お口の中で唾液が出てきて、大人が食事をしている様子に興味関心をもち始めたら、そろそろ離乳食を始めるタイミングです。「うちの子も離乳食をはじめてみよう!」と気合を入れて作ってみたけれど、実際に食べさせてみると“お子さんが意外と食べない!”ということを経験された方も多いと思います。時間をかけてつくった離乳食が全然食べてもらえないと結構ショックが大きいですよね。どうしても作るのが負担に感じたり、作っても食べてくれないことにストレスを感じたりした経験は、どなたも1度はあるのではないかと思います。
丸飲みがよくない理由はいろいろあります…
離乳食を始めたお子さんが、口の中に入れた食べ物を「べーっ」と吐き出す様子をご覧になった方もいらっしゃると思います。離乳食期のお子さんのお口の中はとても繊細なため、はじめのうちは水分が多くべちゃっとした離乳食の感覚がつかみづらく、口の中が異物感から不快に感じ吐き出すということがよくみられます。
この時期のお子さんは、どちらかというと離乳食でなく固形のものを積極的に食べたがるというお話しも伺うことがあります。これは口の中に入った時に固形物の方が重さや形状が伝わりやすいことから、抵抗が少ないと感じるお子さんもいらっしゃるからです。
しかし、いきなり固形物を口に入れると感覚的にうまく捉えられないことから、噛まずに“丸飲み”してしまいます。以前も『発音と食事って関係してるの?』でもお話ししましたが、食べ物の丸飲みは発音の不明瞭さにつながりやすいのです。お子さんたちはそれぞれの時期の口の形態にあった食事で舌の動かし方を学びます。食事で口腔内をしっかり動かすことが、言葉を話すための土台となっているのです。また、食べ物の丸飲みをすると口の中の感覚が育ちにくく、偏食につながる可能性もあります。その上、噛まないと唾液の分泌がすくないため、消化がされにくく便秘になりやすい状態になってしまいます。
赤ちゃんは始め母乳などの水分しか口にしていません。そのため固形の食べものという“異物”を口に入れるのに慣れるためには徐々に固さや形態などを離乳食で変化させていく必要があります。口の形態に合わせた食事はお子さんの様々な発達に密接に関係しているのです。食事を丸飲みしないでしっかり口の中の感覚や舌の動かし方をつかむためにも、段階を踏んで離乳食を進めていくことが大切なのです。
市販の離乳食に頼ってみるのもひとつ!
いろいろな食材に触れる中で、お子さんが食事に抵抗感を示すこともあるかと思います。ですが、このときに無理をして食べさせる必要はありません。離乳食の期間は母乳やミルクから、自分で食事を摂れるようになるための“橋渡し”となる時期です。焦らずいろいろな食材に触れ、感触や味、香り、歯ざわりなどを試すことで、少しずつ食べ物への興味・関心を広げていきながら食事への意欲につなげていければよいのです。「この食材を食べない!」「この離乳食が食べられない!」ということに一喜一憂しすぎず、お子さんの成長を長い目でみていくことも大切です。
現在は市販のものでもいろいろな種類の瓶詰・レトルトの離乳食がたくさんあるため、市販のものに頼ってみるのも1つです。「うちの子こういうのだったら食べるんだ!」と気づくきっかけになる場合もあります。市販のものを買ってみて、「食べた!」というものを作ってみるのもよいかもしれません。
また、同じ食品の離乳食でもメーカーが異なれば味も異なります。同じ食品を扱っていてもメーカーが異なるとお子さんが食べてくれることもあるかもしれません。「これなら食べるけど、こっちは食べない」などお子さんの好みを探ってみましょう。
市販の離乳食であれば保存や持ち運びも楽なので、外食やピクニックなどに持ち込むこともでき、育児の合間の気分転換にもなりますね。
離乳食は食事に慣れるためのファーストステップ。大人もお子さんも無理せず、今しかない時期を楽しめるといいですね!
※今回は、一般社団法人ぽけっとの【言語聴覚士】が執筆しました。
一般社団法人ぽけっと
2017年2月設立。児童発達支援・放課後等デイサービス事業『発達支援ルームぽけっと』や園や学校の先生方を支援する研修・巡回事業等のサービスを提供しています。
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