お母さんの食べた物と子どもの食物アレルギーとの関係は?
母乳を飲んでいる重症な卵アレルギーの赤ちゃんは、お母さんが食べた卵の成分が母乳に移行し、それに反応して湿疹が悪化することがあります。この場合、お母さんが卵の摂取を控えると皮膚症状が改善します。このような例から、赤ちゃんの湿疹の原因は食べ物であると考えられていました。
そこで、妊娠中や授乳中の女性が、卵や牛乳を摂らなければ、アトピー性皮膚炎や食物アレルギーが予防できるのではないか、との仮説に基づき、除去食の研究が数多く実施されてきました。しかし、その仮説は証明されず「妊娠中・授乳中の母親の食物除去には、子どものアレルギー発症予防効果は認められない」と結論づけられています。
なぜ食物アレルギーになってしまうのでしょう?
食物アレルギーのある子どもの多くは、アトピー性皮膚炎を発症していることが知られています。そこで、最近は「経皮感作(けいひかんさ)」が注目されています。
経皮感作については、まだ食べ物を食べたことがない赤ちゃんがなぜ、抗原(アレルギー反応を起こす物質)に感作(アレルギー反応を起こす準備ができている状態)されるのか、という疑問を解くための多くの研究から明らかになってきました。
その中で、広く知られている研究をご紹介しましょう。イギリスでは皮膚に炎症のある赤ちゃんにピーナッツオイルを塗ることがありますが、塗り続けるとピーナッツアレルギーのリスクが高まることが明らかになりました。また家庭でピーナッツをよく食べると、環境中にピーナッツ抗原が多いので、ピーナッツアレルギーになる患者が多いという報告もあります。これらの研究結果から、食物抗原への感作が皮膚を通して起こっている可能性が考えられるようになりました。
アトピー性皮膚炎の治療は、早い時期からしっかりと
皮膚は外界から体を守るバリアです。そこで皮膚の中には免疫細胞が多く、体に有害な細菌、ウイルスなどが体内に入ってくることを防いでいます。ところが、アトピー性皮膚炎のある子どもは、生まれつき肌が弱い、肌が乾燥しやすいという性質があります。バリア機能が弱い湿疹などの部分に卵のタンパク質がつくと、免疫細胞は卵が食べ物なのか、害を及ぼすウイルスなのか区別できずに、皮下のアレルギー細胞を刺激して経皮感作されるのではないかと推察されるようになりました。
また、アトピー性皮膚炎の治療開始時期については、生後3~4か月からと、7~8か月から始めた場合とで比較すると、7~8か月で始めた場合には、まだ食べたことがない卵や牛乳への感作が進んでいて、皮膚症状はよくなっても食物アレルギーを発症してしまう例が多いことが明らかになっています。そこで、できるだけ早い時期にアトピー性皮膚炎の治療を開始し、経皮感作の機会を減らすことが食物アレルギー発症予防には重要です。