香港編<br><font>~医食同源の教えを受け継いでいく香港の人々は、世界一長寿~</font>

世界で最も長寿な国は?もちろん日本でしょ、と思っていたら、男女とも、香港の平均寿命が最も高いことが明らかになりました。日本人の平均寿命も毎年更新されていますが、香港人の寿命はそれ以上に伸びています。(*1) 人口密度も高くて(シンガポール、マカオに次ぐ過密国)ストレスも多そう、気候も温度も湿気も高いし、街中を歩くと段差が多く、ちっとも高齢者や子どもにも優しくない、、、そんなに長生きできる環境にあるのかな。というのが、素朴な疑問です。

知識だけでなく、実践される健康法

1997年に中国に返還され、正確には国ではない香港。中国の特別区のような存在で、政治的には課題もあるようですが、街は活気にあふれています。特に、朝から飲茶レストランを占拠する中高年客の数には圧倒されます。公園では、太極拳はじめ様々な運動にいそしむ姿もあちこちで見られます。

 

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香港にも農場があります。健康を意識して有機野菜などを市民が買い求めます。

香港の人々の健康への意識は、非常に高いようです。医食同源、食生活はじめ日々の生活習慣が病気を予防するという考え方が普及しており、知識だけでなく、実践している人が多いのです。クーラーの風に当たらない、冷たいものを飲まないなど、健康増進のためのノウハウが、親から子へと代々、しっかりと伝えられています。

詳しい食品表示も医食同源の発想から

香港の食を選ぶための基準となる食品表示は、なかなか複雑です。原材料や量目、賞味期限に加えて、栄養成分の表示が細かく決められています。現在の表示制度は、増加する生活習慣病の予防の目的で、2010年に改訂されたものですが、エネルギーやたんぱく質、糖、脂質だけでなく、トランス脂肪酸や飽和脂肪酸、カルシウムの含有量、アレルゲン表示など項目の数は日本以上です。また、低カロリーやノンファットなど、強調表示も厳しく制限されています。

 

今年の春、香港を訪れたとき、たまたま食品表示についての展示を、市内のある施設でみつけました。栄養がどのように身体機能に役立つのか、また残留農薬や添加物など、食の安全のテーマも含め、わかりやすく、親しみやすい内容です。小学生が社会見学に訪れていましたが、子どもの頃から食と健康について、家庭だけでなく、学校でも学ぶ機会が多いのではないかと感じました。

 

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写真左:食品表示に関する展示
写真右:食品の衛生についての展示
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写真左:衛生や栄養に関する監督庁の紹介もあります
写真右:食の安全や栄養に関わるテーマでミニシアターも

住み込みメイドを雇うのが基本

香港は、実は保育園や幼稚園などの施設が数少ないと聞きました。イギリスの統治時代からの政策の影響で、公的な支援がほとんどなく、未就学児童の教育施設は、すべて私立だそうです。香港では、メイドを雇うのが当たり前、フィリピンやインドネシアから来たアーイさん(メイドさんの呼び名)が住み込みで、家事や育児を見てくれるので、保育園へ行く必要がないのだそうです。

西洋医学もあるが、漢方薬剤師も身近な存在

香港ID(在住許可証)を持っていれば、誰でも100香港ドル(約1,500円)で病院での診察を受けられるそうです。さらに、西洋医学だけでなく漢方薬剤師(Chinese medicine practitioner)も医者の半数程度おり(*2)、香港では調子が悪ければすぐに相談できる先があるというのも、健康維持のために大事な要素かもしれません。

 

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あちこちで歌っている人を見かけます。下手でも楽しいからいいんです。

他にも香港人が長寿である理由はいろいろあるでしょう。忙しそうな香港ですが、ちょっと郊外へ行ってみると、また高齢者をみてみると、早朝の飲茶レストラン、公園での太極拳、みなさん、ゆったり時間を過ごしています。加えて、おしゃべりする仲間が周りにいる。こういった心のゆとりと環境が、香港の人々を長生きさせているのかもしれません。


(*1)厚生労働省「平成 27 年簡易生命表の概況」2016年7月27日

(*2)Health Facts of Hong Kong 2106Editon 香港特別行政区保健局