気持ちが強くなり、安心して食べることができます。
そこで “食わず嫌い”からくる偏食を避けるには、家族が楽しい雰囲気で食卓を囲み、季節の食材などを取り入れた食事を「おいしいね」といただくことが効果的です。
偏食のとらえ方
子どもの保護者の中には、例えば嫌いな子どもが多いピーマンについて、ブロッコリーやほうれん草も同じ緑の野菜でβ-カロテンを含んでいることから、「嫌いなピーマンを無理に食べさせる必要はない」と考える人もいます。
たしかにブロッコリーやほうれん草を食べられるなら、ピーマンにこだわる必要は栄養学的にはほとんどないでしょう。それでも、いろいろな生活環境に心やからだを適応させる意味で、多様な食材を口にしてもらいたいです。
そこで、切り方や味付けを工夫し、「ひと口でもいいから食べてみよう」と励まし、ほんの少しでも食べたら「すごいね!」とたくさんほめることが大切です。
偏食の影響は食卓だけにとどまらない
嫌いな食材を食べられたという達成感は、ほめられることでさらに強められ、自信が生まれます。その自信がやる気につながり、物事に前向きに取り組めるようになることでしょう。
例えば人間関係について考えてみると、世の中には自分と気の合わない人もいますが、「嫌いだから付き合わない」と切り捨てるわけにはいかず、ある程度付き合っていかなければなりません。相手を好きになれなくても「こんな考え方があってもいい」とその人の個性を受け入れることで、円滑な人間関係を築くことができます。
学問や仕事にも同じことがいえると思われます。
いろいろな食べものを食べることの意義は、生活のさまざまな場面にまで広がることを心にとめて、子どもと向き合う姿勢が、保護者をはじめ子どもの周囲にいる大人に求められていると考えています。