<font>料理研究家・浜田先生に聞く</font><br>
子どもの野菜嫌いの原因と対策

近年、共働き世帯の増加から、子どもの食にまつわる問題は多様化しています。5月にトレンド総研から発表された「子どもの食育に関する意識・実態レポート調査」によると、10年前と比べ偏食の児童が増えており、学校給食で食べ残しが多い献立1位は「野菜メニュー」ということがわかりました。こうした中、現在注目を集めているのが、子どもを野菜好きにするためのトレーニング =『べジトレ』です。

HAPIKUの栄養相談室へも、「とにかく偏食で困る」「白ごはんしか食べてくれない」「トマトやピーマンを食べない」など、お子さんの食に悩むお母さん方からの切実な相談が多く寄せられています。そこでHAPIKUでは、子どもの食育事情に詳しい、栄養士・料理研究家・食コンサルタントの浜田陽子先生協力のもと、『べジトレ』をテーマに連載を組むことにしました。

1回目の今回は、浜田先生に子どもの野菜嫌いの原因と対策についてお話ししていただきました。

子どもの野菜嫌いの原因と対策

次に、浜田先生に子どもの野菜嫌いの原因とその対策についてお話ししていただきました。

 

子どもの野菜嫌いは9割が“思い込み”

子どもの野菜嫌いには主に2つの原因があります。ひとつは「味」や「食感」、「香り」などが原因でシンプルに野菜を美味しいと感じないこと。もうひとつは現代の環境が原因でなんとなく野菜が嫌いだと思い込んでしまっていることです。また、環境要因として、ひとりっ子が増えており、お兄ちゃん・お姉ちゃんという身近なお手本が野菜を食べているから自分も食べてみようと思える機会が減っていることなども思い込みを覆せない一因と言えます。

実は子どもの野菜嫌いのうち、9割がこの思い込みによるものです。ここ15年ほど、子どもたちにはイメージ重視で物事を判断してしまったり、一度ダメだと思ったものについては再度チャレンジすることを避けてしまう傾向があります。なんとなく「緑だから」「見た目が嫌」という理由で食べもせずに拒否したり、多くの子どもが好むケチャップライスやパスタでさえも、どこかのお店で一度好みでない味に出会ってしまうと、そのあと家でも一切手をつけなくなってしまう子どもも珍しくありません。

野菜嫌い克服のためには、調理の工夫をすることももちろん大事ですが、思い込みを払拭してあげて、野菜に対してポジティブな印象を持ってもらうことがいちばんの近道なのです。

 

野菜嫌いへの対策は「美味しく、無理なく、少しずつ慣れさせる」ことが大切

野菜が食べられないと思い込んでしまっている子どもに対しては、まずは野菜の味に慣れさせること、少しの量でも構わないので「野菜を食べることができた!」という自信をつけさせることが大切です。

vegetore001-07そのために野菜ジュースを使うのもおすすめです。野菜ジュースを飲ませたからおかずを一品減らそうという考え方はNGですが、「補助」としてはいろいろな使い方ができます。野菜ジュースを活用するなどして、野菜が入っているのに美味しく飲めたという経験をすることで、「苦手だと思っていた野菜を食べることができた」という自信をつけさせることが大切です。「口に入れた」という実感を持たせるためのファーストステップとしては有効と言えるでしょう。

もし、野菜ジュースをそのまま飲むのも難しいようであれば、料理に使ってみるという手段もあります。このときのポイントは、「この料理に野菜ジュースが入っていたんだよ」ときちんと子どもに教えることです。子ども自身にこの料理には野菜ジュースが入っていて、自分の口に入ったということを理解させることが、成功体験へとつながり、野菜嫌い克服への第一歩になります。

 

また、小さく刻んでこっそりと食べさせるのは野菜嫌い克服には意味がありません。逆に、子どもが気づいてしまった時にだまされた、と感じて、ネガティブな体験になってしまう可能性もあります。子ども自身が野菜を食べていると理解している状況で、「美味しい」とポジティブな感想を持てることが重要です。

 

【参考】
浜田先生にお伺いしたお話のポイントを表にまとめてみました。

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『べジトレ』に注目する今回の連載。1回目は、浜田先生のお話を中心に、べジトレ事情についてご紹介しました。

次回は、忙しいお母さんでも実践できる『べジトレ』の5つのポイントと、浜田先生考案の手軽にできる『べジトレ』メニューをご紹介します。

 

<今回お話をしてくれた先生>
浜田陽子(はまだ・ようこ)/栄養士・料理研究家・食コンサルタント

株式会社Studio coody(スタジオコーディー)代表取締役。「食育」「乳幼児栄養」「妊産婦栄養」「ダイエット」「生活習慣病」などを専門分野とし“心と体に美味しいレシピ”を提案している。雑誌・新聞・WEBへのレシピ提供、連載コーナーも多数展開。そのほか、学校や幼稚園でのボランティア活動、セミナーや講演会にも力を入れており、大学にて栄養学の講師も務める。プライベートでは2人の子どもを持つ母親。「子どもと一緒に楽しく料理をつくれる魔法の声かけクッキング」(主婦の友社)をはじめ、著書も多数。