おいしいを広げる「だし」

赤ちゃんは腎臓機能が未熟なため離乳食は腎臓に負担をかけないように薄味が基本です。そこで活躍するのが、昆布、かつお、野菜などの旨味が溶け出した「だし」。調味料の代わりに「だし」の旨味をきかせて赤ちゃんの「おいしい!」を広げましょう。

赤ちゃんは「だし」の味が大好き

離乳食を食べやすくするために重宝する「だし」。だしを使うとアク(灰汁)の強い野菜はただ茹でるだけよりも、だしの旨味で苦味などが感じにくくなって食べやすくなります。また、調味料を加えなくても充分おいしくなるので薄味に慣れることができます。特に、だしの中でも“昆布だし”の旨味成分であるグルタミン酸は、母乳の成分にも豊富に含まれるので赤ちゃんは大好きな味なのです!

 

離乳食の始めは素材そのものの味であげてみるのもいいでしょう。例えば、かぶ、にんじん、かぼちゃ、玉ねぎ、とうもろこしなどは、アクが少ないのでだしがなくても食べられます。慣れてきたら食材を組み合わせて“だし汁”を加えるともっとおいしく食べることができます。

食べものの“好き嫌い”は、さまざまな体験から学習する!?

赤ちゃんは本能的に「甘味」「旨味」があるものを好みますが、一方で「酸味」は腐った味、「苦味」は毒の味と結びつくため苦手とします。受け入れられないのは“体を守るために不必要”と判断するから。このように“好き嫌い”は生まれながらにあるものです。

 

しかし、3歳以降になると味のおいしさだけで“好き嫌い”を判断するのではなく、「嗜好学習」というのが入ってきます。例えば「好きな人たちと食事したら嬉しくておいしいと感じた」「食事のお手伝いをしたら食べられた」など、食事のときの環境や状況が関わってきます。いい「嗜好学習」が増えると好きなものも増えてくるため、食事のときに“嬉しい”“楽しい”と感じるような体験をたくさん増やしてあげることが大切になります。

 

気をつけたいのは、乳幼児期から嫌いなものをなくそうと無理に食べさせたり、わからないように好きな料理に混ぜたりしないこと。離乳食の時期はお腹を空かせて食べる、楽しい体験とともに食べる、「おいしいから食べてみよう」と励まし、「食べられたね。すごいね」と褒めながら学習させていくことが大切です。

 

子どもの頃に嫌いなものが多くても大人になってから食べられるようになったり、それまでダメだった食べ物が急においしいと思えるようになったりしますよね。これは“幼い頃に味わったことがあるもの”“おふくろが作ってくれた味”というような下地があるからこそ食べられるようになるのです。

 

私たちからするとおいしい「だし」ですが、外国人からは「日本のだしは臭い」といわれることがあるのをご存知ですか? 魚臭さ、昆布の臭さは食べ慣れていないから苦手なのです。食べていないとそれだけ違うということです。ですから、赤ちゃんの頃から日本のだしを経験することはとても大切です。

だしは母乳に近い“家庭の味”
なじみのある地域の産物で作られた「だし」を大切にしましょう

離乳食の開始時期は母乳に近い味や食感(赤ちゃんの発達に適している食感)で“おいしさ”を感じるようになっていきます。母乳に近い味は旨味ですから、昆布、かつお節、干ししいたけ、煮干しなどのだしが挙げられます。

 

また、食べ物の味は複数の味を組み合わせることで相乗効果をもたらし、よりおいしくなります。だしも同じことがいえます。昆布とかつお節のだしは“うま味”が強くなり、昆布と干ししいたけのだしは“甘味”が強くなります。このように合わせだしにしてもいいでしょう。

 

それと日本は古来より、収穫されたものの違いにより地域特有のだし文化がありますよね。例えば北海道や日本海沿岸側は昆布、太平洋側の沿岸はかつお節、九州は干ししいたけなど。そのほかにも、煮干し、あご、鯖節、干し貝柱、鶏肉、豚肉など、さまざまなだしがあります。その土地の郷土料理はそれらのだしをうまく使っているので離乳食にも応用できるかもしれません。

離乳食をきっかけに大人の食生活を見直したり、郷土料理や旬の食材に目を向けられるようになったりすると食生活が豊かになっていいですね。

赤ちゃんは7カ月頃まで液体を飲むのが苦手!

