小さな発見!変身メニュー
私が食育を担当している園では、野菜を喜んで食べてくれる子どもが多く、元気におかわりする姿を見て嬉しく思っていました。ところが、今年の年少さんの野菜嫌いはなかなかのもの、悩み多きスタートです。さてさて、なぜ今年は野菜嫌いが目立つのか。いろいろと分析して対処の方法を考えることも大切ですが、今回はテンポよく変身メニューで即挑戦です。
はじめに園の給食の状況を。主食も含めて園内調理のため、温かいものは温かいうちに食べることができ嬉しいのですが、大人にとってはありがたくても、子どもたちが給食を「食べるか」「食べないか」は、使われている食材が「好きか」「嫌いか」で決まります。食べるスピードや量は給食の内容次第という、とても分かりやすい結果となります。特に野菜嫌いの子どもにとっては苦手な「温野菜」というメニューがあるのですが、これがまた、ときどき?まあまあの頻度で登場するのです。
では、この「温野菜」とはどんなものなのでしょうか?温野菜と聞いてどんなイメージを持たれますか?カラフルな野菜のひと皿をイメージされる方も多いことでしょう。
ところが給食の「温野菜」はキャベツとにんじんを軽く茹でて、うすい塩味をつけたとてもシンプルなものです。シンプルゆえ野菜の甘みやうま味を感じることができるのですが、苦手な子どもにとってはダイレクトに野菜の味を感じることになります。当たり前のことですが、メニューは全体でバランスが考えられているので、残さず食べて欲しいと思っていても、食べてくれないのが現実。
どうしたら「温野菜」、野菜に興味をもってくれるのか。きっかけづくりに調理体験はとても有効ですが、しばらくは控えたほうがよさそうですね。園でもいろいろな行事が中止となり、子どもたちもなんとなく我慢しているように思えます。そこで先生と一緒に考えたのが「わくわくホットドッグづくり」です。いつもの給食でも楽しい給食になるようにという思いを込めて企画しました。
ホットドッグづくり当日
「今日のお話はなぁーに?」「給食でホットドッグつくるんでしょ?」と声をかけてくる子どもたち、給食を楽しみにしている様子。給食の時間が待ちきれない気持ちが伝わってきました。しめしめ、いい感じ・・・(心の声)
用意したのは、コッペパン、ウインナー、温野菜とケチャップ。そうです、あの「温野菜」です。
小さな手で一生懸命つくる姿は微笑ましく、それぞれのホットドッグが完成。果たして「温野菜」を食べてくれるだろうか?
その結果は・・・?
給食中には自分で作ったホットドッグを手に持ち、嬉しそうに見せてくれました。野菜を少しだけ入れたホットドッグをつくった子どもに話を聞くと、パンと野菜は別々に食べたい、とのこと。理由は、いつもごはんとおかずは別々に食べるから、とのことでした。なるほど、それもいいね。
そして予想はしていたのですが、ウインナーだけ食べてしまったり、知らない間に野菜を除いていたり、口に入れても最後のゴックンができなかったり。
また、「なんでお野菜食べるの?」と問われ、「元気、お肌すべすべ、体の中きれい」というワードをフルに使い、とうとうプリンセスの話にまで発展。なぜこのキーワード?なぜプリンセス?きっと皆さん、疑問でいっぱいではないでしょうか。
ここで園の食育について少しふれておきますね。園では食べものの栄養について話をする時、「赤・黄・緑」の3色の色分けを使っています。
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- 赤色は血液や筋肉をつくるもの⇒肉、魚、卵、牛乳など
- 黄色はエネルギーのもとになるもの⇒ごはんやパンなど
- 緑色は体の調子をととのえるもの⇒野菜やきのこ類など
色で分けることで子どもの記憶に残り「これは何色?」と口にする機会が増えてきて、野菜には「体がとっても元気になったり、お肌がすべすべになったり、お腹の中をお掃除してくれたりするものがいっぱい含まれている」という話をしていたことから出てきたキーワードです。そしてプリンセスの話にも理由があります。子どもの間で人気のあるプリンセスのお肌がすべすべだ、ということで登場したわけです。しかし、このプリンセスの話はかなりポイントが高かったようで、野菜が苦手と言いながらもホットドッグを何度も口に運ぶ光景が微笑ましく映りました。
まだまだ課題はありますが、しっかり手を洗うこと、おともだちのパンには触らないこと、ルールをしっかり守って楽しい給食になりました。
HAPIKUサポーター/西田 視己子(ニシダ ミキコ)
栄養士、野菜ソムリエプロ
金融機関に勤務後、新たな目標のため長野県に移住。移住をきっかけに野菜作りや味噌づくりに挑戦し、伝統食やジビエにも興味が広がり研究中です。現在はこども園の食育講師として、お話しやクッキングを担当。ときどき主人の仕事の手伝い。趣味は料理と片付け(願望)。日々「食べる・生きる・活動することを共に考えたい」をモットーに活動しています。今後は「災害時の食」や「食物アレルギー」にも目を向けていきたいと思っています。