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「だしを飲ませてもいいの?」という質問がありますが、赤ちゃんの液体の摂取機能は固形物の取り込みより少し遅れて発達します。母乳も液体ですが大人の液体の飲み方とは違うのです。そのため、だし汁を飲ませたいときは7か月頃から試すといいでしょう。

7~8か月頃からスプーンのふちを挟んで飲めるようになるので、スプーンを傾けて少量ずつ飲ませます。最初は液体を調整することが難しいのでむせたりしますが、練習するとだんだん上手に飲めるようになります。コップやお椀から飲めるようになるのは9~10か月頃。唇を閉じながら、すすり込む動きができるようになります。

復習!基本のだしの取り方

昆布とかつお節の「一番だし」

「一番だし」はまろやかな風味が特徴。

だしの味が生かされるお吸い物や茶碗蒸しなどに向いています。

● 材料(作りやすい分量)

・昆布…………10cm角

・かつお節……大さじ2

・水……………400ml

 作り方

①昆布の表面の汚れをぬれぶきんで軽く拭く。

②鍋に水と昆布を入れ、できれば20分ほどつけておく。

③昆布が戻ったら中火にかけ、小さな泡が出てきたら沸騰する直前に昆布を取り出す。

④かつお節を加えて菜箸でひと混ぜして1分ほど煮て火を止める。

⑤かつお節が沈んだらペーパータオルを敷いたこし器にあけてこす。

 

昆布とかつお節の「二番だし」

「ニ番だし」は一番だしの材料の残った旨味を再利用しただし。

みそ汁や煮物などに合います。

材料

・一番だしを取ったあとの昆布とかつお節の残り

・かつお節……10g

・水……………200ml

作り方

①鍋に一番だしで使った昆布、かつお節、水を入れて沸騰するまで強火にかける。

②沸騰したら弱火にして10分ほど煮る。

③かつお節を加えて火を止める。

④かつお節が沈んだらペーパータオルを敷いたこし器にあけてこす。

忙しいときに便利!手軽な天然だしの取り方

だしを取るのに一番ラクで便利なのは水出しです。例えば刻んだ昆布や干ししいたけと水をボトルに入れて一晩寝かせるだけでOK。2時間~一晩おくと加熱しなくても充分にうまみが出ます。それを製氷皿に入れて冷凍保存しておけば煮物にも使えて便利です。

他にも、かつお節と刻んだ昆布に湯を入れてしばらく浸けておけば立派なだしになります。また、かつお節を耐熱容器に入れてラップをかけ、電子レンジで1分ほど加熱すれば簡単にだしが取れます。

料亭ではないのですから、一から丁寧に「だし」を取らなくても家庭料理はそのぐらい手軽でもいいのではないでしょうか。

火にかけてだしを取るときは、煮干しは頭と内臓を取り、沸騰させると苦味が出るので沸騰直前に取り出します。昆布も沸騰させると濁ったりぬめりが出るので沸騰直前に取り出します。

野菜だしの場合はアクが少ない野菜を使いましょう。玉ねぎやにんじん、キャベツは煮ると甘くなるのでおすすめです。

市販の顆粒だしって離乳食に使っていいの?

赤ちゃんはさまざまな食材を口にすることで味を覚えて味覚形成がされていくので、できるだけ本物の味を教えてあげたいものです。

顆粒だしによっては合成添加物や化学調味料が入っているものもあるので、成分表示を確かめましょう。塩分が含まれているものは離乳食には向きません。顆粒だしを使うときは合成添加物などを含まないものを選びましょう。